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2014年6月20日金曜日

「土壇場力」




試験で100点を取るのは難しいが、サッカーで一点を取るのも難しい。
日本対ギリシャの戦いは、神話の国日本とギリシャ神話の国との戦いであった。
ヤマトタケルとかスサノオノミコトがいたら、アキレスとかヘラクレスがいたらいかなる戦いになっただろうか。

0対0の引き分け、相手は一人退場で、11人対10人、でも一点が果てしなく遠かった。
走力、突破力、飛力、決定力が世界レベルではない事がハッキリわかった。
狩猟民族と農耕民族の差が歴然とあった。
レフリーが一人退場となったチームから、中々次の退場を出さない事もわかった(何度も反則があった)。

日本的に言うならエクアドル人レフリーの武士の情けなのだろう。
日本コロンビアレコードという会社がある。そこには美空ひばりという大歌手がいた。
♪勝つと思うな 思えば負けよと“柔の道”を唄った。

次の対戦相手はコロンビアだ。
もう後がない、♪敗けると思うな思えば敗けよだ。人生の最後に成功を治めた人間が必ず持っていたものに「土壇場力」というのがある。何事も諦めてはいけない。
人間には火事場の馬鹿力というのも用意されている。

「戦争か平和」か、日本国憲法の行方が土壇場に差し掛かっている。
こちらの戦いからも目が離せない。相当に危うい状況なのだ。無関心は国を滅ぼす。

2014年6月19日木曜日

「熱いものは熱い」


イメージです 


その姿を見た時、中華料理店で“小籠包”や皮ものを食べる時は十分気をつけねばならないと思った。

その日、私は友人と中華料理店でランチをしていた。
私は五目麺をオーダーし、友人はワンタンと小籠包をオーダーした。

元々私は小籠包が大好きであったのだが“ホタテアレルギー”体質となり、もしかしてホタテが入っていたりすると全身がカユイカユイ状態になってしまう。
それ故残念ながら“焼売”も控えている。

友人と話が弾んだ。
サッカーは手を使ってはいけないスポーツだと思っていたが、実は一番“手”を使うスポーツである事を知った。つまり汚い手だ。
つかむ、ひっぱる、殴る、ひっかく、しがみつく、突き飛ばす、突き倒す。
ハイスピードで見ると様々な反則をお互いに繰り出す。

私はサッカーは詳しくなかったのでその友人から聞いた。
料理が運ばれて来て、私は型どおり五目麺を見つめ、まず何から手を付けるかを考え(ホタテは抜いてもらった)まずはレンゲでスープをすすった。
少し遅れて友人の小籠包が竹の入れ物に入って運ばれて来た。
丸い蓋を外すと湯気の中に小籠包が四ケ入っていた。
ワンタンがクラゲみたいにユラユラしていた。

アッチ、アッチ、アチチチ、アッツゥーと友人は口の中で小籠包をフギャ、フギャさせた。皮に包まれた中にアツアツの肉汁があり、用心深く二分割にしないでいきなり小籠包を攻撃したので相手が反撃したのだ。

やっぱり中国とは仲良くしないといけない、また用心深く付き合わないといけない事を知った。友人は、何だこれはやけに熱いじゃないかと、小籠包の法律では当たり前の事が、当たり前じゃだめみたに、フギャ、フギャつぶやいて水を一杯のんだ。

その店の小籠包はこじんまりしたサイズではなく焼売ほどの大きさであった。
仕方ない、ワンタンを攻めるかとレンゲにワンタンを乗せて口に運んだが、これがまた熱かったようで再びアッチ、アッチチとなった。聞けば猫舌との事であった(?)

