人間は死ぬまで何をしているか、答えは“生きている”そんな単純なことを考えながら深夜グラスを傾けた。
時計を見ると午前十二時三十八分二十八秒であった。
お気に入りのグラスにジム・ビームを入れた。
グイッと飲むとカァーとノドに来た。
食道を通過し胃袋に到着する、胃の中もまたカァーと熱くなった。
ストレートで飲むことはあまりないが、人、人、人、人と会って、いい話、嫌な話、疲れる話、ウレシイ話、許せない話、再起再生の話、暗い話、明るくニコニコする話をした後、列車に揺られて帰った。
着ていた服を脱ぐと、ストレートで飲みたい気分になった。
つまみは先日岡山駅で買って来た岡山名産「ままかりの酢漬」だ。
バーボンウイスキーとままかりは実にグッドだ。
ままかりとは漁師が沖へ出て小魚を釣って帰った。
料理して食べたら大変うまいので隣の家に飯(まま)を借りに行った。
そんな話から名付けられた。
酒は気づけ薬ともいうからグダッとした体に火をつけてくれた。
その日の朝辻堂駅ホームに30人位の老人たちが二組に分かれて下りの列車を待っていた。リーダーらしき人がアレコレ指示をしていた。
60〜80代の男女、わかりましたか、ハーイなんて言ってみんなグハグハと笑っていた。
箱根か大山かなと思った。きっと金はある、時間もある、やることがない。
リュックサックを背負った男女たちはワイワイ、ガヤガヤと列車に乗って行った。
人生は遠足だ。きっとそんな気分なのだろう。二杯目はミネラルウォーターで割った。
“人生とは重き荷物を背負うが如き”確か徳川家康がそんな言葉を遺した。
私の背中のリュックには、未だたくさんの宿題が入っている。
箱の中にままかりは二袋、10匹入っている。一袋は冷蔵庫へ。
チャップリンの映画を一本見るかと思った。
一日中言葉につかれたから無声映画にする。