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2017年10月18日水曜日

「ツケとカードと、キャンセルと」

毎月10日前は嫌いな日だ。
何故かと言えばカードが決済されるからだ。
侠客に憧れていた頃に、男はよ現金で払うもんじゃねえ、ツケだ、ツケで済ますのが男の器量だ。
侠客(男)は酒を飲んでいくらですか、なんて聞くんじゃない、そんじゃヨロシクと言って店を出るんだと先輩は言った。
飲み代はいくらか分かんない。
あとで店の方から請求書が届くか、店の者か女の子が届けに来る。
赤坂・銀座には、ツケは60日以内に払うという暗黙の掟がある。
飲んだ後、まあこれ位だろと思って帰る。
向こう合わせと言って相手(お店)が高く付けることができる。
何にしろ現金払いじゃない、60日間は立て替えと同じだから金利みたいに少し高くなる。
ツケは高く付くとはここから来ている。
この間の請求書です、と届けに来た者から渡された金額を見て、ギョギョとした顔を見せたら男がすたる。
オウ分かった、まあお茶でも飲んで行けやと言えば、いい器量の人だねと言われる。
実はフトコロは寒い。
当分あったかくはならないのが分かっていても、見栄を張る。
「男はつらいよ」なのだ。
で私は酒を憶えた時から、行き付けの店で現金を支払ったことはない。
ツケが基本である。
その内カードなる物を使い始めた。
現金の方が安く済むのが分かっていても、ツケかカードである。
その分10日には決済される金額を銀行に詰めなければならない。
詰めるとは金を入れること。
Barやらクラブで60日以内に支払わずツケを貯め込み、付いた係りの女の子にバンス(借金)を背負わせてトンコ(トンズラ→逃げる)すると、女の子はアタマに来てヤクザ者に、切り取り(ツケの取り立て)を頼む。
取り分は相方で決める。
女の子がガッポリとバンスを背負うと、もう私の取り分はいらないから、あのヤローオッパイまで触りやがって、もう目茶目茶にしてとなる。
で、会社に乗り込んだり、自宅に乗り込む。
昨夜遅く帰宅すると、SIGNATUREというダイナーズカードの会員誌今月号が届いていた。
特集「歌舞伎」とあった。
カードの会員誌で我が国第一と言っていいエディトリアルデザインである。
写真もすばらしい。
SIGNATUREとは、署名(サイン)するの意味である。
パラパラめくって72頁で、オッ、何!ホントというのを読んだ。
年間750億から2000億円の損失。
この数字は飲食店に予約を入れておいて突然キャンセルされたことによる推定損失額であった。
「もしもし私◯△ですけど◯月△日6人で◯△コースを予約したいんですけど。」
大事なお客さんなので、ハイ分かりました。
念のため携帯のお電話をとなる。
で、お店は寿しならいい寿しネタ、天ぷら屋さんなら天ぷらのいいネタ、いいステーキ屋さんなら特上の牛肉を用意する、これが料亭、お座敷となると部屋を取り、懐石とか、うなぎ一式、スッポン鍋とか、ふぐ料理一式を用意して待つ、鱧料理なんていったら何時間もかけて、鱧(ハモ)の小骨をとげ抜きで一本一本取らねばならない。
で、予約時間になっても客は来ない、電話もない、仕方ないから聞いておいた携帯に電話してもつながらない。
こういう不届き者たちがお店に大損失を与えている。
「ダイナーズごひいき予約」というユニークなしくみを考えたことが72頁に書いてあった。
詳細は多分インターネットで調べると分かるはず。
お店と料理人泣かせの突然キャンセル、そして連絡がつかないのに対抗する。
ツケを払わないのと大差ねえなと思った。
でも待てよ、自分も結構突然キャンセルしたのを思い出してゾゾッとした。
何人かの店主と料理人の顔が浮かんだ。
出刃包丁、刺身包丁、とげ抜きを持って怒っている顔であった。

