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2014年3月3日月曜日

「ゴマスリ」


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ジンジ、ジンジ、ジンジ。
この季節いちばんうるさく鳴く鳥の声です。

のし上がった者、蹴落とされた者、サセン、サセンと左遷されて恨み骨髄と飛ばされて行く者。
せっせとゴマをすっていたのに裏切られたという者。
まさか、まさか、まっさかさまの人事に愕然とする者。
何でよぉ〜、俺があいつの下で働かなきゃならねんだよぉー、冗談じゃねえよ、何であの人が部長であの人が飛ばされたの、何考えてんだよぉマッタク、やっぱりゴマスリが勝つんだよな人事は。
何であんな阿呆の倅が役員になるんだよ、一族経営の見本じゃんか、会社の一族化は許せないわ。
ヤダヤダ、あたしとあの娘とどっちが仕事が出来るか、みんな分かっているでしょ、なのにあの娘の方があたしの上になるなんて。
知ってる、あの人とあの人出来てたのよ、よくやるわよね、体張ってまでなりたかっただなんて、見かけによんないわよマッタク。
あ〜あ、これでうちの省は終わりだね、あの人が局長だなんて。
だって知ってんだろ、バカで、アホで、ノンベで、スケベで、カラオケしか能が無いんだから。

憎悪、嫉妬、怨念、絶望、失望、絶句、噂大好きの廊下トンビは有る事無い事、無い事有る事に、様々な独自の解釈を加えて梅の花が春風で飛んで行く様に、今日はあそこに、明日はあっちにと酒席を回り続けるのだ。
人事の失敗は組織の失敗と言われる。

二月二十八日新橋発小田原行き、十一時五十七分発東海道線最終列車は、中央線高尾−中野間人身事故(合掌)の影響で運休、その為に東海道線にも影響、ホームに立った時は二月であったが、動き出した時は三月であった。

ギューギューの満員列車となっていた(グリーン車もギュー詰め、私は藤沢まで立ちっ放し、モミクチャ状態)。グラグラ、ベロベロ、ヘロヘロ、メタメタ、グニャグニャ、ヨレヨレの酔っぱらいばかり、東京駅から座ってきている組織に組みする人間たちの話は、ジンジン人事の話であり嫌でも耳に入って来た。

早い話、不平、不満、不信、それを正面切って言えない根性なしというか、自己保身の人間たち、愚痴と能書きと噂話に生きる、使えない、ロクでもない人間たちが組織の殆どを占めているのだ。

「ちらつかす」という言葉が多いのに気が付いた。
ストリップ劇場では「ちらつかす」が観客の目を奪う様だが、組織では「ちらつかす」が心を奪う有力な手段の様だ。
あの人◯×をちらつかしてやったらしいわよ、とか、あいつ□△をちらつかしてやりやがったとかしましい。

満員列車がやっとこ駅に着く度にドア口に立っていた私はホームに降りた。
酸欠になりそうなので停車駅ホームで深呼吸をした。
よくもこんなに乗っていたなと思うほど人間が途切れる事なく湧き出て来た。
列車の中の話では、どうやら「ゴマスリ」という「スリ」がいちばん多いらしい。
ただこのスリは警察には捕まらない。

ちなみに会話は座っている人間たちの顔付きや出で立ちからかなり想像している。

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