その声は弾んでいた。
九月八日ひと勝負かけていた結果が昨夜午後七時頃に出た。
勝ちましたよ、とりましたよと。某女子大生がバイトに来た初日に、いい経験をさせてあげるよと言って、私がプレゼンをする場に同行させてあげた。
真っ黒に統一された広い会議室。
先方は12人、こちらは確か10人。
一社四十五分の説明時間であった。
私の担当時間は約二十分とちょっと。
これが採用になったら業界もビックリ、インド人もビックリする案を一案だけ用意した。
ずっと考えに考え、取材に現地にも行き、更に練りに練って、バサッとぜい肉を切り落とした案であった。
私は依頼して来てくれた人を信じていたので、どうですこれでと言ったら、ヨシ行きましょう。
となりそれぞれの分野の詰めに入った。
マーケティング、プロモーション、メディア、クリエイティブ、私はそれらの考えを約九分のプレ用の映像にした。
まるで映画のようにドキドキ、ワクワクするものとして、我々のプランに絶対に自信ありと説明した。
詳細は後日。
勝負は楽をしようと思ったら負け、ヘトヘトになってもう動けないと思うまで追い込んで、更にとことん追い込まないと大勝負には勝てない。
採用してくれた会社に心から感謝だ。
私はバイト一日目で目を白黒させている若者にいい経験をさせてあげられたのがウレシかった。
大きなパネルボードを持つ役を頼んだ。
家に帰り愚妻に言うと、あっそう良かったわね、ゴハンはと言った。
でサバのみそ煮、ブタのショーガ焼き、とん汁。食べてくると思ったのでこれしかないわよと言った。
好物のチリメンジャコ。
昆布の佃煮、白菜の漬け物が小鉢にあったのでそれをつま味にひとまず一人で乾杯をした。
だが明日からプレゼン以上にもっと難しい問題に取り組まねばならない。
人間の誇りとプライドを守らねばならない。
ともあれ役目を果たして依頼人の期待に応えられほっとしている。
昨日BACHバッハ幅さんという、高名な本のプロデューサー&ブックギャラリーデザイナーの方の事務所をある出版社の編集者の方と訪ねた。
青山にある根津美術館の側、お宝のような本が見事にレイアウトされていた。
この方にある物件のブックギャラリーの仕事を依頼した。
バッハが好きなんですかと、幅さんに聞いた。
勿論バッハは大好きですと言って笑った。
ステキな人と知り合えてウレシイ日であった。
近々飛騨高山の天才と会って仕事を依頼する。
全身殺気の塊りである。
人間溶岩のように熱いのだ。
今夜はなんとしても眠る。
次の勝負のために。修羅の道を私は進む。
プレゼンを戦っている人にアドバイス。
どんなに遠くても必ず現場に立て、作っている現場に。机の上ではいいアイデアは浮かばない。
地取り捜査の刑事のように靴底を減らすのだ。