2017年10月17日火曜日

「和風アルジェリア人」

昨夜は雨、雨、雨であった。

六本木ミッドタウンの前にある和風料理屋さんでお世話になっている会社の社長さんが(女性です)一席を用意したからと招待してくれた。
もう一人の女性社長と私と若い男の四人。
六時から九時十五分までいろんな話で盛り上がった。
その話の内容を書くと二人の女性の正体が分かってしまうので書かない。

一人和風料理店にオモシロイ男がいた。
身長185センチ位、鼻が高い。
メガネをかけている。
面長の顔で着ているのが時代劇に出て来る十手を持った岡っ引きのような和服であった。
四人がゆったり座れる個室に男は入って来た。
いらっしゃいませときれいな言葉、オッ君何人と聞くと、ニッコニコ笑って、アルジェリア人ですと言った。
一枚板のカウンターは広くて長い、その前で、これぞ日本人の板前さんというのが目の前で料理をつくって出してくれるのが人気だとか。
粋なアルジェリア人の服は黒くて帯は白。
他の人は皆白い料理人の制服。
アルジェリアだったら、ジャンギャバン主演の「望郷(ペペルモコ)を知っている。
パリのギャングのボス・ペペルモコがアルジェリアの有名な迷路街カスバに逃げて来てひっそりかくれて生きている。
知ってる知ってるジャンギャバンの映画でカスバは有名になった。
今でも有名とアルジェリア人。
世界映画史上三大ラストシーンの一つだぜと私は言った。

一つは「シェーン」のラスト、一つは「第三の男」の並木道のシーン。
そして「望郷」ボスのペペルモコは、カスバの中にかくれていた時、観光に来ていた一人のフランス女性を見てしまう。パリに帰りてぇ、こんな貧民街のカスバで死にたくはねぇ、だが子分たちは、絶対カスバから出たらパリから追って来ている刑事に捕まるからとボスを止める。
キラキラ眩しいパリジャンヌ。
カスバの女と比べようもない。
声をかけひとときパリジャンヌと話をすると、心はパリに向ってしまう。
知ってる、知ってる有名な映画と話について来る。
いつアルジェリアに帰るのと言ったら、日本人妻と結婚したからもう帰らないと言った。
アルジェリア人はお店のスタッフでした。
私は日本酒を二合少々、アルジェリア人は日本酒にやけに詳しい。
日本人よりずっと、お・も・て・な・しが良かった。
君はいい奴だなと言ったら大笑いをした。
最後に大きな土鍋にサンマご飯をつくってくれた。
これが実に旨かった。
残ったご飯をちゃんと小箱に入れてみんなに分けてくれた。
私がいきなりアルジェリア人の男を話の中に入れたので、場が明るくなりすぐにジョークを交える時間が生まれ、続々といろんな話題へとなった。
私のような者にはすこぶる勿体ない一席であった。
チャイナドレスの美人と美人着物デザイナーの見事な和服に目を奪われつつ、話は楽しく弾んだ。
使い捨てトイレ「ポイレット」の話をし、「尿意ドン」のキャッチフレーズのことを言ったら、バカ受けでサイコー、私駄ジャレ大好きと言って笑い、それでは尿意ドンと言ってトイレに行った。

アルジェリア人にはまったく分からない言葉であった。雨の六本木はすこぶる粋であった。

2017年10月16日月曜日

「青木勤さんの水彩画展」

魚釣りは鮒に始まり、鮒に終わると言うが、違う違う鰱(たなご)に始まり、に終わると山岳関係の雑誌編集者から教わった。
絵は水彩に始まり水彩に終わる。
あるいはスケッチに始まり、スケッチで終わるのかも知れない。

この頃すっかり見かけないのが、小学生たちが近くの海岸に来て課外授業のお絵描きをしている光景だ。
富士山、大山運峰、鳥帽子岩、波立つ海、飛び立つカモメ、江ノ島の灯台、砂浜から投げ釣りをする釣り人、陸上げされた漁船があり、遠くに船があり、波の上にはサーファーがイルカのように動き回る。
浜昼顔が砂浜を彩る。
好きなだけ絵にするモチーフがあるのに、何故だろうか小学生たちの姿は見えない。
小学生の時、絵の道具とお習字の道具、裁縫の道具は必須であった。
鉛筆と消しゴム。パレットと水彩絵の具そして画板。
チューブを押すとグニュニュと出て来る楽しい色たち。

