人間は夢や希望を持つと胸がふくらむと表現する。オレも若い頃はノーベル賞を目指して胸をふくらませたよとか。アカデミー賞とか、芥川賞とか、運動会の徒競走で一等賞とかもある。初恋に胸をトキメカせて、路地の電信柱に隠れてそこを通るあの娘をドキドキと見送る。人間は胸に感情を宿すのだ。胸がふくらむでもこんな記事を読むと思わず手にした薬をポロポロと床に落とす。「米J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)に8500億円賠償を命じる評決」と3段組の記事の見出し、小見出しに、「抗精神病薬副作用」ニューヨーク共同発、10月9日東京新聞夕刊。米東部フィラデルフィアの裁判所の陪審員は8日、抗精神薬「リスパダール」副作用で胸部がふくらんだと主張する男性が、米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンを相手取った訴訟で、J&Jに80億ドル(約8500億円)の支払いを命じる評決を出した。ロイター通信が報じた。米メディアによると、リスパダールを巡る訴訟は13000件以上あり、これまでで最大の賠償額。J&Jは上訴する意向を示している。原告の男性は、医師に処方されたリスパダールを服用後、乳房が発達。J&Jが薬の副作用の警告を怠ったと主張していた(東京新聞より抜粋)。この記事を読んで、ずっと前に見た「サル」という映画を思い出した。サルとは新薬開発のため治験に応じたアルバイトの人間への呼び名だ。治験者募集の広告は時々ある。バイト代はかなり高い。新薬の治験なので、どんな副作用がでるかを追う。サルになるためには、たくさんの同意事項に同意しなければならない。大学病院で大手術や難手術のときもたくさん同意しなければならない。「サル」という映画では、若い男女や、中年たちが治験に応じて薬を服用しつつ、同じ場所で生活をする。一週間、十日、二週間、サルたちはそれぞれ副作用が出始める。去る者は追わずとはならない。サルは去ることができない状態になり、やがてとんでもない世界が生じる。新薬を生むということは、鉱山で金を見つけるよりも難しいと言われる。私たちは多くのサルのおかげで、病気を治してもらっていることになる。今日も日本中で新薬の治験がアチコチで行われている。難病を抱えている知人や友人、恩人にとって、その病気が治る薬が生まれるとしたら、胸がふくらむ思いとなるはずだ。東京新聞の記事を複雑な思いで読んだ。私のタチの悪い性分を治す薬は出ないか。一錠で6、7時間ぐっすり眠れて、パッチリ目覚められる薬は出ないかと思う。少々胸がふくらんでオッパイになってもかまわないから。昨夜、東北のご住職から送っていただいた、新サンマを食した。サンマは開きばかり食べていたので、脂がのった新サンマのお刺身と全身(塩焼き)は旨かった。スリ身はダンゴ状にして、おすまし汁に。最高だった。東北のご住職の話は後日に。すばらしい人格と熱情の人、そしてやさしい奥さんだ。
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