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2019年7月19日金曜日

「男たちの挽歌」

妻子のために殴られた男の顔は酷く美しい。フランスのボクシング映画は実にいい作品であった。一昨日深夜「原題:SPARRING」日本での題「負け犬の美学」である。主人公は45歳のボクサー。日本でいえば6回戦ボーイだ。49戦で13勝しかしていない。妻と子が3人いる。すでに45歳、50戦で引退しようと思っている。50戦目を戦って勝利し3人の子どもたちにパパは勝ったと言いたい。ある日、ジムで世界チャンピオンのスパーリングパートナー(練習相手)を3人探していると聞き、ぜひにと売り込む。最強のチャンピオンは45歳の男に心配を持つ。パンチ力なし、テクニックなし、ただ得意と言えば“打たれ強い”ことだけ。スパーリングをするとまるで弱く練習にならない。妻と3人の子がいる男は、ファイトマネーが必要だ。殴られて顔は変形するが、決してダウンしない。チャンピオンはその姿に心打たれる。男はチャンピオンの試合に対して自分の考えた戦い方をチャンピオンにアドバイスする。トレーナーたちは、お前は何勝しているんだと聞く。男はこの3年間は勝っていない。49戦で13勝34敗2分けだと言う。そんなボクサーの出過ぎたアドバイスにトレーナーたちは一笑に伏すが、チャンピオンは何かを感じる。そしてあるところで前座試合があるから出てみないかと言う。妻は陽気だ、長女にはピアノの才能があり伸ばしてやりたい。小さな娘と息子にはパパの勝ったことを、50戦目のラストの試合で知らせたい。そして6回戦のゴングが鳴り一進一退の殴り合いは続く。映画はこの試合の結果を正確には伝えない。試合を終えベッドの中で寝ていた子がパパ勝った(?)という問いに、やさしく笑い抱きしめる。この映画は実話をモデルにしている。ラストに「ロビン・ディーキンス」21勝51敗、「ジョニー・グリズス」4勝96敗、「ピーター・バックリー」32勝256敗という記録が映像とともに表示される。男は酷い顔になった姿で長女のピアノを演奏する姿にエールを送る。ボクシングこそ男のスポーツNO.1と思っている私は、先日の村田涼太選手の勝利に感動していた。リング上から、我が子に向かって「明日からパパといくらでも、野球でも水泳でも行けるからな!」と言った。ボクサーは1gの減量に苦しみながら長期間すべての欲望を拒否して、試合に挑む。リング上で殴られ、たとえ死んでも仕方がない、プロの職業なのだ。「負け犬の美学」は最新作だが、シングルパパが見たら泣けてしまうだろう。村田涼太選手はある先生に出会い、ボクシングを教えられるまで、無敵の不良少年だった。私も負け犬の美学を貫いて行きたいと思って今日まで来た。「勝者には何もあげるな。すでに勝利を手にしているのだから」。私の初恋の女の子が、超有名大学の大学教授となり、「E・ヘミングウェイ」や英米文学の研究と翻訳をし続けている。確かE・ヘミングウェイの言葉である。E・ヘミングウェイは自らボクシングをするほど、ボクシングが好きであった。「負け犬の美学」ほど美しいものはない。香港映画の名作「男たちの挽歌」を思い出した。「恥じて生きるより、熱く死ね」。男にとって仁義こそすべてなのだ。







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