昨日の日曜日午前十一時半頃、銀座四丁目鳩居堂の隣り、大黒屋ギャラリー7階に行った。
四十年近くおつき合いをさせてもらっている人の個展を見るためであった。
大手広告代理店の取締役制作局長だった「青木勤」さんの南西フランスの風景を描いた水彩画展だ。
「フランスの美しい村。(サン・シル・ラポピー)」
定年後フランスに行ってスケッチをして帰り、それをもとに一枚一枚丹念に彩やかに、フランスを描き続けている。第一回は並木橋画廊であった。
およそ二年毎に個展をしている。
青木勤さんはとにかく勝負師であった。
武蔵野美術大学出身である。
ある年なんと運転免許を持っていない私を大手自動車メーカーの社運をかけた新車発売のクリエイティブディレクターとして起用してくれた。
新車は大ヒットした。
水彩画は加色混合が妙味なので油絵より難しいと言われる。
いかに描かないか、どこまで描くか、いかに白地を使うか、筆に含ませた水の量で、色と色の混合を生み絵の良し悪しを決める。
又水彩独特のボケ具合、グラデーションの上手下手が決まる。
一枚一枚一発勝負となる。
油絵は削ったり、色を重ねたり一度全部塗り直したりできるが、水彩はそれができない。まず雑念や邪念がなく精神が整っていないと描けない。

私は“息の芸術”と言う。
心が乱れ息が荒れたり、体調が悪く息が細々としたりしているとそれがそのまま筆先に伝わる。
水彩は小学生か定年後の人の作品がいいのは、欲がないからである。油絵は欲がないと描けない。
無欲が水彩、物欲が油絵と言ってもいい。
年を重ねないと枯れた心境にはなれない。
水墨画も同じである。

青木勤さんの水彩画は光りと影が極めて微細であり、色が重層的である。
初日から最終日まで、会場には奥さんが毎日来てた。
娘さん夫婦が来ていて、お孫さんが二人いた。
実兄の方が上梓した映画関係のすばらしい本の装丁画も描いていた。
いろんな人からたくさんの花。今後も重層的な深みと独自の水彩画を追求していきたいと、ご高覧誠にありがとう、と書かれた絵はがきを帰り際に受け取った。
32点の絵は殆ど赤い印がついていた。
修羅の道を行く私にはこんなウラヤマシイことはできない。

