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2021年3月24日水曜日

つれづれ雑草「眠れぬ夜のあれこれ」

「友よ答えは風の中を舞っている」。ボブ・ディランは歌った。午前三時三十三分二十四秒目覚し時計を見る。午前二時過ぎにゴロンと横になったが、答えは次々と脳内で飛ばされ、散々に砕け去っていく。連日の打ち合わせが困難を極める。久々の経験、私は打ち合わせは最長2時間位と決めて来た。プロが2時間かけていいヒラメキが出ないはずはない。私に才能がないのだ。新しい話を振られた時、直感がほぼ決める。眠れないので今村昌平監督の映画を見る。「赤い殺意」。五社英雄監督が東宝ではじめてヤクザ映画を撮った「出所祝い」を見る。高橋竹山の津軽三味線が荒海に流れる。五社英雄監督独特の情念の世界がある。文学作品のようであった。確か少年の頃に荻窪東宝で観た。「赤い殺意」は何度見てもすばらしいの言葉しか見つからない。夫の出張中、空巣に入られて犯された主婦が、日々定規で計ったような生活の中で、肉体の中に隠れていた性を、空巣に呼び起こされ目的地のない逃避行へと向う。夫に抑さえつけられて来た女性には、理性も知性もない。あるのは本性である。すっかり目が覚めた。薄いコーヒーを入れてパウンドケーキを食べる。脳内が答えを求めてクールダウンしないのだ。それじゃ歌でもと聴く。北原ミレイ「石狩挽歌」「ざんげの値打ちもない」、天才なかにし礼と天才阿久悠の詞が凄い。長山洋子の「じょんから女節」。大好きな三味線の大競演だ。ちあきなおみの「紅とんぼ」、郷鍈治との死別以来プッツリ歌を消している。美空ひばりと同じ位、すばらしい歌唱力だ。矢吹健の「うしろ姿」「あなたのブルース」、次に仲宗根美樹の「川は流れる」。これも大好きな曲だ。北島三郎「風雪ながれ旅」、国宝級にすばらしい。美空ひばりの「ひばりの佐渡情話」、もう神の領域だ。守屋浩の「僕は泣いちっち」。そしてケイ・ウンスクの「すずめの涙」、松島アキラの「湖愁」を聴いた。すっかり一時間が経った。次にモダンジャズを聴いた。マイルス・デイビスのドキュメント映画だ。圧倒的な音がケーキを二つも食べさせた。眠気がやって来ない。明日は大切なことがあるのだが、クールダウンしない。 帰っちゃいやと いえないあたし 今夜もくるとは いわないあなた ああ うしろ姿は他人でも ゆうべのあなたは あたしの あたしの あたしのもの……。スリルとサスペンスのないマスク生活は、感性を失ってしまう。黒木憲の「霧にむせぶ夜」を聴く。この曲はいい。霧にむせぶ今の自分を現している。今、この国に答えは舞っていない。先進国で幸福度40位程度の国なのだ。あ~五時を過ぎた。ブルース・スプリングスティーンを聴きはじめた。ミッキー・ローク主演の「レスラー」の主題歌は最高だった(ゴールデングローブ賞でオリジナル歌曲賞を受賞)。作品は主演男優賞と助演女優賞にノミネートされた。このところいい映画を全部見落としている。 涙じゃないよと 言いたいけれど こらえても こらえても まつ毛がぬれる 君より切ない この俺なのさ だから笑顔が ほしいのに さようならが さようならが 霧にむせぶ夜……。花に嵐にたとえもあるぞ さようならだけが人生だ。こんな言葉を思い出す。春はさようならと、こんにちはの季節だ。まだまだコロナの風が吹く。それでも友よ Go Ahead 前へ向って進んで行こう。人生とは終りのない永遠の戦いの道修羅道なのだ。全然眠れないが、相当にいい夜だった。西田佐知子の「灯りを消して」。思い出深い曲で、あの日、あの夜、あの言葉を思い出した。荻窪の教会通りにある「角笛」というBarだった。(文中敬称略)

故人の名は生前のままである。



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