中華料理の中で皮を使っているのは“春巻き”もあるがこれも十分気をつけねばならない。
当然私はその姿を観て大きく笑った。五目麺には伊達巻が、イカが、うずらが海老が、カニが乗っている。ベビーコーン、竹の子、キクラゲ、白菜、シイタケ楽しみいっぱい。
それを丁寧にずらして麺を箸に絡ませた。
友人は小籠包を箸で二分割にしていた。勿論、フーフーしていた。

2014年6月18日水曜日

「もう一つのドア」




法律の掟の中に“共同正犯”という罪がある。
例えば七人で本屋さんに入った。その内の一人が本を万引きした。
残りの六人はそれを知らなかったと言うが、防犯カメラには六人が万引きした人間の事を知っている様であったり、見方によっては万引きに気が付かなかった様でもある。

一人の人間は入り口付近でキョロキョロしていた。
一人の人間は首が痛かったのかグルグル回していた。
一人の人間は大きなトートバッグを持っていた。
一人はチューインガムを一枚噛んでまた一枚口に入れた。
一人はメガネのレンズをハンカチで拭いていた。
一人は本棚に手をかけメールを送っていた。

万引きしている一人は本屋さんたちの憎き大敵、常習犯であった。
持って来た大きな紙袋の中に布袋を入れていた。
パッコリ開けたその中に高価な本を選び次々と入れていった。
何個かある防犯カメラは鮮やかな手口を見つけられなかったが、一台がかろうじて一冊の本を入れたのをキャッチした。七人はゾロゾロと店を出た。

万引きした人間は当然お金は支払わない。
店を出た後モシモシちょっと待ってとなった。店員二人が紙袋の中の布袋を見せてもらうと、そこには十数冊の本が入っていた。実にあっさり万引きを認めた。
ありがとうなどと礼を言った。万引きした男は駆けつけた警官に連れて行かれた。
万引き人間は警官にも礼を言った。

後日、六人の人間も警察に捕まった。
が、六人は本当に何も知らないと言い続けた。実は本当に知らなかったのだ。
キョロキョロしていたのは彼女を待っていたから。
首をグルグル回していたのは前夜寝ちがえていた。
トートバッグを持っていたのはいつも持っていた通り。
チューインガムはいつも噛んでいるから。
メガネのレンズはくもっていたから拭いただけ。
本棚に手をかけてメールしていたのはその方が楽チンだったから。

実はこの七人はフェイスブックで知り合い、その日初めて会っただけ、分かりやすい本屋の前で会い、残りの人間が来ないので、まあ本でも立ち読みしましょうやと店内に入ってウロウロしていただけであった。

で、結果は主犯一人、他の六人は“共同正犯”となった。
その理由はそれぞれの行為や仕草が万引きを助けるサインであった、また囮であったと決められた。ウソッー、信じられねえ、ジョーダンじゃネエーと言い張り起訴された後、法律と長い間闘った。

主犯は勿論刑務所に。
前科十一犯、全て万引きであり、全て本屋さんであった。
無類の読書好きで刑務所が何より好き、いちばんゆっくり読書が出来るとうそぶく男であった。あんまり刑務所に入りたがるので、入る度にオメエーは本ばかり読んでいるからシャバに出ろと、出されてしまうのであった。
その度に頼みますから刑務所に置いて下さいと泣いて叫ぶのであった。

実はこの話は私の作り話。
先日有隣堂という本屋さんに入りウロウロ本を探しながらフト思いついたのです。
映画にしたら面白いかもと思ったのだが???マークが多いので考え直しです。

STAP細胞の小保方さんを主犯にするなら、共著に名を連ねた他の博士たちはみんな、共同正犯なんだよ、科学者も信用出来ない世の中は困ったもんだ。
STAP細胞はあります”を信じています。例え私一人でも。
難病と戦う人々の思いを込めて。

〈神が一つのドアを閉めたら、もう一つのドアが開きます〉立ち読みの本で知った言葉です。

2014年6月17日火曜日

「超絶の映像」





映画館のカタログの解説を記す。
「ヴァンデ・グローブ」四年に一度開催される世界唯一の単独無寄港世界一周ヨットレース。
南半球一周およそ26千マイル(約48,152km)の航程をおよそ100日間かけて帆走する。

フランスの大西洋岸のヴァンデ県レ・サーブル=ドロンヌ港を出発後、大西洋を南下、喜望峰を抜け、南大西洋を出て、南米大陸のポーン岬と南極大陸の間にあるドレーク海峡を抜け、再び大西洋に入り北上、レ・サーブル=ドロンヌに帰る。
強烈な風、強烈な荒波、無援助で長期間、緊急処置も及ばない航路を走る非常に危険なレース。