そぼ降る雨の銀座は灰色のグラデーションであった。

海岸に小学生が絵を描きに来なくなったのは、3.11の大津波があった後からだ。

定年後、同じ様に水彩画をパリに行ってスケッチして帰り作品にして個展を定期的にする知人、友人、親戚がいる。
水彩はその人の性格がそのままに出る。

青木勤さんは、下半身を鍛えて、又パリへ行くと言った。
スケッチ旅行は歩く歩くだから。

奥さんの明るい笑顔が水彩画のように“息を飲む芸術”であった。

2017年10月13日金曜日

「ペットの御寺」

ビートたけしの新作「アウトレイジ最終章」をヴエネチヤ国際映画祭のクロージング作品として会場で観た友人のプロデューサーが電話をくれた。
彼は言った恥ずかしい、いたたまれなくて下を見ていたと。
テメー、バカヤロー、ばかりが両耳の中に乱入した。
外国人はコメディ作品として観ているようで、別段違和感なく、ドタバタ、ゴチャゴチャ、ハタメタの映画を笑って観ていた。
興行収入なんて関係ないと作っていた初期作品は、そのシロウトさが、かえって新鮮であった。
が、やがて会社社長として、プロデューサーとして、何十人かの軍団の生活の面倒を見てやるために、作家性を捨てた。
テレビのMCとして出演し、話が来ればどんな会社のCMにも出演した。
今、日本のテレビ局は”たけし””さんま””タモリ””マツコ”にモノが言えない。
四人共かつてのように芸を磨くこともなく、ひたすら劣化し、体制はモノを言えず、テレビを遊び道具でしかなく思っている。
ギャラは高くザックザック入る。
この四人を超える存在は出ない。
さんまは切れ味を失い、タモリは散歩者となったが、たけしは芸術を追い続けている。
特に絵がすばらしい。
昨夜かつて私たちの会社に10年間いた優秀なグラフィックデザイナーが東京を離れて、故郷に帰ることになった。
で、10年間共に過ごしたメンバーが集まって送別会をやった。
あの頃は良かった、楽しかった、仕事はいくらでもあった。
ギャラも良かったので給料も良かった。
クライアントや代理店にもサムライが多くいて、やりたい事ができたという話で盛り上がった。
高級レストラン的カラオケ的であった。
一人ひとり唄って別れをおしんだ。
仕事の関係で来れなかった人間の心あたたまる手紙を読んで涙を流していた。
時間を三十分延長した。
みんなで一本締めをして私は帰った。
その時一枚のメールをプリントアウトしたのを渡された。
私のシネマフレンドからだ。
そこには、「アウトレイジ」を観て来ました。
全然ダメでしたとあった。
テメエ~、コノヤロー、ブッ殺すぞ、本当は心やさしい、ビートたけしにヤクザ映画は向いてないのだ。
私は相方のビートきよしのファンである。
どこで何をしているか分からない。
以前寒川神社の近くの白峰寺というペット専用の御寺さんで、恒例のイベントがあった。
ゲストのきよしさんはミカン箱の上に乗って愛犬との切ない思い出話をしていた。
佐良直美さんもペット大好きとかで来ていた時がある。
一本一万円もする卒塔婆には、オウムの○△ちゃん、亀の△△ちゃん、ハムスターの△○ちゃん、ピラニアの□△ちゃんと様々なペットの名がズラーと何本も書いてあった。
ビートたけしと、一匹の犬のロードムービーが観たいなと思った。
バカヤロー、コノヤロー、ブッ殺すのセリフはなく、”ヨシヨシ”ばかりを。
犬は決して人を裏切らない。
(文中敬称略)

2017年10月12日木曜日

「赤いきつねの怒り」

「勝てば官軍敗ければ賊軍。」小池百合子は賊軍という事になる。
選挙戦序盤の情勢分析が出た。
バーンと自公で300議席超えの大楽勝、希望は大苦戦、立憲民主躍進、共産伸び悩み、維新苦戦、社民、日本のこころは限りなくゼロに近づく。
野党系無所属頑張る。
10月22日投票日、小池百合子はパリに飛ぶ。敗戦の弁は誰が語るか(?)相変わらず野党同士の食い合いで自公は高笑い。
民進党を裏切り、見限り、仲間を捨て、組織と持参金を持って小池百合子にひれ伏した者たちは全員大苦戦。
かくして日本史上最強の総理大臣が生まれる。
あと4年やりたい放題。モリカケ疑惑も国民の審判を受けたとのことでひとまず終る。
籠池夫妻は当分シャバに出ることはない。政治の世界から”大義”という言葉がなくなった選挙として、後世に語り継がれるだろう。
いち早く民進を飛び出した者たちは、やがてはぐれ鳥となり、ずっと渡り鳥であった者たちは、再び分裂する希望と民進と共に行方不明となる。
小選挙区は一対一の戦いにしない限り野党は勝てない。この単純なことが出来ないのはバカだから。
安倍晋三の顔を見たある観相占い師が、これほど悪運を持っている顔は見たことがないと言ったとか(?)。
四年間独裁体制を手にし、その後はキングメーカーとして君臨する。麻生太郎は終り、石破茂、岸田文雄、野田聖子たちは徹底的にイジメられる。
小池百合子は、二年後の衆参同日選挙(多分ある)で維新の橋下徹と組むはずだったが(?)そのシナリオは消える。前原誠司、若狭勝、細野豪志がこんなに使えないとはと思っているだろう。
その他多数のはぐれ鳥たちは、顔を見るのも嫌、ヤキトリにでもして、という気分のはずだ。
使えない人間は1000人集まっても使えない。
小池百合子にイビられやがて又裏切りの道を選ぶだろう。
この選挙結果が日本国及び日本国民にとって幸か不幸かは、神のみぞ知る。私が期待する真のリベラルの人が無事勝利することを願う。
日本人は裏切り者は許さない。
今後野党のリーダーは、小池百合子に屈せず単身立ち上がった、枝野幸男となる。
前原、細野一派は恥をさらして生きるが、政治家としては終りとなる。
選挙とは選別の事である。
その選別に敗けた小池百合子は都庁職員に八つ当たりを始め、次は森嘉朗というオリンピクのボス追放に向う。
但し選挙はふたが閉まるまで油断大敵という。
大失言、大放言、大暴言が連発されると、情況は一変するかも知れない。小池百合子が開けたパンドラの箱の中にあったのは”希望”ではなく”失望”であった。
「河立ちは河に果て、山師は山に果てる」と言う。
策士は策に果てると決まっている。
ある夕刊紙が小池百合子を「緑のたぬき」と称していた。
東洋水産に対して失礼である。兄貴分の「赤いきつね」も怒っているはずだ。(文中敬称略)

