金輪際男に体は許さない。
永遠に処女のままで生きていく、そのために全身を重装備する。
そこまでしなくたって別にいいじゃないのという物がある。
味覚の秋、ありがたくも栗を取って来たからと箱いっぱいに送ってくれる人がいた。
で、ダンボールを開けて、えーと声を発す。
その中にはトゲトゲのイガ栗がまるで機雷の群れの様に、または雲丹の群れの様に来る者を拒んでいる。ちょいと手を出せば、痛っ、と指先から血が出る。
キミはどうしてそんなに身を守るのか、元々は一体どうだったのか、父や母はそんなに厳しく躾たのか、というより恋とか愛とかを教えなかったのかと問いかける。
さあ〜大変だ軍手をはめ、ナタを持ち、トンカチを脇に置く。
栗の尊顔を拝すまでに艱難を要す。
やっとこさ栗に辿り着くとその渋皮に再び防御される。
この頃になるとかなりの憎悪が沸いて来る。
渋皮の先には更に筋張った繊維の皮がその身を防御している。
源氏物語の主人公光源氏はきっとこんな難儀をしながら女体に接したのだろう。
一枚、二枚、三枚…十二枚と。
英国王妃などが道ならぬ恋をし、心寄せる人にその身を任せようとするが、一枚、二枚、三枚と服を着ており、また身を細くするための頑丈な腹巻きやら、服を広げるためのペチコートやら、ガードルを外すために相手はヘトヘトへなってしまう。
そんなこんなしている内に時間切れとなる。
さて栗だがいいアドバイスに出会った。
栗には「ニホングリ」と「チュウゴクグリ」(小さくて天津甘栗になる→栗の火炙りの刑だ)とに大別される。
「チュウゴクグリ」は皮は剥がれやすいが、「ニホングリ」は剥がしにくい。
かつて日活映画全盛時代に「憎いあんちくしょう」という、石原裕次郎主演の映画があった。
それはさて置き人間はやはり賢い。
2010年、果樹研究所は遂に渋皮の剥がれやすい新品種を見つけた。
外側の鬼皮(というらしい)に傷を入れて、オーブントースターや電子レンジで加熱すると、ぽろっと渋皮が剥がれる。その名を「ぽろたん」と名付けた。
ネーミングには(?)(?)(?)なのだが大発見なのだ。
渋皮の剥けやすさは「父と母」の遺伝子によって決まるとか。
更にぽろたんはいろんな品種と肉体関係を持たされ遂に「乙宗」という大スターとなったらしい。
そうか、傷つければいいのか、中々ガードを緩めない刺々しい女性は傷を付ける事をすすめる。但し間違いなく傷害罪で捕まる事を知っておいてほしい。
私はイガ栗と戦い続けた。
同じ様にガードの固い物に、栄螺、雲丹、鮑、岩牡蠣、胡桃などがあるのを記す。
それぞれ一箇所急所がありそこを攻めるとアラッカンタンとその身に出会う事が出来る。「人に急所あり」プレゼンテーションはそこを見つけたら必ず勝つ事が出来る。