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2017年7月14日金曜日

「人生とは浮沈なり」

私はのし上って上から下を見下ろしている人間にはあまり興味がない。というより反感を持つ。
一流の勝者より、一流の敗者に美学を感じるのだ。


中島敦の名作「山月記」は、天才といわれた男二人の月日が経った後の姿を書いた。
一人は栄達の道を歩むが、一人は世を捨て狼に姿を変える。
二人はある日山の中で再会する。何故そうなったかぜひ読んで下さい。
狼となった男はかつてのライバルに決して思い出してくれるな、サラバと吼吠し姿を消す。

藤沢周平の名作に「三屋清左衛門残日録」というのがある。その中に「落魄」という章がある。
ある藩に龍虎といわれ、文武両道に優れた若い武士が二人いた。
月日が経ったある雨の日、一人の男が長屋みたいなところで雨宿りをしている。
とそこに住んでいる一人の男が中に入られよと戸を開けていう。
男やもめのうらさびしい部屋の主は、かつてのライバルであった。
エリートコースを歩む一人と長屋住まいの一人。何故そうなったかぜひ読んでほしい。

殆んど本を読まない私が読んだ中で思い出深い。

名作の主人公の明暗を分けたキーワードは「うぬぼれ」であった。
二度と訪ねてくれるなという男に滅びの美学を感じた。(記憶は定かではない)


元関脇の力士に豊ノ島(時津風部屋)(34)という美しい敗者がいるといっても豊ノ島は敗けてはいない今も夢を追っている。
かつて14勝を挙げて優勝争いもした。
三役の常連で実力者といわれた。
長く幕内にいたが好事魔多し豊ノ島は怪我に泣く、次から次と怪我をする番付はエレベーターのように下がり、幕内から十両、そして給料のもらえない幕下まで落ちた。
現在東幕下28枚目である。幕下は7番取るので4勝しないと敗け越しとなり更に落ちる。
確か高知出身だと思う、十両と幕下では天と地の差がある。豊ノ島はもう一度チョンマゲ(大銀杏)が結える十両以上を目指して闘い続ける。
もう一度化粧まわしをと闘うのだ。
ガンバレ豊ノ島。

いま前頭上位でバリバリに活躍している栃ノ心(春日野部屋)も幕下まで落ちてリベンジを果たした見本がある。ハッケヨイ、残った。

二人の力士のキーワードは「プライド」だろうか。ファンの声援か。


人生とは浮沈の月日である。
私は沈んでいる時の自分がキライではない。
コンチクショウ敗けてたまるかが顔に出る。
逆にうぬぼれて浮かれている自分は全然ダメだ。顔から殺気が消えて、ダラン、ダランだ。
ちょっくら鏡の中の顔でも見るか。


先日浦安に住む敬愛するCM界の大監督の家を訪ねた。
難病と闘い一日60錠位の薬を服用しながら絵筆を握り、切り絵をし大作を創作している。それを見せてもらいに行った。18点の作品をぜひ人に観てもらいましょうと話をした。
監督の体力的には一日か二日が限度だが個展を私は実現させる。
監督のキーワードは「執念」か、それを奥様と娘さんが支えている。伝説の監督の名を「原田徹」という。残した名作は数知れず。(文中敬称略)

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