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2010年11月12日金曜日

湘南の嵐便り 「怖い人」

仁義なき戦いより
オリャーボケ、沈めるぞ埋めるぞ直ぐ来いって姐さんが言ってるんだよ、わかったな直ぐだぞと黒い服の60歳位の恐い人とその隣に70歳位の少し太めの和服のおばさんじゃない姐御風の女性、それを囲む様にテーブルには若いお兄さんが6人。


入口の駐車場には二台のベンツ、側には4人のボディガード風、ここはホテルニューオータニの一階コーヒーショップ。みんな煙草をバカバカ喫っていて煙がモクモク。


私はそこで待ち合わせがあったのでタクシーで車寄せに着きました。
おっとボディガードが寄って来る。何故か私がすこぶるその人達に近い感じがするのだろう、でもジーンズにジャケットを着ている恐い人はいない。
一応私の体を目で上から下、下から上へと見て離れて行った。


ニューオータニのコーヒーショップは昔のニュージャパンの替わりになって恐い人の集う一番のホテルと云われている。



まむしの兄弟より

何組か座っているが殆どが煙草を喫っている。
オーダーを取りに来たボーイに禁煙じゃないの?ちゃんと注意しないと駄目じゃないと言うと、えー今日はマアちょっとと苦笑した。仕方ないよな、沈めるな埋めるだなんて物騒な声で怒鳴っているしな。えーマアと更に苦笑した。


後で女優の○○さんが来るからルームサービスにするので部屋を二時間とってくれる?マネージャーも来るから三人ね。会議用の部屋があるから頼むと言った。


何しろ世の中で一番恐い人たちが群れている、何でここを指定したんだろうと思った。
カプチーノの大を飲みながら前後左右に気を遣う。

ナニー、コリャーボケ指一本や二本じゃスマネェゾわかってんのか、来週オヤジが出て来るのに未だケジメがついていないなんてオレに恥かかせんのか、エー、オイ。なんて二台の携帯を使い分けている。


アレ国会議員の××先生が秘書と二人で近づいて来るではないか、そして恐い人とその親分の奥方(姐さん)にいや〜どうもどうもおそくなりましてと最敬礼するではないか。

その時午後一時十六分三秒、一体どうなってんのという感じ。
支配人らしき男が来て煙草の注意でもするのかと思いきや、君っと言ってボーイに灰皿を取り替える様に指示を出す。


唐獅子牡丹より


余程オリャー禁煙だろうがちゃんとルールを守れと言おうと思ったが、元々ルールを破るのがしのぎの人達、ナンセンスかと思ったので止めた。


姐さんはミックスサンドなんか食べている。
××先生は姐さんの耳元に何か囁いている。
突然姐さん顔に似合わず着物に似合わずウソーウソーギャハハハと大笑い。
周りの恐い人達は決して笑わず目配りを怠らずギラギラギョロギョロだ。


あっ、来た帽子とサングラスで顔を隠した女優さん登場。
ボーイが直ぐ近づいて言葉を掛けそのままエレベーターへ。背が高いし黒いコートに長めのショール、やはり目立つ。立ち止まって支払に向かうと又、オリャーボケ、甘ったれんじゃねえぞオラオラと又始まった。余程沈めたり埋めたりするのが好きらしい。
煙草の白い煙が雲の様に浮かんでました。


緋牡丹博徒

緋牡丹


後で判った事だが女優の○○さんの男がこのホテルのスイートを一ヶ月借り切っていたのです。なるほどでした。

2010年11月11日木曜日

湘南の嵐便り 「オッパイがイッパイ」


あー嫌だ今週もやるの、社内メールから「今夜女子会有り集合」と先輩社員から。

この女子会というのが企業の間で大流行とか。
多い会社では月に45回もするというではないか。私の知っている美人でボインで才能ある27歳の女性がこぼす事こぼす事、月に一度位ならいいけど週に一回なんてウンザリと。