 2012-2013のレースに最年少で優勝した29歳のフランソワ・ガバール氏が打ち出した新記録は782時間16分。途中いかなる外部からの物理的援助は受けられない。
医学的アドバイスのみ通信で得る事が許されている。
レース中にスキッパー(舵を握る者の事)以外の人が乗船すると失格になる。


このレースを丸ごと映画にしたとんでもない映像を観た。
題名は「ターニング・タイド/希望の海」監督:クリストフ・オーファンスタン、撮影:ギョーム・シフマン。一日一回だけの上映。新宿シネマカリテ。
ミニシアター、座席数80(満席)外は土砂降りの雨。

ヨットに全く縁遠いのだが、会社の顧問をしてもらっている方が、有名なヨットマン。
その方の部屋のカレンダーに荒波と戦うヨットマンの写真がある。
遠くから見ると、どこかのどかに見えるヨットレース。実はこれが死闘なのだ。
自然という猛獣と戦うのだ。風速数十メートルの中でヨットに乗っていると思えばその過酷さが想像出来るはずだ。

緻密な作戦、戦略、技術、強靭な体力、強固な意志、強烈なプライド、勇気と冷静、自分自身を守るのはスポーツマンシップと絶対的哲学だ。海は一切容赦しない。
一瞬の油断が致命的となる。

今週からラッセル・クロウ主演の「ノア 約束の舟」が上映され始めたが、現代のノアの方舟みたいな宗教的メッセージを感じた。大洪水の中で約束の地を求めたノアの方舟。
人間と動物たち。この映画ではその動物に変わるアイディアが用意されている。
フェアプレー精神が現代人から消えて行く。
自分のプライドとは何かを考える事すら引き出しの中に閉まっている。

この映画を作った人々に大拍手!大喝采!を送りたい。
実際のレースと同じ様に設定をし、二ヶ月半をかけて撮影したとカタログに書いてあった。もちろん命懸けだ。フランスの映画野郎たちは本当に素敵だ。

ヨットをこよなく愛したという「石原裕次郎」がこんな歌を唄った。
♪海の男はいく 強者はいく〜と。海、男、風、荒波、強者、家族、友情。
この映画の結末は、現代人が忘却してしまった強者が、大切な事を教えてくれる。
近々全国順次公開。ぜひ観てほしい。感動的なラストだ。

ボブ・ディランの名作「天国の扉」がカバーリングされて流れる。
♪ノック、ノック、ヘブンズドア ノック、ノック、ヘブンズドアと。
泣けて来てしまった。早速顧問の方に観ましたよと電話をした。

2014年6月16日月曜日

「ドログバと包丁」




棚からぼた餅、みたいなワンチャンスにこりゃおいしいと左足で蹴ったら初ゴール。
日本中を熱狂させたのは本田圭佑選手だった。

が、輝いたのは前半の16分迄。
元日本代表監督トルシエがこうコメントした。
日本の敗因は“本田”と“香川”が動かず、機能していなかった。

高温多湿、熱帯林の中で戦うには日本人の体質は前半でヘトヘト、バテバテになってしまった。特に本田選手は殆ど思考停止、ただウロウロしているだけ、たまにボールを持っても直ぐに奪われてしまう。

ザッケローニはずっと“ホンダ、ホンダ、ナンダ、カンダ、ドーナンダ”と叫び続けていた。もっと動け!ボールを取りに行け!と。
試合後選手たちは前半ですっかり疲れちまったと口々に言った。

バカ言え、プロだろう、泣きを入れるなと思う。そう思っても、それを言ったら終わりの言葉なんだから“ドログバ”なんていう怪獣が入って来たら全員ブルってしまってオドオドになって二分間で二失点、で敗戦決定となった。

丸々徹夜して見た私もヘトヘトになってしまった。
ハッキリ言って四年前のワールドカップより弱いチーム、バラバラのチームである事が分かった。当然チームの輪、サッカーで最も大切なチームの規律を壊しているのは「本田圭佑」である事は間違いない。

