鳥羽水族館より ダイオウグソクムシ |
嫌だ、嫌だギモジワルイという人もいれば、凄い、素晴らしい食べちゃいたい位だという熱狂的ファンもいた。
進化を拒否した車子(シャコ)の親分の様であり、巨大ゾウリムシの様であり、三葉虫の化石が実は生きていた様でもあった。
学術名「ダイオウグソクムシ」が五年間の絶食をしていた。
三重県鳥羽市の鳥羽水族館で。二〇〇九年一月にアジ一匹を食べて以来、何も食べなくなって遂に二月十四日バレンタインデーの夕方ひっそりとあの世に旅立った。
謎の多い深海魚であった。
剛鉄の鎧の様なその姿は、「倒れた兵士のよう」と表現されていた。
何故に何も食べなくなったのかは分からない。
私なりに解釈すると、彼、ダイオウグソクムシは、グソクムシ界のダイオウであったが、何本も何十本もある足の様に、グソクムシ界は人間界と同じく個人主義というか、無節操という、無慈悲な事ばかり、好き勝手な動きをする。
ダイオウの言う事を聞く耳を持たない輩ばかりになって、言い争いばかり起こすのにうんざりしてしまった。「クソッタレ」ばかりだ。
グソクムシ界は→クソムシ界になってしまった。ならばとダイオウはインドのガンジーの様に「断食」をして世の争いに抗議しようと決意した。
ダイオウグソクムシは求道者となり、牛丼も、天丼も、カツ丼も、鉄火丼も、しらす丼も、うにいくら丼も断つ道を選んだ。
丼々、ドンドン、どんどんダイオウグソクムシは衰弱していったのではなかろうか。
人間たちよ、ダイオウの声を聞かねばならない。
ひょっとすると、何年も前から深海にも放射能汚染水が及んで来ていたのかもしれない。何かの死には、何かの意味が隠されているという。
テレビでその姿を見た一人の女性はキャーヤダといって顔をそむけ、一人の寿司好きのオカマは、スッゲェーウマソーじゃないのと画面に目を奪われていた。
日本海では深海魚が大漁となっている。
地震学者や地質学者は何か大きな事の前触れではと語る。
ダイオウグソクムシよ、安らかに眠りたまえ。
クソッタレは、クソッタレにふさわしい最期を遂げる筈だから。