どうせ話は男の話、SEXの話、ファッションやお化粧の話、旨い店の話、秘密の話(話したら秘密ではないが)上司とのラブホでのビックリする様な話、早い話が仕事の話。
上司や男性社員や欠席者の悪口大会、みんな立派な胸の谷間からオッパイを見せて一杯又、一杯。


あいつあんなゴッツイ体してホーケイだって。あの女かなりSらしいわよ。ムチムチ大好きって事。あの娘バックレて真面目ぶっているけど夜はクラブでひと儲けしているらしいわね。あの娘今日も来ないじゃない、徹底的にイジメちゃおうよ。


とまあオッパイ達が集まって一杯飲んで悪口悪態イッパイ大会。
これを女子会というらしい。



学生時代のコンパ、会社に入っての合コンが発展してホーケイ、ソーロー、インポ、変態マザコン男と飲んでもつまらない。
女だけで集まった方が何倍も面白いという形になっているらしい。


私の知っている女性はホトホト参っている。
辞めたいと目に涙、折角入社してやっと仕事も身に付いてきたのに、ブルルル、あっメールが入ったもしかして又女子会の集合命令かもとシドロモドロ。
もしそうだったら今日仕事の打合せで来いと言ってくれませんか、何でも私の名前を出せば怖い先輩社員も仕方ないと許してくれるとか。いいよいくらでも名前を出せばと言った。

その夜、その女性は私の名を出し見事女子会から逃げる事に大成功したそうです。
で、その夜どうしたかといえば何の事はない会社の上司と不倫したとか。


泊まりがけの女子会なんていうのもあるそうです


一体どうなっているのか、銀座の街を一人歩いていたら何人もの人とぶつかりそうになった。みんなメールを見ながら、打ちながら歩いているからだ。

それにしても世の中が心配だ。
後で聞くと不倫の上司は社内に後二人相手がいるというではないか。
一度連れて来いと強く命令を下した。

ある日の昼下がり銀座和光のパーラーでの事でした。

2010年11月10日水曜日

湘南の嵐便り 「猫まんまは悪か」


美味しそうな味噌汁がある、少し冷飯が残っている、今夜は自分一人。
真夜中お腹が空いた、誰もいない。いっそ味噌汁に冷飯を入れて食べたら旨いだろうな。

猫まんま※イメージ


こんな誘惑に駆られた事はありませんか?
俗に猫まんまといわれ最も行儀の悪い食べ方といわれています。


留置場に入ってきた人間が初犯かかなり慣れているかはアルミの食器の持ち方一発で判るといいます。
初めての麦飯入りのご飯が食べられない、エイッ何も入っていない味噌汁に入れて食べるというより飲み込んでしまう。
オイッおメェ猫まんま、犬飯かと同じ犯罪仲間に馬鹿にされるらしい。

この場合A=味噌汁+B=麦飯(バクシャリ)入りのご飯の足し算A+Bが別々だから正統な食べ物、食べ方として認められないのだ(実は旨い)。

ところが留置場でなく料理屋さんでA+Bが一緒になって出てくると、見た目の文字は悪いが「雑炊」という正統かつ高級、一流、食通の料理となる(古くは増水といわれた)。

「まる雑炊」とはすっぽん鍋の出汁にご飯を入れたもの、「ふぐ雑炊」はふぐの出汁、「とり雑炊」は水炊き鍋の出汁、「かに雑炊」はかに鍋の出汁、「しゃぶしゃぶ雑炊」はしゃぶしゃぶの出汁だ。

これは雑炊です※イメージ


主に鍋料理の〆や体調が不良の時など「お粥」と同じ様に用いられる。
味噌汁は可哀相ではないか、差別ではないかといいたいがどうだろう。


しかし自分の子供が味噌汁にご飯を入れたらコラッ止めなさい、それは猫まんまだと怒る筈だ。子供がだってこの前お鍋をした時にご飯をいれたじゃんと言う。
あれは雑炊といって正しい食べ方、豪華かつ優雅なお料理なのだ。
わかんないなんてグズられる。それ故絶対にひと前では出来ない。



