私は極めて不謹慎な人間である。10月12日(土)台風19号の襲来で、外出不能であった。2時から4時、いつも来てくれる鍼灸の達人が、メンテナンスに来てくれるのを、体中で待っていた。朝、電話が達人から入った。平塚に住む達人の家の裏に、河内川があり、そこが予報ではかなり危険になる。お子さんが三人いるので守らねばならない。当然だ、いいよ大丈夫だよ、応えた。で、仕方なく一日中マットレスの上で横になり、ゴロゴロしながらテレビのニュースをずっと見ていた。台風はまるで生き物のように、愚かな文明社会の中で生きている我々人間に対して、襲いかかって来る。特異な島国、山林の国、人間の体を支配する毛細血管の血の流れのように流れる、川の国。島国は海に囲まれ、山には火山が連なり、海底には地震帯がびっしりとある。いつでも怒り狂ってやるぞと凄んでいる。テレビを見ていて本当に「川」が多いなと川の名を見る。不謹慎に川の名からいろいろ感じた。大相撲の力士名はたくさんある。山とか、海とか、岩とか、花とか、錦とか、イロイロあるが、今いる関取の名で川がつく名の力士はいないなと。むかしは「清水川」という力士がいた。千曲川(長野では信濃川)と言えば、「五木ひろし」の名曲があったな。荒川といえば、「王貞治」を一本足打法にした名コーチの名だ。早川といえば、我々の業界の先駆者「早川弘」さんというグラフィックデザイナーがいた。そういえば多摩川に出没していたアシカの“タマちゃん”はどうしているのだろうか。善福寺川といえば、むかし私が住んでいた東京の杉並区を流れていた。住んでいた近所にあった教会の、外国人牧師が殺したといわれた“スチュワーデス殺人事件”を思い出す。牧師は日本から逃亡して迷宮入りとなった。死体が善福寺川に浮かんでいた。玉川といえばやはり「太宰治」の心中を思い出す。マズイこんなことばかり考えていては、川があちこちで氾濫しているのに。「氾濫」といえば、むかし読んだ「伊藤整」の大ベストセラー“氾濫”を思い出す。主人公の一人である大学教授は、私が育った東京都杉並区荻窪に住んでいた。荻窪といえばやっぱりラーメン。丸福の親子はどうしているのだろうか。この店以上のラーメンに未だに出会っていない。でも春木屋がある。イケナイマズイこんなことばかり考えてしまう。藤沢にある小さな川、引地川に放流してあげた、一匹の金魚は無事だろうか。近所にあるマンションにアライグマが出没したと聞いた。友人からの手紙で、武州三多摩、あの新選組の「土方歳三」と、RCサクセションの故忌野清志郎が育った、日野市にもアライグマやハクビシンが出没したらしい。その駆除に30万円ぐらいの費用が、かかったとか。久々に浅川という名を聞いた。歌手に「浅川マキ」さんといういい歌い手がいた。それにしてもNHKの天気予報士「斉田季実治」さんは、無感情、無表情だ。きっと風速100メートル以上が吹いても、きっと“タンタン”とカンペを読むだろう。“少しでも命を助ける”ようにと言うが、“少し”の領域がよく分からない。やはり日本人には“防災学”を子どもの頃から学ぶことが必要だ。台風はこれからも、毎年ジャンジャンやって来る。それはどんどん強大化していく。地球温暖化のせいだ。恐い顔で訴える、スウェーデンの環境家グレタ少女のいう通り、世界中のオトナたちは、ブッタルんでいるのだ。私もその一人。
(文中敬称略)