「ビックリしたなぁ、もう」てんぷくトリオのリーダー、故三波伸介の決め言葉だった。三越伊勢丹の大西洋社長が任期途中3月末をもって退任するという報に接して私が発した言葉は「やられたなぁ、もう」であった。
現在の流通業界において卓越した営業センスと経営手腕を持っている人と思っていたからだ。
新宿伊勢丹の売り場はすばらしい。接客もすばらしい。
流通業界に入った者は伊勢丹を見に行くのがイロハのイであった。
特にメンズ館は他の追従を許さない。食品売場の美しさは目を見張る。
歩いているだけでも気持ちが豊かになる。
大西洋社長は業績悪化、業績低迷の責任を負わされたと昨日の毎日新聞にあった。
デパートという業態が終わっているようだ。
これは私見である。
伊勢丹が“三越伊勢丹”になった時に、伊勢丹内部はガタガタとなった。
三越のDNAと伊勢丹のDNAは全く違う。血液型不適合だ。
日本橋と新橋、オジサン、オバサンとシティボーイ、シティガールの違いとでもいうのだろうか。
着物を来た女性とブルージーンズに白いTシャツ、コットンのジャケットの男が手をつないでデートしているとでもいうのだろうか。
三越と合併(あるいは吸収)大反対と、イヤイヤでも賛成と絶対反対とに分かれたのだろう。
ある経済専門雑誌には三越の人間を伊勢丹の人間は番号で読んでいるとか、昇給にも出世にも大差があると書かれた。
この記事は数ヶ月前位だったから大西洋社長はすでに元老院から不本意な扱いを受けはじめていたのではと思う。
三越と合併させたのは元老院であり、いち早く大失敗だったと思ったのも元老院のはずだ。大西洋社長は三越の人間を番号で呼ぶような人でないことは、業界の人間なら誰でも知っている。
この一年間盛んにテレビ出演したり、本を出版したりしていたのは元老院への抵抗でもあり、世間を味方にするためだったのかもしれない。
私は若かりし頃、売れない百貨店の宣伝部にいた。
そこで見た百貨店は出入り業者にあれ買え、これ買え、あれも買えと勝手に売り上げをつくる。業者の取引額によって割り当てが決まるのだ。
ダイヤモンドからたくあん業者までその対象となる。
大西洋社長は苦悩したに違いない、古い百貨店体質に。
百貨店の外商部というのは外からは見えないが売り上げの相当部分を持ついわば影の軍団だ。レディースやメンズが花形なら、外商はヤクザ者だ。
私は在職中そう思っていた。絵画、陶器、宝飾品、高級呉服、高級時計、高級家具。
あなたの目の前で、ハイこれくださいというのを見たことがありますか?
中国人爆買い以外余り見たことはないはずだ。でもちゃんと売り上げているのだ。
私がいた百貨店は大手百貨店に吸収された。
主任、係長、課長補佐、課長、次長、部長代理、部長、販売促進本部長代理、販売促進本部長、店長代理そして店長。あっという間にどこかへ消えました。
一人だけ特別な奴がいました。ヨイショとゴマスリとセクハラの達人だった。
私は大西洋社長のファンだった。ローマ帝国の時代から元老院は恐ろしいのです。
伊勢丹の創業家とは。
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