このことが勇気あることか、かわいそうなことか、感動的なことか、私は論じ合わない。
ただその10分ほどのシーンに生徒(800人位)とその家族やご近所の人たち3000人近くが心を打たれた。
五月二十三日(土)私は孫の運動会の応援に船橋まで泊まりがけで行っていた。
三年生80メートル徒競走が乾いたピストルの音ではじまった。
5人1組で走る。速い子、遅い子、ゴールを目指して懸命に走る。
何組かが走ったとき運動場は静かになった。4人はすでに60メートル位を走っている。
一人の男の子はとても細い、両腕はだらりとし、両足には力が入っていない。
例えていうなら人形が人に手によって走っているようであった。
20メートルを過ぎたとき生徒たちはもちろん運動場のみんなが、ガンバレ、ガンバレと声援を送りはじめた。
男の子は女性の先生によって両脇をかかえられている。
ガンバレ、ガンバレの声を受けて男の子はゴールを目指す。次の組はスタートせずに待っている。
そして大声援の中、男の子はゴールテープを過ぎた。
拍手の渦となった。私は胸が熱くなった。
男の子を出場させた親に拍手を送った。
男の子を出場させた親に拍手を送った。
医学が進歩してきっと男の子の機能は劇的に進化するだろう。
その時、彼は何を目指して走り出すだろうか。
私は、船橋駅から横浜アリーナでのロックの公演を見るために移動する列車の中でそんなことを考えていた。
私の結論は短距離走のランナーだ。
きっとそうなる、あと10年もすればきっとそうなる。
あの大声援が一つひとつの筋肉を、細胞を、一本一本の血管を再生し活性化するだろう。
小学校の運動会は毎年私に多くのことを教えてくれる。
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