深夜CSの時代劇チャンネルで昔のチャンバラ映画なんか見ていると頭の中に確か豚汁が残っているな、暖めて冷飯を加賀塗りのお椀に入れて北海道の友人が送ってくれたシシャモを焼いて漬け物で食べたら旨いだろうなと思いを巡らす。

でも子供や孫達にはきつく叱ってきたからなと苦悶するのだ。
後は自らの意志の強さとの戦いとなる。猫まんま、犬飯なんていわないでいい名前を一流の料理人に付けてもらいたいと思ったりする。


A豚汁+B冷飯+C本場のシシャモ、このA+B+Cの図式が堂々と許される日が来る日を待ちたい。


その夜私が自分の意志の力を発揮できたかはご想像にお任せします。

2010年11月9日火曜日

湘南の嵐便り 「終活」


お前が一番親に迷惑を掛けたんじゃないか。
何いってんだお前だって二度も離婚したくせに。やめなさいよこんな日に大した財産でもない話の事で。何エラソーにいってんだあんたは何も面倒見なかったじゃないか、自分だけいい身分になったからっていつも問題があると逃げてたくせに。





まったく遺言を書いておいてくれたからよかったんだよ、大体親父はだらしないんだよ。
結局お母さんがあんな死に方をしたのも金にも、女にも何事もルーズでだらしなかったからなんだから。もう止めてよそろそろ人が来るんだから。


「終活」ブームだそうです。
決して「就活」ではありません、友人の行政書士から聞いたあるお通夜をダイジェストにしたのです。

実話はもっと強烈だったそうです。
お茶をぶっ掛け合うわ、殴るわ、蹴るわ、鼻血は出るわだったそうです。




「終活」とは死ぬ前に財産は、お墓は、ペットはどうするか、又、借金を抱えていたらどうするか、知人や友人の連帯保証人になっていたら一体誰が何を相続するのかしっかりしておきたいという几帳面な方々のする事です。



遺言ツアーも盛んで、行政書士や公証人や弁護士とかと一緒に温泉などに行きながら話し合うそうなのです。
子供たちとうまくいってなかった人、子供に先立たれた人、生涯一人だった人等様々な人達です。お墓はないし、高いし、草とりやお参りしてくれる人もいない、そんな人たちが一代供養をしてもらう所が多くなっています。

私の親友も妻と息子三人いながらこういう所に入りました。
20万円で15㎝位の仏像です。私達有志が買い求めました。
麻布です。とてもキレイでオシャレなオープンカフェがあります。


さて「終活」ですが、西郷隆盛の言葉に「子孫に美田を残さず」というのがあります。
財産なんて遺すもんじゃない、なまじ遺すと骨肉の争いをするという教えです。



私のところは何も財産遺さず母が正々堂々と逝ってくれたので明るいお通夜でした。
友人の行政書士はこの頃大変忙しいそうです。はじめに書いた大暴れのお通夜の家族に遺されていた財産は少々の銀行預金と一頭の老いた柴犬一匹だったそうです。

兄弟は他人の始まりなのです。
あの世ではコツコツお金を貯め込んだ人間はもっとも卑しいといわれたるそうです。
一度は天国に上っても一度は地獄に下ろされるそうです。

2010年11月8日月曜日

湘南の嵐便り 「会社は怖い」


オメエ殺すぞと言われて、お願いします実は死のうと思っていたんです、凄く助かります。
こういう相手ほど手強いものはいない。つまり逆らわないという極意です。


末期の癌です残念ながら長くて後半年ですといわれたら、ありがとうございます、実は今日死のうと思っていたのです。未だ半年も生きるんですか長いですね。

白海老

君ねえ山形に転勤してもらう事になったんだ悪く思うなよと、上司に告げられる。
えっ、山形ですか良いところですよね、サクランボ、ラ・フランス、ヘキソバ、それに羽黒山、月山、湯殿山、映画村に鶴岡、もう大好きです。ずーっと退職までお願いします。

