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2011年4月14日木曜日

湘南から喜怒哀楽 「チンの終わり」

私の会社の側に「さんさく」という和風小料理屋があった。
先日久々に魚でも食べようかと思って立ち寄ったらなんと更地になっていた。

そこの親父は料理の鉄人、道場六三郎の同門で兄弟子だった。
一度テレビの取材番組でここ、おれの兄弟子の店だなんて訪ねていた。
入って左に7〜8人吸われるカウンター、中に4人掛けのテーブルが4つほどあった。
京都のおばんざい風に、カウンターの上に魚の煮付けや焼魚、肉じゃがやなすの煮たのなんかが色々置いてある。即ちこれらはクッキング(料理された)物ではなくクックド(料理済み)された物であった。

刺身などはともかく料理済みを「チン」した物なんてへたり込んで食えないよと主人に言った。
主人はムッとして70歳位の顔を上げて私を睨んだ。

日本料理屋で「チン」するかと連れの会社の人間に言った。
おつまみにおからが出た。なんかすっかり意気消沈であった。
細身の親父に小さなつくりの奥さんであったが結局一度の引越を経て新築したがやはり10年程で終わった。


赤坂に道場六三郎の店があるが一時期の噂は聞かない。
やはり料理は作りたてが基本だと思う。西京漬けや鰆の焼いたもの、キンキ煮の付け、鰯の煮付け、鯖の塩焼きなんて「チン」されたらガックリきちゃうでしょう。

「さんさく」の親父どうしているかな、更地を見る度思い出す日々なのです。

「寿し利」という店があります。時々顔を出しますがお客さんがいる事がごくまれで、寿司はあまり旨くありません。奥さんが気の病で長く入院をしていてヘェヘェヘェと笑う親父一人です。心配だから顔を出す、そんな感じです。まあ奥さんへのお見舞です。

全国客のいないお寿司屋さんコンテストではきっと三位以内は入ります。
ヘェヘェヘェと笑っていますが心の中では泣いているんです。

「舟よし」というおでん屋があります。かつてはマガジンハウスの人間で朝まで一杯でした。
しかし今は出版不況で朝まで誰もいない事が殆どです。「カラスミ」作りに命をかけて42年、手に血圧計を付けて頑張っています。

この間夜中の2時頃チョイと寄ったら、なんと7時半から呑んでいるうら若き女性がいました。
なんと7時間半も呑んでいたのです。俺が先に死ぬか、親父が先か賭けました。
まあどっちが先に逝っても世の中には影響ないという事で終わりにしました。
その店の前のホテルに泊まって湯上がりのビールを飲んだのですがすっかり湯冷めしてしまいしゃっくりが未だに止まりません。

みんないっぱいいっぱい生きて居るんです。

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