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2015年4月7日火曜日

「カッパの清作の言葉」




春は言葉の季節でもある。
学校を卒業する者へ、入学して来る者へ。
定年を無事迎え退社する者へ、心を熱くして入社してくる者へ。
思いもよらぬ昇進、昇格した者へ。
思いもよらず、思いもよらぬ扱いを受け格下げされたり、左遷された者へ。

人は言葉を選び、言葉を探し、言葉を生んで期待を語り、夢と希望を語り、共に汗水を流すことを誓い、憎悪をやわらげ再起を目指せよと激励する。

私は誰がどんな言葉を語ったかをできる限りチェックしていた。
が、残念ながら心に響くものは少なかった。
そんな中で珠玉の言葉を一つだけ見つけた。
それは「めいわくかけて ありがとう」という言葉であった。

元ボクシング日本フライ級チャンピオンであり、コメディアンになった「たこ八郎」さんの言葉だ(ある新聞のコラムの中にあった)。
「たこ八郎」さんはボクサーであると同時に酒好きであった。
酔っ払ってはいろんな所、いろんな人に、いろんな迷惑をかけた。
だが「たこ八郎」さんは誰からも愛されていた。
ありがたいことに迷惑をかけても、励まされ愛され応援されていた。

確か「斎藤清作」という名でボクサーをしているときは、「カッパの清作」のニックネームをもらっていた。引退し「たこ八郎」となった。
そのたこちゃんはある夜海で水死した。
当時の新聞では酒を飲んで海に入ったからだろうと推測し、警察も事故死として処理をした。私はそうは思わなかった。

「たこ八郎」さんは、これ以上は人に迷惑をかけられないと自分から海に入って行ったのではと思った。「たこ」が水に溺れる訳がない。
「めいわくかけて ありがとう」そう思いながら。
これほど簡潔で奥深い言葉を書いた文人や哲人はいないだろう。

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