もしもしネェー、とうしてとうしてこんな事になるの。
あなた詐欺師よ、大嘘つきよ、許せないあーんとうしてくれるのこんなの主人に知られたらもうおしまいよ。
と携帯電話を片手に部屋の中をウロウロしてギャーギャー喚いているのは「とうして」正しくは投資してありったけの財産を失った奥さんです。株への投資は勿論の事、安愚楽牧場の牛への投資、名水ビジネスへの投資、山林への投資、奥さんとうしてそんなに手を広げたのと聞いてもただただ泣きじゃくるばかり。
あの男のせいよあいつは悪魔よ、詐欺師よ、絶対訴えてやる。
朝から晩までパソコンの画面のグラフや数字を見るとやたら食欲がでるの。
料理なんかしている暇はないから炭酸系をがぶ飲み、ケンタッキー、ドミノピザ、小僧寿し、モスバーガー、釜めし釜寅、少しじゃ持ってこないから沢山オーダーするじゃない、もったいないから全部食べちゃう、飲んじゃうのよぉー、あー気持ち悪い吐きそうちょっと失礼。
ウェッウエッウワーとトイレの中で、出てくるとつけまつ毛は落ちそう、目から涙、鼻からは鼻水タラタラ、口紅は半落ち、もう何もかもスッテンテン破産よ、とうしよう(“ど”が旨く言えない女性なんです)主人がもうすぐ海外赴任から帰って来るのよぉー、ねえ「追い証」って何?それをちゃんとしないととんでもない事になるっていうの。
隠し金庫も貸金庫の中ももう空っぽ。「追い証」って恐い事なの、とうしたらいいの教えて、助けて何でもするから。
ビルも、洋風の家も、ベンツとリンカーンの4WDも箱根の別荘も手放し、私学に通わせていた二人の娘は退学。どうしてこんなになったのか投資には全く興味もなくお金も全く無くの私には別世界の話。
なにしろ10以上の投資に手を出し、20銘柄位の株を日々運用したりしていたらしい。
ある猛暑の日の昼下がり。
銀座のティファニー本店四階は一千万、二千万、三千万以上のゼロの数が数えられないダイヤの装飾品がズラーっと光り輝いている。私には四階は縁がないがトイレがその四階の奥にあるのだ。
なんでもゴッソリ買っていたティファニーの商品を一人の奥さんが引き取ってほしいと哀願している様だ。
四階は広くとても涼しくて汗がすーっと消えていく。その人以外誰もいない処に応接セットがある。
そこに座ったら冷たいお茶が出た。しばらく休憩していたら(図々しく)涼しいはずなのにかなり太った50歳位の奥さんが汗を一杯かいている。背中にたっぷり汗が付いている。誰かに似ていると思った。そうだデヴィ・スカルノ風だ。
とうして、とうしてが聞こえる。支配人風の男が対応している。
奥様、うちは大黒屋じゃないんですからと言っている。何処まで作り話かはご想像に。
投資にはご注意を、甘い物、甘い話の食べ過ぎには要注意を。実に恐い結果を後日知りました。とうしたか?