米は旨いし、魚は最高、飛ばす相手はすっかり拍子抜け、そんなに山形いいのかとなる。なんなら一緒に転勤になりましょうか?嫌だよ絶対本社に帰ってこれないんだから。
本社なんてどうって事ないでしょう、人事、人事ですから。
本当に心から御礼申し上げます。山形は最高ですから。妻や子供もきっと大喜びです。


のどぐろ


なんだい、チクショウ、あの野郎実力がありすぎるから地方に飛ばしてやろうと思ったのに。だが大喜びで明日にでも行くみたいなんだ。
常務そんなもんですよ、この東京にいて数字数字に追われまくって少し上に行ったからっていつどこへ飛ばされるか判らないですからね。

あの上席執行役員なんて前は副社長かヒョッとして社長なんて言われていたのに、今は富山支社長ですからね。支社といってもわずか6人、48歳で定年までの12年ずっとあっちらこっちら回されて終わりですからね、でも白海老やのどぐろは旨いですよ、それにゴリの唐揚げ。

ゴリの唐揚げ

あの男東京で役員になれると思って東京の一等地に大きな家を建てたばかりらしいじゃないか。BMWも買って、悲しき者は宮使いという事でしょう、この頃精神が少しいかれたらしいんだよ、元々いかれてたじゃないか。なんだか一日中笑っているらしいんです会議中も。

この間本社の副社長が来てその姿にビックリしたらしいんです。
なんでも副社長との打合せにGジャンで現れて前日のゴルフの内容をずっと笑いながら喋っていたそうです。じゃあアウトか?そうです、完全にアウトのようです。OBです。


会社ほどこの世で怖い入れ物はない。




2010年11月5日金曜日

湘南の嵐便り 「日本重病」


長い人生で付き合う相手を間違うととんでもない事になる。
一、時間にルーズ
一、女にルーズ
一、金にルーズ
一、金を出す根性がなく手に持っている金が無くなる恐怖人間
一、仲間を裏切る、そんな人間はペラペラしていても誰からもリスペクトされない。

※イメージです


人のいないところで社員を土下座させバインダーで頭を殴る紳士服安売りメーカーのオーナー。
あらん限りの言葉を使ってとことん追い込む安売りファッションメーカーのオーナー(別名鬱製造メーカーともいう)
そこの窓から飛び降りて死ねと絶叫する大手警備会社のオーナー。
会議の内容が気に入らないと鈴を鳴らして会議を終わりにする大手スーパーコンビニのオーナー。


※イメージです

この人々に共通しているのは成功させたのは自分一人であり「オマエラはアホだ」と思っている事。また高コンプレックス、低思想、低哲学、低学問、低宗教、日本人というより資本主義の過渡期が生んだ「低人」である。
※イメージです


世界は中国、インド、アジアの台頭で著しく情勢が変わっている。
益々日本外交の「低人」さが世界の笑いものになる。
10年後、20年後を予想出来ている政治家も学者もいない。


私が会社を創ってからお金を貸してもらった事は銀行や金融機関以外二人しかいない。
一人は長い付き合いの男だった、会社を創って間もなくどうしても10万円が必要だった。

中野坂上でその10万円を受け取った時なんと借用書を書かされた。
以来友人からは絶対借金しないと決めた。

もう一人は親友から紹介された、会社を創ったばかりの30代後半の広告代理店の社長だった。まだ人から紹介されて二ヶ月程なのに私が映画への夢とロマンを語ると判りましたと言って直ぐ一千万を振り込んでくれた。

生涯忘れぬ思いであった。何としても映画で借りを返さねばならないと思っている。
若いが腹の太い東北人だ。この人の為には何かあったら一千万分以上の命を掛けねばと思っている。