自分の部屋で見ていた熱狂的日本ファンの愚妻が二階から降りてきて言った。
「野獣に勝てるわけないわよ、全然スピードが違うわよ」まだ試合時間が残っているのに、ジャガイモの皮を剥き始めた。

オー攻めた、チャンスだと言っている後ろで包丁を握りしめながら突っ立っていた。
ヤバイ、アブナイ、ドログバと包丁であった。技術以前の問題があると思った。
フィジカル、メンタル、つまりは体力と精神力、四年前にスターとなった選手たちはすっかりハングリーさを失っている。

CMに何本も出てフトコロはゴッツく重くなった。
その重さが動きを鈍くしてしまっているのだ。本田圭佑をザッケローニ監督は過信せず、早めに交代させてやる事だ。それと若手の大胆な起用だ。

それにしても人類は野獣であった事をドログバという魔王みたいな人間に感じた。
きっと、ノアの方舟の“ノア”はこんな男だったのだろう。

愚妻の包丁がギラリと光った。左手には人参を持っていた。
次の相手はギリシャ神話だ。
それにしてもTVのニュース映像で風呂に入り、チンポをブラブラ揺らせながらサッカーの応援していたオッサンたちの姿に、ガックリ来てしまった。

2014年6月13日金曜日

「オウンゴールはダメ」




「川田晴久」年配の方ならこの名を知っているはずだ。
スーパースターであった。
“川田晴久と東京キューバンボーイズ”というグループのリーダーであった。

あの美空ひばりが、お兄ちゃんと慕ったボードビリアンである。
大ヒット曲は、♪地球の上に朝が来た その裏側は夜だろうと…。
物理化学が①だった私にも分かる定理だ。

あの頃日本の裏側にあるブラジルには夢を抱いて移民する人々が多くいた。
日本人は路地でキャッチボールや缶蹴りやダルマ落としや馬跳びをしていた。
サッカーなどは誰もしてなかった。サッカーは貧困の中で生まれたといってもいいだろう。グローブも、バットも、スパイクもいらない。
体と足と丸い固まりさえあれば、貧困の中からスーパースターを生むことが出来た。
素足でボールを蹴ることを体得した少年たちが世界中に飛散した。

今日から♪東京の上に夜が来た その裏側のブラジルは朝だろうとなり、初戦ブラジルVSクロアチアがキックオフとなった。
不眠症の私にとっては非常に難しい時間割だ。
何しろいつも眠る時間に試合が始まるのだから。ずーっと起きていなければならない。
通常4時か5時に眠りにつく準備をし、3時間半か4時間半で目が覚める。

さぁ、どうする、録画で見たくてもその方法を知らない。
北原みのり氏というライターが朝日新聞のインタビューでこんな事を話していた。
テレビのバラエティ番組に出ていた安倍総理が、イチゴをフォークでわざわざ半分にして食べていた。この違和感て何だろうと考えたら、安倍さんは子どもなんだと思い至った。私の不眠症なんていずれ永眠すればいんだが、日本国を再び戦争に向かわせてはならない。

たった一人の独裁的子どもに誰も逆らう気力も、根性も、方法論も持ち合わせない。
リベラル派というのが存在するなら、今こそその名を高める機会だろう。
閣議の時に署名しなければクビにされるが、後世までその名を残すだろう。
また次のリーダーとなる道が大きく拓けるだろう。根性だよ、根性。
子ども的リーダーは、攻めている時は調子よく見えるが、ケツまくられて守りに回ると、急にオドオドしてしまうものなのだ。日本をオウンゴールで敗戦させないために。

京都にいるヘアメイクアーティストの友人が、鹿肉と猪肉と無農薬で育てたニンニクをごっそり送ってくれた。食べ方を詳しく書いてくれてあった。
それを食べた私の体は“ケモノ”と化している。イノシシの竜田揚げは絶品だった。
顔に似合わずその味は実に繊細なのだ。

2014年6月12日木曜日

「救世軍の女」




神もいない、職もない、金もない、家もない。
その男には、過去もない。

記憶を失っているからだ。
コンテナに住む貧しき人々。五十代の男と五十代の女
救世軍の制服を着た女は一片のパンとスープを行列の男たちに与える。
そこで出会う。何かが二人を引き合わせる。

