待つ時間のない時代。便利といえば確かに便利である。
朝アマゾンというのに本を頼んでもらうと早ければ夜に、遅くとも次の朝には届く。
書店に行って取り寄せを頼んで、本が入りましたの電話が4、5日後あって、ハイありがとう取りに行きますがフツーであった。
川上書店に行って本に出会って、近所の喫茶店かなんかに入って、珈琲でも飲みながらパラパラとめくる。一つの楽しみであった。
フィルム使用のカメラでパチパチと花やら海やら、孫たちを撮ってカメラのキタムラに行く。かつては二日後に出来上がるのでそれを取りに行くのが楽しみだった。
ママチャリに乗ってリンリンさせながら何度も何度も通ったが、カメラのキタムラは閉店した。デジタルカメラ時代、フィルム利用がなくなったのが主なる原因(?)で不採算店は整理された。
もしもし魚昌ですが、いい干物が2日後に入りますと電話が入る。
あっ、そういいね、取りに行くからと大好物のアジやサンマやカマスの干物の夢を見て、徒歩約10分位のところに取りに行ったもんだが、魚昌は店を閉めた。
お取り寄せ便に電話をすると次の日に届く。
白いアツアツのご飯の前にジュウジュウするアジの干物の夢を見る間もない。
何しろなんでも早いのだ。
もしもしハイ今出ますと電話の声、だが料理は未だ出来ていない。
中華料理店の出前だ。すぐ着きますと言ってすぐ着かず、十五分、三十分待つのをそば屋の出前と言った。腹がペコペコになった人間はイライラする。
ヤサイイタメとギョーザとライスとかを頼んで仕事をしていると、頭の中はギョーザライスになってしまう。
頼んだ上司は部下にオイ電話しろ、どうせそば屋の出前だから未だ作ってないんだろう、早くしろ、早く!なんてことになる。
私の好きな銀座菊凰は今でも出前をしている。私がいる間何本か電話が入る。
ハーイ今出ましたと応える。そして厨房に向かって出来たと聞く。
相変わらずだねと言えば、出前はねえ仕方ないの、待って頂くほど美味しいんだもんねえ、二人の女性は顔を合わせる。
もしもしハイハイ、マーボー丼にチャーハン、レバニラライスにギョーザ三人前ですね、すぐ行きまーす、となり昼の菊凰は忙しいのだ。
デートとは待つことなりと言ったのは、女性にモテる男だった。
約束の時間より小一時間早く行って待つ時間を楽しむんだと言った。
どんな服着て来るかなとか、どんな靴とか、どんなヘアースタイルとかをイメージする。マメな男がモテると言うがとにかくマメな男であった。
デートに遅刻は禁物らしい。私にはデートしたという感覚的記憶がない。
全然マメでなかったのだ。動物的行動をした記憶はある。便利の先には何もない。
アイルランドの若者は映画の中でそう言った。
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