新聞社というのが今以上に社会的地位を持ち、各新聞社がそれぞれ個性を発揮していた頃、各社を評してこう表現された。
朝日インテリ、読売ジャイアンツ、毎日ノンポリ、産経右翼。朝日新聞の人間は、今でも朝日以外はダメ新聞だと思っている。
確かに名記者を輩出し、政治部と司法に強い朝日と言われた、私が憧れた記者がいた。(深代惇郎)
社会部が強く、取材力も強く、ヤクザにも強いのが読売であった。(特に大阪読売には黒田清軍団がいた)
私が最も好きだった記者もいた。(本田靖春)
毎日には国際部にカリスマ記者がいた。(大森実)
作家司馬遼太郎が産経にいたのは何故だろうか。
朝日は今だに創業家と社内抗争をしている。
そのため取材力は劣化している。
読売は正力松太郎という国家権力を動かしていた人間が生み、販売の神様が日本一の部数にした。
現在のボスは政界をも動かす大ボスである。
”ペンは銃よりも強い”という自負がかつての物書き(文士とも言った)や記者魂であった。
現在私の愛読紙の第一は東京新聞である。
友人に一人の記者さんを紹介され、親しくさせていただき、その人柄と取材姿勢に心打たれた。
九月十九日(火)東京新聞朝刊「総合」全ページに、「言わねばならないことを100回目」山田洋次監督の話がとてもいい話なので原文のママ一部書く。
「男はつらいよ」シリーズ。確か二十六作か二十七作だったと思います。
妹のさくらが旅先の寅さんを心配して「おにいちゃん、今ごろ、どうしてるんだろ」「旅先で病気にでもなってたら、心配だわ。健康保険にも入っていないし」というせりふがありました。
その映画が封切られて、しばらくたって厚生省(現、厚生労働省)の某課長さんという人から僕の家に手紙が来たのです
。
こんな内容でした。
「今回の寅さんも大変おもしろく見ましたが、さくらさんが『お兄ちゃんは健康保険に入っていない』と言っておられることに、一言申し上げたい。われわれ、国民皆保険を目指すものてしては、寅さんにも、ぜひ入っていただきたい。住所不定でも、さくらさんの住所にすれば入れます。」
僕は偉い公務員がいるんだな、この人は国家公務員の鑑だな、とひどく感心したものです。
このシリーズは2013年12月13日から始まった。
これほど息の長いシリーズを全ページ使っている新聞社はあるだろうか。
地域の人ひとり一人に何か困っていることはありませんかと接するのが、公務員、その代表者が政治家である。
政権の私物化は決して許されない。
新聞記者を目指す若者に、おススメの一冊がある。
「たかが朝日、されど朝日」
(文中敬称略)