七十代の女性、顔はシワ、シワ、シワ。まるで葉脈の様に入り乱れてある。
貧しき人々はこの老女の歌に聴き入れる。男と女も。

♪〜人の心とは小さなもの より処のない未知の地 そこでは人は壮大な夢を見る 愛と憎しみをからませて 喜びや哀しみを味わい尽くし 恋に燃えては 毒矢に射られる すべては小さな心で起こること 幸せも喜びも 浅はかな考えも 高邁な理想も 燃える感情も 凍てる感覚も すべては小さな 心で起こる 

君の目に何かがついているよそう言って男は女の顔に近づき目の脇に口づけをする。
不美人でやせ細った救世軍の女は、一度も恋の炎を燃やした事がなかったのだろう。
それまで固く構えていた無表情の女は、いつしか“初恋の人よ”と切なく言う。
また人生は後ろに向かっては進まないわよと。

アキ・カウリスマキ監督の名を世界に知らしめた、カンヌ国際映画祭パルムドール賞(最高賞)受賞作品。「過去のない男」小津安二郎を敬愛するというフィンランドの監督の作品には、ただ一語も無駄がなく、教訓があり、諧謔があり、哲学がある。

どん底で生きる人間にも恋が芽生える。過去を失った男は未来に向かって歩き始める。
救世軍の女と手を握り合って。現在この監督を再研究中である。

六月十二日午前二時二十二分三十七秒。外は、雨、雨、雨。
六月の雨は情緒がないので嫌な雨だ。

2014年6月11日水曜日

「スポーツの力」




いよいよサッカーのワールドカップが始まります。
私の予想を記しておきます。日本は一勝一敗一分、という実に曖昧な予想です。

本田選手を過信すると酷い目に遭うでしょう。
動きが悪ければ即交代させることが大事です。大きな試合には遠慮は許されません。
大久保選手、柿谷選手、大迫選手が得点するでしょう。
初戦に負けると、〇勝二敗一分なんて事になるかもしれません。
本田選手を外すと、三勝〇敗なんて事になるかもしれません。

香川選手、岡崎選手、長友選手は本田選手を外したら頑張ると食堂のオバサンに言ったとか(ウソです)。遠藤選手はオレをどう使うかで全ては決まるよとタクシーの運転手さんに言ったとか(ウソです)。

実は私はサッカーに詳しくありません。
ボクシング系と野球系なのです。それ故ここに記した選手名しか知らないのです。

本田選手のファンの皆さんゴメンなさい。彼はバセドー病を手術した様です。
これは大きなハンデです。バセドー病は絶えず体が運動している様な状態なのです。
心臓がバクバクします。発汗は止まりません、ヘトヘトなんです。それ故どんな事になっても許してあげねばなりません。喉元を切った後なのだから。

私の脳内イメージではイチかバチかで起用した選手がスーパーヒーローになるようです。
レギュラー選手の名は新鮮味に欠け過ぎです。研究もされ尽くしているはずです。
優勝はドイツでは、スペインとブラジルは期待されすぎで“えっ”という結果になるでしょう、ウルグアイとか、イタリアもありかもしれません。
やはり個人よりチーム力です。
私は予想を外しても何の責任も感じずにいい加減を決め込んでいるはずです。

それより問題なのは、大阪の橋下市長と教育委員会が結束して、問題児と決めた生徒を問題外だと言って、鑑別所の手前みたいな処分を課すという事です。
これは教育者の教育放棄です。ワルガキたちは一人ひとり話しあえばみんな淋しがり屋で、愛情に飢えた子どもなんです。

処分を下したら問題児はきっと本物の悪になって行くはずです。
父親がいない、母親がいない。両親がいない。やさしい言葉、やさしい事に飢えているんです。処分など下さずに、野球やサッカーやボクシングや卓球などのスポーツに参加させてあげる機会を大人たちが作ってあげねばなりません。