人間から野心や野望や夢やロマンが無くなると仕事の相手の電話に向かってヘイコラ頭を下げる様な男になってしまう。



私の愛する二人の兄弟分はこんな時代に敢えて銀座の高級クラブで美人相手に遊んでいる。
これは人脈への投資、遊ばない人間は決して一流になれない。
幕末の坂本、高杉、伊藤、山縣、井上、後藤達の様に。

そこは人物の重みや情報の入手の重要な場所でありお互いの力量を計る場所なのだ。
時代を動かした若き男達は皆遊びの達人であった。そして女性にモテたのだ。


ケチな男にはケチな人生の終わりしかない事は歴史が証明している。
若者よ借金せよ、借りに来て女性と遊ぶなら出してやるぞ(?)




2010年11月4日木曜日

湘南の嵐便り 「スイッチ」


ごく普通の人間が狂人に変わるスイッチがある。



家族で赤い夕食を食べている。
ある家庭は赤いスパゲッティ、ある家庭は赤いチキンライス、ある家庭は赤いトマトベースのブイヤベース。テレビでは赤い血がほとばしる殺人シーンの連続。


又、お笑いイジメタレントを使った恐怖シーンの連続。
又、世界ビックリニュースとかでの残酷シーンの連続。
テレビマンの企画力が全くなくなり制作会社やフリーの人間に丸投げする。


ゲーム世代に育った彼等には血と暴力と阿呆とセックスと恐怖しかない。
少々視聴率が稼げるのと制作費が安いのでテレビ局は採用する。
又、見識のないスポンサーが提供する、そして事実は小説より奇なりを遙かに超えたとてつもない残酷な事件が起きる。世の推理小説家なんてまるでその発想力を否定される。



赤いスパゲッティを食べてた男は浮気女房に殺意を感じ、赤いチキンライスを食べた主婦は博打狂いの夫への復讐を考え、赤いトマトベースのブイヤベースを食べていた若い夫婦は練炭による無理心中を心に決める。


普通の人間程いとも簡単に狂人と化すという。
身持ちの良さそうな主婦が売春に走り、清楚な女性が麻薬の虜になる、男も又然りである。

年間に1000件以上殺人事件があるという。
その中で現在確定死刑囚は109人だ。人間の命が平等に扱われていない。
実は殺された方がよっぽど悪い奴であるという方が圧倒的に多い。

死刑とは何か深く考えさせられるこの頃である。
殺人を裁いた人間が殺人で終わらせるのだから大きな矛盾をはらんでいる。
選ばれた裁判員が将来犯罪を犯さないという保証はない。




生まれた時はみんな可愛い赤ん坊であった。
何処でどう人生のスイッチが変わったのかそれを情状の価値という。


私はテレビやインターネットに大罪有りと云いたい。
あまりに多い殺人や残虐なシーン、残酷なシーン、エログロなシーンそれを見ながら平気で食事が出来る家庭はこの国位だ。

阿呆と馬鹿がひな壇一杯になって繰り広げる救い難き番組の数々。
この国は間違いなくテレビが滅ぼすと断言できる。又、それを批判しない新聞。




才能有るナインティナインの岡村隆史が精神的に参っていると聞くと彼には立派な良心があって悩み苦しんでいたんだと思う。

真っ当であったのだ。これから続々と心と体を痛める芸人が現れる。
宇多田ヒカル、沢尻エリカ、中森明菜は実は真っ当であったのだ。


とにかく怖い怖い世界の住人達である。
おぞましい、おぞましい。
こんなおぞましい世の中に可愛い孫達を出すのかと思うとゾッとする。

2010年11月2日火曜日

湘南の嵐便り 「ルノアールの話」



訳あり商品が売れている。
割れた煎餅、少しだけ綻んだ洋服類、五つセットの一つが欠けて4つになった湯呑みセット、チョット傷ついた果物類とか。


かつて古田織部という茶人は敢えて割れ目の入っている茶器を好んだという。
割れ目を金でつなぐ「金継ぎ」、織部好みとして珍重された。へうげものというらしい。
要は物事考え方次第といえる。