2017年10月11日水曜日

「睡眠負債を貯め始めた頃」

先夜昭和五十三年製作「黄金の犬」を借りて来て見た。
大映製作、総指揮徳間康快、監督山根成之である。
原作は当時流行作家だった「西村寿行」であった。
旧作のコーナーにあった。
何故借りて帰ったかというと、昭和五十三年に荻窪の”大映パルサス”という映画館で見た記憶があったからだ。
大映がニッチモサッチモ行かず、徳間書店のボス徳間康快が経営にタッチした。
当時映画界の鉄の掟だった”五社協定”がガタガタと崩れていた。
東宝、東映、大映、日活、松竹の五社に所属する俳優は他社の作品に出ることは許されなかった。
「黄金の犬」はその五社協定の終りを示すエポック的作品の一つであった。
何しろ主役が故鶴田造二だ。
故夏木勲(死去した時は夏八木勲)故地井武男、二人共東映、池玲子(巨乳で有名だった、生死不明)と三田佳子、やはり東映。
藤巻潤(大映)三上真一郎(松竹)故岡田英次(フリー)故平田昭彦(東宝)故小沢栄太郎(フリー)政治家の汚職事件の秘密データをマイクロフィルムにして犬の首輪につけた小さな物入れに隠す、それを追って北海道から青森、岩手とハチャメチャな展開が繰り広げられる。
後年国際派女優なんて言われた島田陽子(所属と近況不明)も登場する。
西村寿行の作品といえばありとあらゆる女性を必ず犬のように四つん這いにさせて犯しまくり、奴隷化する。これがベストセラーの要因でもあった。
三谷昇や森田健作(現千葉県知事)なんかも出ていた。
警察学校の警察犬も大動員というか、”大動犬”(一匹の日本犬に皆殺しにあう)刑事鶴田造二VSゾンビのような殺し屋地井武男。
ハチャメチャなストーリーもこれ位目茶苦茶になると二時間以上楽しめる。
特別出演で当時売り出し中だった故菅原文太(新東宝ー松竹ー東映)もダンプの運転手でチョイと出る。
徳間康快怖るべしの映画なのだ。
旧作の映画はそれを映画館で見た頃の自分を思い出す楽しみがある。
昭和五十三年ひたすら働いて、ひたすら映画を観て、そして飲んでを日々繰り返し、夢を追っていた。
床に敷いた寝袋に入ってちょい寝をしていた。
「睡眠負債」はその頃から貯まっていたのだ。