善良なる人々を感動させ、熱狂させるために体を張って戦うスポーツマンの多くは、かつて問題児であり、不良の烙印を押された男たちなのです。
痛いほど愛情のありがたさを知っているのです。
あらゆるスポーツは、あらゆる問題児を救う力を持っています。問題は大人にあるのです。

2014年6月10日火曜日

「五億円より家族愛」




過ぐる日、私は一軒のラーメン屋さんに感激、その店のメニューを借りて帰って来た。
おじさん今度来た時に返すからねと言って店を出た。

そのメニューはいつもカバンの中に入れておいたのだが、その機会に恵まれずにいた。
何故メニューを持ち帰ったかといえば、その店が原宿にしては余りに美しくなく、安く、そして昔の味がしんみりしていたからだ。

九時閉店というのもラーメン店にしては早い。
赤い旗竿に「本場長崎ちゃんぽん」という白ヌキの文字が目に入ったからだ。それと店名が「昭和軒」というのも気に入ったのだ。

私が後輩と入ったのは八時を過ぎていた。
ポコンと腹の出たおじさんがたっぷり汗を吸ったヨタヨタの白い(黄色に変色中だった)Tシャツで、一人で何役もこなしていた。
いつからやってんのみたいな私の質問に、おじさんは五十年前から、私は二代目ですと人のいい顔をして少しだけ笑った。

この店には何かがある、私の読みは当たっていた。
六月一日(日)フジテレビ、午後一時四十分〜二時三十五分。
アホでバカな事ばかりの番組を作るフジテレビ唯一の良心的番組といってもいいドキュメンタリー番組で、あの「昭和軒」を取り上げたのだ。

この番組のチーフプロデューサー味谷和哉さんは絶えず弱者や、時代に取り残された者や、数奇な運命を背負った人間たちの喜怒哀楽を丹念に追い求める、日本を代表する作り手だ。実は今から六年前にも「昭和軒」を取り上げていたのだった。

概略を記す。
明治通りから少し中に入る、通称裏原宿。
かつては原宿三丁目といった。現在は神宮前、宿場町の名であった原宿の町名は消えた。先代夫婦は新潟より上京した。東京オリンピックの頃は四人の従業員がいた。
お客はジャンジャン入った。バンバン収入もあった。
陽気な先代はやがて糖尿病を悪化させて片足を切断し義足となる。
長男、長女、次女に恵まれる。八十五歳で無くなるまで夫婦は仲良しであった。
長男は小学校の教師をしていたが辞めて店を引き継ぐ、四十代の頃離婚する。

地下一階、地上二階の小さなビルを先代は建てた。
地下は食材の倉庫、お客さんに喜んで貰えばと手製の漬物を作る。
一階が店で二十名ほど入る。二階は先代夫婦の生活の場だ。
店は家族全員で切り盛りする。

と、ここまではそんなに珍しくないのだが、これからが実にいい話なのだ。
バブル全盛の頃、この小さなビルに売ってくれ、売ってくれという業者が群がる。
何しろ表参道の直ぐ側という超一等地、三億円出すとか五億円出すといって迫られた。
新しくビルにすれば家賃収入は二百万円は入ると言われた。

先代も体の不自由もあり売ってしまおうかと迷うが、この店は家族の場だと思い断る。
バブルは弾ける。また表参道や原宿には様々な飲食店が出来る。お客は激減する。

先代を亡くした長男は、もう辞めようと思い長女や次女に相談する。
長女は八十歳となった母を思っていう。店を閉めたらお母さんが辛いと思う。
それに家族でやる仕事がなくなってしまう。次女もそう言う。

二代目は口を真一文字にし、目をキョロキョロして悩む。
お腹はボッコリと出ているのだが、この人は実にかわいい。
もうすぐ六十歳になるけどお母さんのためにこのままやりますかという。
長女の顔はほころぶ、やりましょ、やりましょと。家族の意見は一致する。

祭りの日、次女は大好きなお神輿を担ぐ、二代目の祭り半纏の背中には「原三」の文字がある。かつて原宿三丁目だったからだ。
お金より安定収入より、父と母の思い出を守る人間に心打たれたのだ。

