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2014年8月20日水曜日

「銀座四丁目にて」




去年もそうだった。その前の年もそうだった。とにかく暑かった。
今年はそれ以上に暑い気がする。
熱暑、猛暑、狂暑、炎暑。

銀座を歩いていると、ヘトヘト、ベタベタ、フラフラ、トボトボと人が歩いている。
男も女もガニ股になる。歩幅は狭く速度は遅い。
無言の人たちが、汗と汗と汗でつながっている。気どっている場合じゃない、気どっている場合じゃないわと、かなりだらしなしなっている。

ただ太陽が眩しかったからと、人を殺した男の話があった。
人それぞれに無気味な殺気がある。気温が35度を超すと人間の頭の中からリズムが消えるという。人は音楽を失うとケダモノになって行くという。
ダランダラン、ペタンペタン、ガニ股の角度は広くなって行く。

銀座四丁目、交番前のオープンカフェで汗を引かせるためにアイスコーヒーを飲みながら、行き交う人を観察する。
私の耳鳴りは30度を超すと強烈になる。何十匹もの蝉が私の耳の中で集会を始める。
隣の人に聞こえているのではと思う。
 
交番では若い巡査が何か事件でも起きないかなぁと突っ立ている。
中国人観光客がミヤーミヤーと騒いでいる。
和光の前には一人の雲水がじっと固まっている。
過去の過ちを噛みしめているかの様に。
人と人が一色触発の危険を孕みながら移動している。
 
人間は35度以上になると何も考えずに機関銃をひたすら撃ちまくると言った米軍の元兵士の言葉を思い出す。日本兵は40度以上もあるタコ壺の中で、何百度もある火炎放射機で焼き殺されていった。

去年より、その前の年より、今年は戦争に近づいている。
銀座はやっぱり秋がいい。やっぱり夜がいい。
ブルースが似合うからだ

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