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2012年9月20日木曜日

「小さな秋」

 


チッ、チッ、チッ。
いや、キュッ、キュッ、キュッ。
いや、チキッ、チキッ、チキッとも聞こえます。

枕元の側にある竹製のゴミ入れに一匹の鈴虫がへばり付いて鳴いているのです。
私の居住空間は四畳半、そこに小さな秋がやって来たのです。取材に出ていたので気が付きませんでした。

どこから入ったのかは分かりません。
猛暑と残暑でへたった心がうれしくなりました。

九月十九日の深夜、小さな秋を満喫しています。鈴虫独り占めです。
私は家の広さとかには全く興味がありません。今住む小さな中古住宅を買った時も見たのは引越前でした。
不動産屋さんが引越をしてから文句を言われたら困るからと夜中に懐中電灯で照らしてくれました。
愚妻に全て任せていました。死ぬ程働いていると家は眠るだけの存在だったからです。

むかしの人がいいました。
立って半畳、寝て一畳、これで十分なのです。四畳半もあればかなり贅沢です。
広い方がかえって落ち着きません。子供の頃は一間に六人兄姉全員で寝ていたのですからね。

どうやら鈴虫ちゃんは未だ子供の様です。暑さ寒さも彼岸まで。
ホントむかしの人の教えには敬服です。
これを書いている文机は左右約45センチ、奥行き35センチ。
付けっぱなしのテレビは病院の病室にあるのと同じ大きさ。

私のカチカチの体に鍼とお灸をしてくれる佐賀出身の先生の治療を受けると一週間は四畳半の中にお灸の香りが残ります。これをクンクン嗅ぎながら(とてもいい香りです)鈴虫の鳴き声を聞くのです。実に風流の極みなのです。

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