長い人生の中、プロ野球選手たちとの交流は多く、今でも続いている。元選手たちはコーチになったり、二軍監督になったり、スカウトになったり、選手の首を切ったりしている。プロ野球の選手とは、すでにベンチに入っているだけで天才である。大敵なのが怪我と気持ちの弱さである。選手寿命は短い。セリーグで優勝した広島カープの新井貴浩選手でも41歳だ。(今年で引退する)天才野球少年たちの人生は、ドラフトというくじ引きで決まる。仮に18才でプロ入りして、41歳まで活躍しても、実働23年である。まるで鉄の固まりのような、ボールを投げて打つ。当然体中のアチコチを痛める。入団してもわずかで、野球生活を終える選手の方が断然多い。全国から集まった天才野球少年たちを待つのは、過酷な大人社会だ。このガキが活躍したら、自分の出番はなくなる。イジメ、イヤガラセ、軍隊のような寮生活が待っている。(この頃はパワハラとなるのでかなりやさしいらしい)
母子家庭で育った一人の高校野球少年がいる。母は朝も、昼も、夜も働き、息子のプロ入りを夢見る。息子はプロに入って母に「家」を建ててあげたいと、まい日朝4時から練習する。それを手伝うのは一人の老監督だ。朝からバッティングピッチャーをして教える。引退間近の監督は、一球一球愛情を込めて投げる。野球少年は、今年ドラフトで選ばれなかったらプロを断念する決意をしていた。ドラフトで1位に選ばれた選手が、期待通りに活躍するケースはそう多くない。むしろ少ない。夢の甲子園に行くまでに、肉体がボロボロになっているのだ。大学に進んでも、全国から集まった猛者の前では、ただの一年生でしかない。徹底的に成長の芽をつぶされる。(何故なら頭角を現したら、それだけ自分の道が狭くなる)そんな中、数少ない人間がスターとなる。 そのスターの座も、絶えず追われている。幸い母子家庭で育った野球少年は、ドラフトで選ばれた。お世話になった母に「家」を建てますと力強く言った。ガンバレ応援しているぞ。入団したチームはDNA横浜ベイスターズ。選手の名はあえて伏す。