鼻を洗濯バサミでつまんで、猛暑の中を歩くとどうなるか。
酸欠で呼吸が苦しい金魚みたいだなと思い、小さな庭の小さな池にいる金魚の命が心配になった。
昨夜十一時ちょい前に帰宅し、すぐに懐中電灯で金魚たちが生存しているかを見た。
一匹、二匹、三匹…全員(全魚)生きていた。
十二匹がチョロチョロと出してある水のところに集まりパクパクしていた。
ここでキミたちかわいそうにと水をジャブジャブ出すと、水温が一気に下がり金魚たちは、金魚の国へと旅立ってしまう。
かつて愛情過多、水入れ過多で大失敗、一夜にして金魚の命すべてを奪ってしまった。
庭の片隅に埋めてあげ、木片に金魚の墓と書きお線香を手向けた。
仕事で海外に行くと電話して池に水を出しすぎんなよと、愚妻に指令を出した。
そんなことで電話をしないでよといわれた。
犬をしっかりつないでおけよともいった(かなり狂暴であった。飼い主に似るなどといわれた)。家の前が公園で子どもたちが遊ぶ、そこに乱入したらと思うとゾッとしたのだ。
長旅に出ると、犬と金魚が心配の種だった。
今、犬はいないので関心は赤い金魚なのだ。テレビをつけるとスポーツニュースでシンクロナイズドスイミングで銅メダルと報じていた。
鼻に洗濯バサミみたいなのをつけて、イチ、ニ、サン、シと歩き、ビタッと立ち止まり、水面にドボン、ドボンと入り、水中にそして水面にドバァーと顔を出し、ビックリしたような目になり、口をパクパクしている姿を見て、オッ金魚ではないかと思った。
水着が赤いせいかソックリであった。
ここまでやるのという程の厚化粧、新宿二丁目に多い化粧だなと思った。
うだるような暑さの中、街を行き交う人々も酸欠の金魚みたいになっている。
今年は家の近所で蝉の声がない。まったくといっていい程聞いていない。
仕方ないので左耳の耳鳴りを蝉のかわりにしている。
右耳の酷い耳鳴りは、医師がアッサリとってくれた。
雑木林がなくなったせいなのか蝉はいない。蝶たちも来ない。
友人から頂いた茶碗ほどの盆栽に水をかけた。
無言であるが、あー気持ちいいといっている様であった。
ダ、ダ、ダンナ、人間年を食って盆栽をいじるようにな、な、なったらおしまいだよ、といった庭師のおじさんのことを思い出した。
シジミ蝶→モンシロチ蝶→アゲハ蝶。アブラゼミ→ツクツクボウシ(オーシンツクツク)→ミンミンゼミの図式はなくなった。
夕立の後の、虫の調べ→蜩(ヒグラシ)、こんな字を生んだ中国人はやっぱり国語の先生なのだよと、カナカナ、カナカナと蜩は鳴くだろうか。