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2021年3月13日土曜日

つれづれ雑草「薄切りの男」

日露戦争の時、二〇三高地の激戦があった。乃木希典将軍が率いる日本軍は、無策を極めただひたすら高地を目指し、ロシア軍の機関銃の餌食となり、次々と、続々と、バタバタと討ち死にした。作家司馬遼太郎は乃木希典を余程好まなかったのか、痛烈にその無策ぶりを書いた。元帥大山巌はこのままじゃイカンデゴワスと、陸軍の至宝といわれた児玉源太郎を戦地に行かせた。野球でいえば、先発投手乃木希典がメッタ打ちにされて、投手交代となったのと同じだ。リリーフに立った児玉源太郎は、現地に着き怒り心頭となった。指揮官たちは前線からずっと離れた安全地帯にいたからだ。バカ者戦況が見えずに作戦が立てられるかと、怒られた連中は伊地知たちである。乃木と児玉は長州、大山、伊地知たちは薩摩である。天皇も心配した戦いは、リリーフ児玉の作戦遂行によって、あっという間に終った。児玉は機関銃の陣地に大砲をバッカンバッカンと打ち込んだのだ。災いのもとを断つこの極めて単純明快な作戦を大号令をかけてやった。乃木希典は明治天皇の崩御とともに、妻と自死して軍神となった。私はコロナ、コロナの今、この二〇三高地の事を思う。次々と、続々と、バタバタとコロナは拡大する。国家の大将とその部下たちには作戦立案能力がない。その下の部下たちには、さらに能力がない。二〇三高地の指揮官たちが、失敗の罪をなすり合ったように、同じ失敗を繰り返す。敵のワクチンはブラジル型とか、イギリス型とか、アメリカ型、南アフリカ型と新兵器で攻めて来る。その間、文春砲なる爆弾が大将とその息子、息子の会社、それを管轄する総務省に着弾、さらに大将のお気に入りのくの一広報官(女忍者)にも命中、さらにさらに、NTTの親方にまで命中した。ドンペリあり、シャトーマルゴーあり、牛肉のしぐれ煮(お土産)からアワビの姿焼き、海鮮フル料理、超貴重な牛肉のステーキなどなど。タクシー券まであって、もう演歌チャンチャカチャンの大騒ぎだ。どーして文春はこんなに詳しいのか、調べろとなっているはずだ。答えはカンタン、いちばん身近だった人間が、週刊文春にリークしているのだ。ちなみに銀座の超一流クラブで、ドンペリだ、シャトーマルゴーなんてコースは、一人七万円なんてありえない。座っただけの値段だ。Tチャージ、Cチャージ、Sチャージと一人ひとり変わる女性の分だけ、チャージは加算されていく。これが銀座の掟だ。さらにアフターチャージとなると、もう私でも想像がつかない。ペヤングソースやきそばにブルドックソースと、紅しょうがをかけて食べながら、ずっと昔の(バブルの頃)銀座の夜を思い出した。二〇三高地は高級将校の頭の中では勝っていた。第二次世界大戦も同じだ。2021年の文明社会において、この国には注射器がないという。日々色違い柄違いの派手なマスクのワクチン担当大臣は、コロンコロン言う事が変わる。おそらく現在の陣立てでは、コロナ戦争は大敗北となるであろう。国家の大将が大胆に総取っかえの器量が必要だ。(自分も含め)経験豊富なリリーバーが必要なのだ。野党の力を借りる位の器量も欲しい。午後八時四十分発品川駅から湘南ライナーに乗車すると空席は少ない。オッあったと座る。そこには牛タンの袋詰めをつま味に、缶ビールを飲んでいる、オッサンがいた。これが臭い。ペチャクチャ噛む音が気になる。牛タンは仙台で食えと、ノドまで声が出かかる。品川駅では五分ほど停車する。席を変るかと見渡すと、街中では飲めない、食えない人々が、我こそはと飲みかつ、つま味 or 駅弁などを楽しんでいる。私にとっては地獄列車であった。牛タンはこれ以上薄く切れないというほど薄切りであった。男のスマホの画面にはマンガが映っている。窓側の男の左足が、私の縄張りに広げて入って来たので、踏んづけた。そしてニラミを効せた。警察用語でニラミというのがある。取り調べで調書をとった人間が、裁判所で私はやってませんと言わせないために、法廷に入って来た容疑者にニラミを効かせるのだ。暗黙のオドシである。にもかかわらず、取調べが拷問みたいにキツくてやってないのに、やったと言いました。こう言われると、大失態で出世は出来ないことになる。本来国家権力にニラミを効かすべき、大マスコミは、たっぷり国家にゴチ(ごちそう)になっていて腰抜けとなっている。薄切りの牛タンみたいに、ペランペランのヘナヘナだ。男は実はもう一つ薄切りを持っていた。タコ酢の薄切りだった。これが鼻にツーンと来た。ロボットが切ったのだろう。これ以上なく薄い。タコの肉感はなくやはりヘナヘナヒラヒラであった。もう一度左足を踏んづけたが、すでにいい気持ちになっていて無反応だった。列車は横浜駅を通過していた。(文中敬称略)




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