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「海に出て、木枯らし帰るとこなし」
確かこの様な一句だった。記憶違いかもしれない。
山口誓子であった気がするが確かでない。私は句才が全くない。
といって他に才があるかと問われれば正しくまるでなしと答えられる。
この一句に出会った年、私の心の中に木枯らしが吹いていた。
寒く冷たく鋭く針で刺される様な風であった。
自分で自分を励ましそして叱咤した。
こうなったのも自業自得なんだ、私は木枯らしに許しを願った。木枯らしはいう、これが最後の機会だ、もし約束を守らなければ次の年は北国の海辺の石にしてしまう。そして容赦なくお前をいじめ抜くだろう。
何故石にというのか、石は意志と同じ硬い心を生む象徴だ。
人間は石なのだ。
海辺の石は人間の意志なのだ。
木枯らしはヒューヒューと訳の分からない事をいって消えた。
私は海辺の石に打ち寄せた水で意志と書いて置いた。強く激しく打ち寄せた波が来た。
一度目の波で海に引き寄せられ、二度目の波で石は海に吸い込まれていった。もう帰るとこはない。
正月の海を歩いていて一個の石を拾って帰った。そして一つの意志を固めた。