世の中の映画に秀作というものがあるとしたら、今年私が見た映画の中で、かなりの秀作である。「つむぐもの」26日午前2時までこの映画を見た。おそらく低予算である。日本と韓国の合作映画、日活が参加している。名の知れた役者は「石倉三郎」しか出ていない。絶妙、絶品の演技で、私なら主演男優賞をおくる。脚本は「守口悠介」、シナリオが実にいい。監督は「犬童一利」、撮影が「伊集守忠」であった。舞台は越前、和紙づくりに命をかける男は頑固一徹である。妻に先き立たれた男は、脳出血を起こして(脳梗塞かも?)右半身が不自由となり、杖なしでは歩けない。そこで介護協会から一人の若い新人介護福祉見習いの、20歳ぐらいの若い娘「ヨナ」が施設から派遣される。和紙職人の男は、韓国人のヨナを差別する。「出て行け」とも言う。ヨナもまた、「韓国人、韓国人」という職人に「クソジジイ」と言う。右半身が動かない。杖しか頼りにならない。ヨナを「韓国人、韓国人」とさげすむ。でもヨナは明るい。メゲずに尽くす。映画は日本の介護施設の現状をリアルに表現する。ワガママ放題の老人たち、介護福祉士の人たちの大変さ。ヨナは和紙職人に精一杯つくす。それでも日々「韓国人、韓国人」と言いつづける。そんな中でヨナは明るく元気に職人につくす。ある夜、職人は寝ている最中にシモをたれ流す。ヨナは風呂場に運び、全身を洗ってあげる。ある日、二人はドライブに向かい越前の海、水族館などを車椅子で楽しむが、職人は再び発作が起き、ついに病院のベッドに寝たきりとなる。ここまでの石倉三郎の演技は絶品である。ケンカが強いので有名な石倉三郎は圧倒的名演技であった。監督の犬童一利の演出は絶妙を極める。はじめはヨナを「韓国人、韓国人」と呼んでいたが、やがて心を許すようになって行く。しかし職人は最後を迎える。ヨナは帰国に察し荷物を整理していると、一冊の本がある。それは「はじめての韓国語入門書」だった。ヨナはそれを見て涙する。職人は一生懸命、韓国語を学んでいたのだ。この映画を見れば日韓は仲良くできるはずだ。それにしても石倉三郎はすばらしい演技だった。今はどうか分からないが、門前仲町で美人の奥さんと、小さな飲み屋を営んでいた。短気でケンカ早く、とても強く数々の武勇伝があると言う。すこぶる愛妻家であったとも言う。石倉三郎さんにいつものグラスで乾杯した。実においしかった。東海道線内の天敵“柿ピー”を食べながら。(文中敬称略)
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