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2014年8月28日木曜日

「初秋刀魚」




湿った海岸を歩くと足が砂の中にグツグツと入る、その感じが好きだ。
海岸には荒波が運んで来たゴミや流木が山ほどある。
カラスが何匹も群がっている、ひと稼ぎした海の家の片付けも終わっている。

全然ダメだった、去年の半分位しか売り上げられなかったと海の家を出していた男たちは言う。台風が多かったせいか、たまには見える青い海はなかった。
心なしか遠くに見える富士山も、江ノ島の灯台も元気がない。

私は混雑している海には近づかない。
トワ・エ・モワの歌ではないが「誰もいない海」の方がいい。
夏の終わりはもうすぐだ。私の好きな海岸を歩くと、名は分からないが何度かに一度分厚い大きいな貝殻を見つける事がある。
その貝殻に願いを書くと叶うと子どもたちに言って集めた貝殻が数十個壺の中にある。私が鬱の頃見つけた貝殻には、気合とか根性だとか、チクショウの文字が多くある。

八月二十七日(水)の午後四時頃、曇りだったが自転車で海岸に行った。
雨が少し降って来たので直ぐに帰ったのだが、ちょっと海岸に出るとあの貝殻が二個も見つかった。滅多にない事だ。持ち帰り水で砂を洗った。まだ何を書くかは決めていない。

秋が急ぎ足で近づいているのを感じる。暗くなるのが早い。
夜、今年初めての秋刀魚を食べる。嘴が黄色くて、ふっくら太っているのが旨いのだが、愚妻はそんなところは見ずに、長いきゅうりが弓みたいに曲がった様な、細々としたものを買って来た。

きっと去年の冷凍物だろう。
秋刀魚独特のジュージューの感動がなかった。
脂が乗ってねえなと言えば、大差ないわよで終わり、考えてみるとこのひと言の会話は三日振り位であった。オバサンたちがコンビニの入り口にあるベンチに座り、アタシ昨日の夜、コオロギの泣き声を聞いたわよと言っていた。

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