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2019年8月27日火曜日

「イージー・ライダー」

一言居士の映画監督「井筒和幸」さんが夕刊紙にいいコラムを書いていた。8月24日「怒怒哀楽劇場」である。以前、私も書いた「イージー・ライダー」というアメリカン・ニューシネマの代表的作品についてだ。主役のキャプテン・アメリカ役を演じた「ピーター・フォンダ」が亡くなった。80歳を過ぎていた。父は「ヘンリー・フォンダ」という大スター、姉はやはり大スターの「ジェーン・フォンダ」である。ピーター・フォンダはB級シネマのスターであったが、自身が製作・出演した「イージー・ライダー」は歴史的映画で、世界中の若者たちに影響を与えた。チョッパーバイク(ハーレーダビッドソン)、革ジャン、マリファナ、ステッペンウルフの楽曲「ワイルドでいこう!」、ほぼ無名だった「ジャック・ニコルソン」、今は亡き「デニス・ホッパー」の味わい深き演技。中でもアメリカの「自由」について、焚き火をかこみ語り合うシーンに、井筒和幸監督も私も共感する。自由に見えて自由でない国アメリカ。ヨソ者を入れない人種差別の国、アメリカ・ファーストを叫ぶ今の大統領はまさに、「イージー・ライダー」の中で若者たちが語る、保守的アメリカの人間である。「『自由』ってやつをこの国は一番恐れているんだ」。長髪やヒッピーみたいな格好、革ジャンスタイルは嫌悪の対象だった。そしてその若者たちを見たオトナは、走るバイクを追いかけ、いとも簡単に銃の引き金を引き、若者たちを殺してしまう。ハッピーエンドが定番だったハリウッド映画界にとって衝撃的ラストシーンだった。その後、ハリウッドは変わっていった。井筒和幸監督も大いに影響を受けたようであった。日曜日夜、NHKの「ドキュメント矢沢永吉」を見た。近々70歳になる世界のYAZAWAは、ロックの明日に夢とロマンを持って、ニューアルバムを出す。いい音を求めてロサンゼルスへ。そしてそこには日本から古い友人たちが革ジャンを着て集まっていた。チョッパーバイク(ハーレーダビッドソン)に乗り、仲間とツーリング。スーパーでバーベキュー用のアメリカンビーフ、そして一本28ドルのワイン。「仲間、サイコーだよ」と言う。男たちは少年のように無邪気だ。ビートルズを見てロックを目指したYAZAWAは言う。「有名になりたかった。金も欲しかった。成り上がり上等だよ。結局世の中は、やるときはやる奴と、いつまでたってもやらない奴とに別れるんだよ。5万人もの観衆を熱狂させるためには、やっぱりロマンじゃないの。オレはやるよ」と。香港の若者が「自由」を求めて立ち上がっている。日本の若者といえばどうだろうか(?)。リーダーなき世界は混迷を極めていく。井筒和幸監督は、次にどんな作品を世に出すのだろうか。「ガキ帝国」はすばらしい作品だった。少年が少年らしくない世の中は、雲のない空みたいにつまらない。石川啄木は「雲は天才である」と書いた。少年少女はみんな天才なんだ。成り上がれ若者よ、天下を取れ! YAZAWAをオドロカセだ。(文中敬称略)


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