2017年10月10日火曜日

「足の裏の血」

箸より重いものを持たず、三日間ひたすら脳休めをしていた。
頭の中がビリヤードの台みたいになっていた。紅い球、白い球、黒に黄色、いろんな色の球と球がぶつかり合いをしていた。その球は今抱えている問題であった。
時代の変化があまりに激しく、人間と人間の宿命と運命が残酷にぶつかり合う。
そのままボーとしていると気は重くなる。
嫌な自分、ズルイ自分、嘘の自分、自分を演じる自分が、どれが本当の自分か分からねぇと文句を言う。

外の空気を吸いたいと思い、素足にデッキシューズをはいて近所の海岸に行く。
廃船になった船によりかかって波を見る。
前日の激しい雨のせいか、波は茶褐色であった。アンバランスに太陽光が真夏のように暑い。
二歩三歩砂の上を歩く。
ズボッと砂にはまり湿った砂がシューズの中に入る。
仕方なくシューズを脱いで両手で持って波打際に近づく。
観光用の地曳き網を引いている漁師と会う。
相模湾にはもう魚がいないよと言う。
息子と小学校で同級生だった娘さんは地方に嫁に行って二人の子がいると言った。
最近江ノ島まで歩いてないのと言うから、歩いていないよと言った。
打ち上げられた大・小の流木やゴミの中をカモメとカラスたちが忙しそうに突っついている。
とにかく脳休めをしたいと思い歩き出す。
足の裏に尖ったガラスの欠片や、貝殻の壊れたのが当たる。
痛え痛えと思うたびに、煙幕を張っていたような頭の中に刺激が起きる。

「乾いた花」原作石原慎太郎、監督篠田正浩の映画の中で、ヤクザ者が小悪魔のような若い女性と花札で博打をする。
その時、人を殺して刑務所に入っていたんだって、人を殺すってどんな気分、みたいなことを若い女性が言う。
中年のヤクザは、別にどうってことはねえんだ、ただ相手にブスッと刃物を刺すと、なんていうか、自分と自分がつながっているみたいな気持ちになるんだ。
そんなことを言う(正確ではない)私の好きな映画ベストファイブの中の一本なのだ。
海岸にいて足の裏にチクチク痛みを感じていると「乾いた花」のシーンを思い出した。
乾いた花とは水分を求めない死んだ花ドライフラワーのようなものなのだろう。

自分の抱えた諸々の問題は、自分でケジメをつけて行かねばならない。
背中の傷は男の恥、額の傷は男の勲章と言う。
解決しなければならないことに背を向けて背中に傷を背負っては生きて行けない。

痛え、かなり大きな貝殻を踏んでしまった。
足の裏を見ると貝殻の欠片が二つ刺さっていた。
しゃがみ込んでそれを取ると、赤い血が少し出て一本の線となった。
塩水につけると流れて取れた。
又、すぐ赤い血が出て来た。

「乾いた花」では、組の抗争が起き、相手の親分を誰が殺しに行くかとなった。
誰が行くんだと怒鳴る親分、尻込みする組の若い衆、刑務所から出て間もない中年のヤクザは、オヤジさん、オレが行きますよと言う。
今度人を殺したら生きて出て来ることはない。
親分はそうか行ってくれるか、急ぐことはねぇ、ゆっくり遊んでからでいいんだ、そうだオマエ歯が悪かったな、長くなるから歯の治療をちゃんとしてから行けやと言う。
そしてある日、喫茶店にいた相手方の親分を刺し殺す。
その時久々に自分と自分につながったのだろう。
シキテン(見張り)を切っていた若者が「もしもし兄貴がやりました、前の時より、少しぎこちなかったけど」と組に連絡を入れる。人間はボーとして自分を捨てていると、いちばん自分を思い出す。
許せない人間の顔を思い出す。
あいつと、あいつと、あのヤローだけは許さない。

今日10月10日、総理大臣による大義なき自己保身の選挙が始まる。
8党党首討論は出来の悪い学校の、生徒会の討論会程度であった。
白いボードにマジックインクで書いたその文字は、政治家の劣化を表していた。
幼稚な文字であった。
論語の一つでも書いてほしかった。

