「五輝星(いつきぼし)」と読むことを昨年の今頃知った。
一匹百三十万のズワイガニである。鳥取市の鳥取港で競り落とされた。
2015年から鳥取がその色、その形や重さなど一定の水準を満たすものを認定した。
昨年認定されたのは全体の0.03%とか。七日初競りが行われたが0%だったようだ。
それにしても一匹百三十万円のズワイガニを食べる人間とは誰だろうというより、どこのどいつで、何でそんなにアブク銭を持っているのかと思う。
大方超一流料亭が仕入れてシコタマ荒稼ぎをしてる客に、足はカニしゃぶとかそのまんま活身造りとかで食べさせて、カニの甲羅かなにかに日本酒を入れて飲ませる。
カニ味噌もある。シメはカニの出し汁を使ってぞうすいかなんかだ。
百三十万位で仕入れたのだから一匹百七十万円位で出さないと元は取れない。
一匹を四人で食べると一人五十万円となる。メロン一個五十万円とか、ブドウ一房二百万円とか、リンゴ一個百万円なんていうのがあるから、ズワイガニ一匹百三十万円は安いかも。(バカみたいに金を持っている人から見ると)
株価が上昇して好景気と言うが、どこを見ているのかといいたいほど不景気だ。夜の銀座はガラガラ、タクシーは空車の列、有名レストランもガラガラ。
流行っているのは、二時間3000円~5000円で食べ放題飲み放題の店。(プラス歌い放題もある)
一週間お客さんが来ないので何とかしてと、ある店の主が、ある会社の社長に泣きを入れた。社長は大変世話好きなので、あちこちに一人一万円でと誘いの電話をした。
人気者の社長の誘いを断る人はいない。で私も友人と行ったら、狭い店に入りきれないほどのお客さん。見たことも聞いたこともある社会的地位のある人ばかり、ヒマ、ヒマ、ヒマにすっかり慣れていた店の主は、てんてこ舞い。
連れの友人が乾き物のつま味ちょっとで一人一万円は高いんじゃないのと言った。マアマア渡世の義理ってもんだからと、ウイスキーを二杯飲んだ頃お客さんが来て座るところがない。じゃ俺たち帰るわとなった。私を誘った社長が申し訳ないから二人で一万円でいいと言ったら、ヒマこいていた店の店主が、ダメダメ二万円もらってと言った。そんじゃカードかツケと言ったら、その場合は二割り増しですと言った。
ああいいよと言ったら、やっぱり現金で明日必要なんでと言った。
友人とセコイの嫌いなんだよと言って階段を降りた。
ズワイガニの記事は帰りの列車の中で読んだ。世の中はいろいろだ。
セコイ店主はきっとたくさんお客さんを呼んでくれた社長の恩なんかすぐに忘れるだろう。二日間限定だった。今日から又、一人もお客さんが来ない日が続くはずだ。
ボロは着てても心は錦という。店主の服装がヨタヨタであった。プライドだけは人一倍なんだとか。家に帰り、気分直しに明け方までフランス映画の「盗聴」というのを見た。
監視社会は恐ろしく不気味だ。政敵同士が規則正しく盗聴するのだ。今週末は映画バカが集まって作戦会議をする。ズワイガニ一匹の半分以下の予算で短編を作るのである。
シナリオはバッチリ完成しているのだが。
▲五輝星
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