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2012年10月23日火曜日

「歌舞伎揚げ」


※イメージです


砕いた人間の肉をカレーにして臭いを消す。
 86歳の元警視がとんでもない迷惑ババアの首を切り落とす。
想う女性をストーカーして同じマンションに引っ越して来て刺し殺す。
どえらい女が一人二人三人四人とコンクリート詰めにする。
女性を全裸にして首輪をかけ、よってたかってなぶり殺す。

推理小説家はいろんな事件をモチーフにして自分なりに事件を作り出すのだが、事実はまさに小説より奇なり、いかなる作家も想像を超えたおぞましい事件が連日起きている。
長引く不況が人間の心を獣に変えてしまった。


列車で通勤していると本当にとんでもないマナーの男女がいる。
何しろこの私が言うのだから。その列車は熱海行きであった。
乗客の殆どはもうすっかり温泉気分、靴を脱ぎ靴下を脱ぎ水虫に食われた足を出す。
向いの座席に足を出す。

夫婦とおぼしき30代の二人はチューハイ、缶ビールをパカンパカン空ける。
イカサキ、タコサキ、細切りチーズ、それと歌舞伎揚げのせんべいを未だ動かぬ東京駅で飲み、かつ食う。歌舞伎揚げの油のニオイがとにかくクサイ、二人はうるさい。
その二人の横の席にいた私はじっと耐え忍ぶ。浅野内匠頭の様に。
だが人間の我慢は限界というものがある。

川崎を過ぎた頃それは起きた。
男は全て食べ残った歌舞伎揚げの袋の底にたまった残り物をでかく空けた口の中に入れて流しこんでいた。パーンと列車内に袋が割れる音がした。誰が何をどうしたか。

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