古田織部
黒織部茶碗


およそ訳のない人間はこの世に一人もない。生まれた時から訳ありなのだから。
処女と童貞が結婚するのは難しい。最も近頃は結婚しない男達、結婚を面倒くさがる女性達が増えているらしい。男は30歳になっても女性を知らなかったり、女性は20歳で何人も経験していたりする訳有りの男女時代となった。


その昔は一度傷ついた女性は訳有りを隠し続け秘かに生きるしかなかった。
ランチタイムのイタリアン、ホテルビュッフェ、和食、洋食、中華、高級イタリアンで大層な贅沢をしているのは女性と、ひょっとして女性と、女性らしき人と、もう女性じゃない人々がガヤガヤやかましい。

みんな訳有りの人ばかりである。とにかくよく喋り、よく食べる。
男達はマックやドトールや吉野家や立ち食いそばで平均食事時間15分位だろうか、踏ん張って安いコーヒーを飲んで30分位だ。

ルノアールで・・・


ルノアール症候群というのがある、東京中に沢山ある。
ルノアールという喫茶店は広い。新聞有り、コーヒー1杯やプラストースト2枚プラスゆで玉子1個で朝から夕方まで居ても叱られない。
グーグー眠っていても大丈夫。訳有り人間の溜まり場である。



地位無し、仕事無し、ヤル気無し、前途無し、彼女や奥さんとは修復不能、古田織部の茶器の様にはいかない。


文字通りガラクタばかりなのである。
ルノアールに行くと人生の墓場みたいでいろんな人間に会える。
怪しげな不動産屋風の男達、練炭で4,5人殺してしまいそうな保険の太ったおばさんと相手のおじいちゃん。サンドウィッチを食べながら盛んに投資を勧める証券マン。
店内全体がパノラマ的にマッタリ、ノッタリ、グッタリ怪しい空気が漂っている。


スポーツ新聞を四紙見ているオッサン、前の日は天皇賞だったのだろう、見出しに勝馬の名がでっかく出ている。

ブエナビスタ


馬の名はブエナビスタ(訳すと美しい景色)おじさん当たったかいと声を掛けると競馬仲間と思ったのかもう何もかもメチャクチャ、もう駄目スッカラカンだどんな接着剤使ってももう元通りには戻らないと言って冷めたコーヒーをすすった。

いろいろ訳が有ったんだろうな。で、私は何でルノアールにいたのか(?)

2010年11月1日月曜日

湘南の嵐便り 「権威の終わり」



アフリカンアート

芸術の秋である。

上野の森をはじめ、有名美術館で「日展」や「院展」など東京の各地ではとんでもない数の展覧会が行われている。


しかし芸術家は長期低迷であり有望な新人が全くでない。
正しくは権威主義に潰されてしまう。


何年も掛けて描いた力作が長老達にヨイショをしなかったせいでたった数秒でオシマイ、チョンとなる。長老が次!といえばそれで文字通り次となる。陶芸然り彫刻然りである。

画廊廻りが大好きなので色んな個展に行くが正直心がトキメク様なファインアートにはとんと出会う事はない。ほとんどが非実験的、非挑戦的、非メッセージ的である。
相変わらず山水、南画風、梅原風、東山風、佐伯風、藤田風でありつづける。


秋の叙勲で文化勲章に、蜷川幸雄さん、三宅一生さん、安藤忠雄さんが選ばれた。これは画期的である。何故なら御三方共大した学歴が無い苦労人である。

三宅一生さんはパリで鍛えられ、蜷川幸雄さんは役者失格から演出を目指し、安藤忠雄さんに至ってはボクサー上がりの闘志をル・コルビュジェに向け高卒ながら東大の教授になった。今まで初めての事だろう。


