「時をかける少女」は映画のタイトルだが、かつては人の噂も75日といったが今や人の噂も75時間以内になってしまった。
「時をかける大人」なのだ。
次から次に起こる事件やニュースも3日後には話題にもならない。チリの奇跡の脱出劇ですらすっかり過去の話。どんな勇気や美談も目の前の生活の為にはすっかり通り過ぎた話なのだ。
芸能人や有名人の結婚、離婚、自殺も同じ。おぞましい事件も又然りだ。
「耳かき殺人」「秋葉原事件」、親殺し、子殺しももう忘れている。
交番に貼られているポスターに賞金300万で「おい出て来い小池」というのがある。他にも逃亡者はごまんと居る。リンゼイさんを殺して逃げ逮捕された男には×マークが書いてあった。とにかく嫌な事が多い年であった。人間が人間性を失っているのだ。
早いもので十一月七日が終わり後は今日の二の酉だという。
関東一円「鷲」と名の付く神社で行われる祭りだ。発祥の地は足立区の大鷲神社だという。
実際は江戸時代に日本武尊の命日とされる十一月に近隣の農民が開いた収穫祭が始まりとされる。日本武尊が鶏が大好物だったという逸話から酉の日に開かれるようになったとか。
この日は大判小判やおかめなどをあしらった派手な熊手が売られる。
神社では小さな竹の熊手に稲穂とお札を付けた「かっこめ」と呼ばれるお守りを売る。
花園神社の酉の市 |
鷹の爪の形をした熊手は運や福を鷲掴みにすることから来たらしい。小さな物だとヨォーハイでお終い、中位だとヨーオと三拍子、大きな物となると隣の店の人まで盛大に三・三・七拍子。ちなみに三千円〜十五万円位だ。
一番のコツは日付が変わる時がいい(11時55分頃)、えーいチキショウ持ってけドロボーなんて言ってぐーっと安くなる。かなりバブリーな頃は銀座だ赤坂のホステスを車二台に乗り込ませ、会社の若い者と屋台をハシゴして朝まで飲んだものだ。
鷲神社の酉の市 |
一杯飲むとその頃の思い出話をする、歳をとった証拠だ。ピチピチしていたホステスは「時をかけた老女」になってしまっている。アゴはたるみ、目尻は下がり、顔にはシミとシワばかり。トイレに入って自分の顔を鏡で見たらもう愕然とした。
鏡に向かってお前は誰だと言ったらお前だよと応えられた気がした。
月日は残酷だ。日本武尊の様にみんなで鶏肉を食べに行くかと言ったら、お寿司の方がいい、油っこいのはもう駄目だからだと。