2017年10月6日金曜日

「寒い朝」

この男たちは余程ヒマなのか、余程テレビに出て講演料を引き上げたがっているのかと思う。
テレビ局も少しキャスティングを考えろと言いたい。
昼のニュース番組を情報を知っとくかと見るのだが、アホでマヌケでしたり顔の面々を見ると、オメエラは競馬か競輪の予想屋かと思いうんざりする。
順不同だが、政治アナリスト伊藤淳夫、(汚らしい)三重県元知事北川正恭(いまだにマニフェストだけ)鳥取県元知事片山善博(かなりちぢまった)時事通信の特別解説委員田崎史郎(タイコ持ち)弁護士八代英輝(全然弁がたたないスットコドッコイ)その他ヒマ人たちが、ああだこうだと予想解説する、早い話世の中がガタガタするのを商売としている。
モメないと出番がないから、解散さまさま、選挙はギャラが入る。
小池百合子ありがとうさんなのである。
どのテレビ局もパネルを毎日何枚も作ってドンチャン騒ぎ。
映像のテレビがパネル化している。
裏取材とか裏話とか盗み聞きしたような話をもったいぶって話す。
選挙で戦う人間は何のための解散か分かんない選挙にスッタモンダされ、大迷惑となっている。
人間という悩ましい生き物の生態があぶり出されて、人間不信となる。
下手なテーマより各テレビ局も小池百合子さまさまだ。
日々コロコロと話が変わるので視聴率が上がる。
私がもし選挙に出る立場なら、テメーラいい加減にしろ、何をウレシそうにベシャテン(しゃべる)だ、選挙をやって見ろ、大変なんだよバカヤローと言うだろう。
男たちはテレビ局をハシゴして売れっ子気取りで嬉々としているのだ。
バカバカしいことを書いている私も実はコイツらに振り回されていたりする。
そんな自分にバカ者めと言っているのだ。
昨夜お世話になっている会社の方々と、銀座お多幸(おでん屋さん)の兄弟分みたいな店かめ幸(東銀座)で三時間談論風発させた。
話題はやはり小池百合子と選挙話で盛り上がった。
相当の選挙通の人がいた。
愛犬家の方の話しは泣けてしまった。
八才の愛犬が悪性の病気になっている。
ステロイドを服用させないと、グッタリして何も食べなくなる。
仕方なく服用させると、止めどなく食欲が出て猛烈に食べてしまう。
愛犬家は食べさせてあげるのを優先しているとか、ステロイドを服用している知人の健康を願う。
今朝朝刊を取りに出ると秋というより冬みたいに寒い。
ニュースを見ると又、又、又小池百合子だ。
今度は”ユリノミクス”だと言う。
心がほっこりするいいニュースはないだろうか。
早く選挙が終ってバカ者たちがどこかへ消えてくれよと思う。
ちなみにあらゆる予想屋の予想はほぼ外れると決まっている。
あらゆる選挙は人間関係をズタズタにする。
ノーベル賞という選挙で村上春樹は落選した。
やはり予想は外れた。
私は応援したい人のためにがんばって行く。
清き一票を求めて。
黒百合の花言葉は恋と呪い。
(文中敬称略)




