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2019年8月5日月曜日

「アルファ」

週末から月曜日朝まで映画ばかり見た。何しろ外は猛暑である。「沈黙、愛」「J・D・サリンジャー」「スノーマン」「アルファ」「バグダッド・スキャンダル」「モーターギャング」「インモラル・ルーム」の7本である。人から受けた恩をちゃんと返せずに来ている私にとって、この1本は泣けるほどよかった(「アルファ」)。「アルファ」は奇跡的な映画であった。どうやってこんなすばらしい映像が撮れたのだろうか。物語は2万年前のヨーロッパとスーパーが出て始まる。極寒の山地に住む一族の長には一人の息子がいる。男たちは食料を求めて狩猟の旅に出る。息子の名は「ケダ」。彼は父と違ってやさしい。それゆえ、父はケダが心配だ。火を起こすこともできず、鋭い矢じりも作れない。この旅で一族の長の息子としての証明をしなければならない。男たちは広大な雪山の中を進む。目指すのは、野牛の群れであり、その野牛を崖まで追い込んで、墜落させて大量死させる。一種の追い込み猟である。空には大鷲の大群、大地には狼の大群が男たちの命と、野牛の死を追う。超絶的雪山の中の映像、猛吹雪、雪崩れがつづく。ついに男たちは野牛の群れを発見して、崖まで追い込む。そして野牛たちは墜落する。と、同時にケダも落下して数十メートル下の岩のところで動かなくなる。父は息子に大きな声をかけつづける。が、一族の者たちから、もう死んでいると告げられ、早く崖下に行って獲物を運ぶことになる。崖下には一頭の傷ついた狼もいた。男たちは岩を積んでケダに別れを告げて去って行く。日が経ち、ケダは息を吹き返す。死んではいなかった。ケダは大雨で瀧のようになった崖下に飛び下りて河岸にたどりつく。そこに傷ついた狼がいた。ケダは自分の傷を手当てしながら、狼の傷を治そうとする。牙をむく狼、ケダはあきらめずに狼の傷を治す。この狼は大地の群れのリーダーだった。狼は遠吠えで自分の仲間たちに指令を送る。父がケダにいつも教えていた、一族の長になる者の心得は、勇気ある者たれ、仲間のために命をかけると。狼のリーダーはそんなものがなっているのだ。一声で群れを動かす。この狼とケダはまるで愛犬家とその愛犬のような仲となっていく。狼がまるで賢いシェパードのように演技する。泣けるほどケダにつくす。どうやって撮影したのだろうか。息を飲むほど美しい雪の山脈。嵐のような雪、大地ではリカオンの群れが命を狙って追って来る。ケダは狼に「アルファ」と名づけていた。アルファは狼の仲間たちに、俺は大丈夫だ。あるやさしい男に命を助けられた。その恩を返す旅をしている。みんなで手伝ってくれ、そんな思いを込めて、岩穴の外から大地に向かって遠吠えをする。ケダとアルファは集落を目指して行く。と、まあこういう物語なのだが、狼という動物と、人間という動物が、恩と情によって結ばれることを教える。すっかり現代人が忘れてしまった大切なことを、見終わったあと学んだ。この途方もない映画をつくった人たちと、狼に拍手を送った。ぜひ、おススメの一作である。愛犬家が見たら、きっと大泣きするだろう。


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