アフリカンアート


例えば私が知っているグラフィックデザインや広告界やファッション界で活躍している人間はみんな高卒または研究所卒である。
浅葉克己氏、仲畑貴志氏、葛西薫氏、副田高行氏、糸井重里氏(法大中退)、井上嗣也氏(順不同)トップクリエイターは大学を出ていない。彼等に続く人材は出ていない。


ある人の調査によるとアート系や音楽や芸術系は大学の四年間で大切な感性を失ってしまうという。科学とか物理とか医学とか建築などは大学や大学院での研究が大切だというが、棟方志功や山下清などの天才的人々には大学は全く必要としないという。

学歴は益々無用となって行くだろう。

幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学校とエスカレーターで上がった子供たちの将来は決して明るいとは言えない。20年後の日本がのんびり上がって来た人間を受け入れる余地はない。一芸に秀でよ、逞しく生きよ、夢とロマンを持てと言いたい。


革命的、革新的な人間になって欲しい。
子供達には無限の可能性がある。可愛い子には旅をさせよ、千尋の谷に落とせと言いたい。


ノーベル賞を受賞した先生の言葉に共感した。
一人は「日本人よもっと海外に出て日本を見よ」(旅行者としてではなく)もう一人は「誰もやらなかった事をやれ」と。

子供が描く絵は伸び伸びしていいですね


ジイジイ、バアバア、パパ、ママ、グランパに囲まれたボクちゃんよ一人で外に出よ。
君の将来は君が生み出すのだよ。君の個性は君でしかない、磨くのも君自身だ。

私は子供の描く絵が何より好きである。素晴らしい。
子供に勝てるのは二人だけ。ピカソと岡本太郎それとアフリカンアートだ。

岡本太郎氏



2010年10月29日金曜日

湘南の嵐便り 「血」


私の好きな作家が先日亡くなった。私小説と短編の名手であった。


「忍ぶ川」で芥川賞を獲り、選考委員も長く務めた。作家の名を三浦哲郎という、79歳であった。


この人の不幸を知ると余程の人は自分は未だ幸福だと思うだろう。本葬は岩手県一戸町で行われた。


6人兄弟の末っ子に生まれた。






6歳の誕生日に次姉が津軽海峡で入水自殺、次に長姉が自殺、次いで長兄が失踪する。更に次兄が行方不明となる。


破滅の血は己の身にも流れているのか悩み続けいっそその血を架空の試験管に採って研究し理解することが自分自身だと思う。


架空の試験管とは文学だった。22歳で早大仏文科に再入学、作家井伏鱒二に師事する。3年後学生結婚する。






私は惨たらしい人間です、おふくろの嫌がる事をずけずけと書いた。でも、その惨さを引き受けるのが作家と言い切ったと云う。




忍ぶ川




 一族の血に流れる暗い宿命に書くことで打ち勝った。北国の人らしい粘り強さで。


遺骨を埋めた寺の墓地には真っ赤なサルスベリが咲いていたそうだ。喪うことを豊かに描ける天涯孤独の作家であった。


切実な主題を研ぎ澄まされた文章で綴った。血は水より濃いという。私たちの体の中には長い長い月日を経た今はなき一族の血が流れている。






日本で血のルーツとされているのが天皇家であるがそれがどうして生まれたかは正しくは判らない。


ただ一族一血を守るには誰かが血の本家として必要であったのだろう。サルが人間に進化したのか遠いアフリカからの大地を旅してシベリアから渡来して来て日本人は生まれたそうだ。


一族の血はそこに原点がある、となると人の血は殆ど近親の血という事になる。






悪魔のような血、成功の血、滅びの血、様々な血は繋がっているのだ。


DNAの進化でいずれ解明できる日が来るだろう。ノーベル賞の人とスポーツマン、文化勲章と親分さん、芥川賞作家と風俗の女王とが血で繋がっていても全く不思議ではないのだ。


血は不気味だ。