女性は怖ろしいと思った映画がある。
日本映画史上に残る名作である。
勅使河原宏監督の「砂の女」だ。
学校教師の男が昆虫採集で、ある村を訪れる。
家族と死に別れた女のところに宿泊する。
女は家の周りの砂をかき集め、村人が砂を引き上げる。
家は砂の壁に囲まれた谷底にあるため縄はしごがないと外に出れない。
朝、男は出ていこうとするが縄はしごはない。
男は女にとらわれたと気づく。
男は女に逆らいながらも砂かきを手伝う。
ロープを使って外に出るが、村人によって連れ戻される。帰りたいけど帰れない。
女は黙々と働き、男は逃げたがる。
男は罠にはまったことを感じる。
人が砂に支配されている。女の家がつぶれれば隣りの家も埋もれる。
だから砂をかき出す。
アリ地獄の中に落ちた生き物が決してそこから出れず、アリに食われるように、男は女の餌食となる。
男は女の肉体に犯され続ける。
やがてアリ地獄を脱出に成功する。
そこで砂に埋めた樽に水が湧くことに気づく。
桶水の実験をしだした男は、もう逃げ出すことを忘れる。
自由を奪われて新たな研究に没頭する。女の肉体はアリ地獄のように男を逃がさない。
安部公房原作は不条理の世界へ観るものを誘う。
音も映像も素晴らしい。さて、「砂の女」に何を学ぶかだ。
私たちは人生というアリ地獄の中にいるのかも知れない。
何もかも逆転してみると分かる。幸は不幸へ向い、不幸は幸に向う。悪は善であり、善は悪となる。希望の愛は絶望となり、絶望の愛は希望となる。
「砂の女」の男はアリ地獄の中に生き甲斐を見つける。
だから私たちも…(?)何!ヒアリが恐いからアリ地獄に落ちたくないだと。
いつものグラスにジンを入れると砂の女がグラスの底に見えて来た。