というわけで「昭和軒」のメニューは返さない事にした。
家族愛の証として大切にする。二代目に白いTシャツをプレゼントしようと今デザインを考えている。サイズは多分トリプルLだろう。

番組の題名は「昭和軒のオリンピック〜表参道ラーメン人生〜」であった。
あの時、三億、五億で店を売っていたならば、きっと家族はバラバラとなり不幸の渦の餌食になっていただろう。ガンバレ!「昭和軒」フレー、フレー「昭和軒」。

代々引き継がれて来た、とろみのある名物ラーメンは今、外国人たちの人気メニューとなっている。この番組を見た人たちは東京オリンピックのある六年後まできっと通い続けてくれるだろう。

2014年6月9日月曜日

「スルメイカと名画」


のどぐろ干物※イメージです


チューブに入っていたものが出なくなった時、人は逆さまにする。
天地を逆転させるのだ。
そして残り少なくなったものがじっとキャップに向かってずり落ちて来るのを待つ。

それは歯磨きジェルであったり、わさびやマスタード、トマトケチャップだったりする。気が急いでいる時などは早くしろと言ったりして上下左右に振るのだが、それは大して効果なく虚しい事となる。

私の知人ご夫婦がきっと大阪湾あたりを出て、四国、九州を経て富山湾に入ったのだろうか。寄港先からクール宅急便を送ってくれた。
開けるとそこには「のどぐろの干物」と「スルメイカ」が六枚ご丁寧にイカの足でぴったり縛られていた。きっと富山名産、その身は薄く、白く、繊細だ。
何よりの大好物だ。夜が深まるのを待って食す事にした。
水木金の深夜、そして土日と私はこの名産で楽しませて頂いた。

さて、スルメイカにはやはりマヨネーズとお醤油と唐辛子が決まりだ。
スルメイカはすこぶる白い肌、なまめかしく絡んでいるイカの足、ガスの上の金網の上にとろ火。
スルメイカは香ばしいにおいをその体から発しながら、ゆっくり、ゆっくり、藤田嗣治の描く白い裸婦像のモデルが喘ぎ狂うように、ベッドならぬ網の上でのけぞった後に丸まった。焦げ目が体についている。
手にしてほぐそうとすればアッチチとなり、指を耳たぶに持っていく。

小皿にお醤油をたらし、そうだいけねえマヨネーズだと冷蔵庫を開けると、キューピーマヨネーズは殆ど残り少ない。鷲掴みにし、上から下へと力を込めるが中身は動かない。
だが少しはある。仕方ない逆さまにして時を待つとする。

その間、スルメイカを細々とする作業に入る。
焦げ目の入った体を両手の指で引き裂いていく。アチチの温度も低くなってく。
作業効率は上がったが、目の前のマヨネーズは中々下りて来ない。

後輩が送ってくれたを、日本酒を亡き友がくれた志野焼の徳利の中に入れてある。
「のどぐろ」もいい感じで焼けて、赤い肌をジュウジュウさせている。
待つ事五分、六分、えーめんどくせえとハサミを持ち出し、動きの悪いマヨネーズの胴体を真っ二つに切り裂いた。そんでもって小さなスプーンでマヨネーズを取り出した。

雨が激しくコンビニに行けない。それ故この様な事となった。
深夜作業であった。特別、格別の味に旨い酒、雨もまた楽しの気分であった。

知人のご夫婦は超リッチな人、四国の宇和島で建造した木製の大型ヨットでアチコチ寄港して回るのだ。
もう一人大型ヨットを仲間で持っている人は、過日一週間位かけて九州の屋久島、五島列島方面を回った。スタートは確か宮崎(そこまでは飛行機で)、その時大きな「飛び魚」の干物を送ってくれた。これはガチガチに固いのだが、小さくばらして(歯が壊れてしまうので)やはりマヨネーズとお醤油で食すと、酒が何杯もすすんでしまうのだ。

フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督の大傑作「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」173分と「愛しのタチアナ/浮雲」158分を観る。
夜明けまで、飛び魚とスルメイカとのどぐろと酒、名画にピッタリなのであった。
土日、この二本の映画にインスパイアされた二本の映画のシナリオを書いた。