2017年10月5日木曜日

「中秋の名月の下」

昨日五時半頃から六時頃にかけて銀座一丁目から銀座七丁目まで歩いた。
銀座アスター店前からハリーウインストン、交差点を渡り、教文館書店から山野楽器、パンの木村屋から和光へ。
交差点を渡りニッサンを右へ曲がる。
それまで人混みはない。
がここから突然中国人たち観光客の集団と出会う。
バスが何台も並んでいる。
Laox(ラオックス)前で二重、三重の人垣となる。
歩道から人はハミ出していた。中国のGDPは低下したとはいえ8%近くあり、ベトナムも7%近く成長している。
抗日戦争をした国と、反米戦争をした国が日米の消費を下支えする。
インドもカレーばかり食べながら成長している。
広告代理店のボード(最高意思決定者の人たち)のメンバーだった男と久々に会った。
広告代理店も外資に支配されて大変だ。
新聞で知ったが○△代理店も大変だな、君たちも大変だろうなと言った。
君という親しい言い方をするのは、竹馬の友であったからだ。
待ち合わせたのはホテルのコーヒーラウンジ、慣れない事には手を出すなよと言った。
広告業は人が創った物を売るビジネス。
自分たちで仕入れたり、創ったりしたら絶対失敗するからと言った。
”武士の商法”、慣れていないことには決して手を出すなという事なのだろう。
少しばかり知りたい事があって銀座の隅っこまで出て来てもらった。
ある物販の相談をしようと思ったら先きにアドバイスをされてしまった。
そんなことは百も承知だよと言った。
それでも親切に何度も釘を刺された。
銀座、赤坂のクラブのママや、Barやレストラン、飲食店のオーナーたちが今年の八月九月は史上最悪だったと言う。
消費低迷と天候不順が大きな原因であった。
企業の接待利用もグンと減ったとか、上からのお達しでヤクザ者も遊ばない。
そこで選挙となるとお客はグンと減る。
選挙活動と思われたり、スキャンダラスな写真を撮られたら命取りとなる。
パパラッチが狙っている。
”もしもし絶対来てよ、絶対よ、絶対、もう大変なんだからお願いよ”、ケータイで必死にお客さんに営業活動をする和服の女性、銀座の路上でベーグレード(ベーゴマ)をするアジア人の子どもたち、銀座は中秋の名月の下、時が経って行く。
竹馬の友はそれでは又、とBMWに乗って消え去った。
なんだかモヤモヤの気分を抱えながら新橋駅へ向った。
この国はどんどん”変”になって行く。
選挙が終ると”大変”になっているはずだ。
新橋交差点のカラオケ屋の上にあるスクリーンに各党党首の顔が写し出されていた。
その横にマグロの解体で有名なすし屋さんの大看板があり、名物社長が長い包丁を持っていた。
日本を解体するようであった。
夜空には中秋の名月がぼんやり浮かんでいた。
交差点を渡ると立食いそば屋さんの、のれんがあり、その下から何本もの足が見えた。


2017年10月4日水曜日

「人の心はパラシュート」

「人心難斗」関ヶ原の合戦で敗れた、「石田三成」の遺した言葉である。
人の心ほど難しいものはないという意味だ。
関ヶ原の合戦では小早川秀秋が裏切ったから石田三成たち西軍があっという間に敗れたというのが”伝聞”である。
実際がどうであったか当事者たちがいないので正しいことは不明である。
関ヶ原後、豊臣家を裏切った、加藤清正は変死、福島正則は改易、他の大名たちも悲劇的結末を遂げている。
原始人間が集合体を生んだ時から、ヒエラルキーは生まれた。
運動会の騎馬戦は三人が騎馬役になり、一人が上に乗る。
「もしもしな、なんでウチの子が馬で、あのウチの子が大将なんですか、いや~、騎馬役の子より軽い体重の子を乗る役にしてるんですよ、と電話にでた学校の先生は汗をふく」
これから運動会の季節、先生たちはこういう電話を何本か受けることになる。
こういう問題は会社組織になるともっと露骨に進展して、仲良かった先輩後輩の間はズタズタとなり、恩儀と信儀でつながっていた関係は、ブツブツと切り離れる。
そこで使われる言葉が、あのヤローが小早川秀秋だったんだと裏切り者の名が挙がる。
人から大事な金を借りて返さずダマシ打ちにする人間を、悪い野郎は都鳥(みやこどり)という。
森の石松から金を借りて返さずに、石松を斬り殺してしまった。世の中には小早川秀秋的人間と都鳥吉兵衛的人間がウヨウヨいる。
それらは等しく人の心を持っている。
もし人の心に色がつけられることができたら、あいつは悪いからとか、灰色だからとか、無色だからと判別できるのだが、残念ながら推測を持って接し合うしかない。
人の心はパラシュート、開いてみないと分からない。
人間とは実に厄介な生き物である。