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人間の値打ちはその人が何をしているかを見れば分かる。
最も値打ちが高いのは弱者のため、行き場のない人、困った人のために生きている人だろう。
広島県のとある町に一人の老婆がいる。
そこには少年院を出た少年、家出をした少女、不良少年、少女たちが食を求めて来る。
老婆は言う、非行に走る原因は飢えなんですよ、子どもたちは空腹に耐えられない、帰る家もない。帰る家があっても帰りたくない。親に見放されている少年少女はこの老婆の作るあたたかいごはんに失ったものを味わうのだ。
子どもは腹がへると万引きをする、恐喝や売春もするんだ、親が子どもに対して無関心となった時、子どもはすでに非行列車に乗っているのだ。
ある日その老婆を訪ねて十六歳の少女が来た。
あどけなさが残る顔で茶髪をしきりに指でなでながら、お腹空いたご飯食べさせてと老婆に甘える。あーいいよ、いいよと熱々のご飯を出してあげる。
贅沢なおかずは無くとも少女にとっては何ものにも代え難いご馳走だ。
少女はおいしい、うまいよと言って笑う。
親に対しては子どもの方が無関心だ。
結婚したいな、いい人見つけてさ、老婆は優しい顔でそれをじっと聞いている。
老婆はずっとずっとそうして少年少女を見守って来たのだ。
アンパンマンの生みの親が亡くなった。
そんな時にあんぱんで有名な銀座木村屋が身内同士、一族同士、骨肉の争いをしているという。なまじっか財産をたらふく遺すと醜悪なる姿をさらけ出す。
甘いあんこのあんぱんを真っ二つに割るとドロドロした黒い血の塊がツブツブ、ブツブツと入っているのだ。
私は時々木村屋の二階で人と待合わせをする。
先日そこで人と会った、店長とおぼしき人間にオイ、相変わらずお家騒動続きだなと言うと、苦笑いしながら「何しろ木村屋ですからね」と意味深なことを言った。
私はあんぱんを食べる事はない、銀座を行き交う人間観察にはいいロケーションなのだ。それと携帯を持っていないので、和光の上の喫茶室とかその隣の木村屋なら間違いない。
木村屋一族に広島の老婆の生きる姿を見せてやりたいものだ。
あんぱんをどんどん送る位の事をしてもいいんだよ。
銀座のあんぽんたん。従業員は一個のあんぱん売るのに一生懸命なんだよ。
何!木村屋から追い出された人間が行き場、立場がなくて困っているだと、何をいうかあんぽんたん、売り場に出てお客さんに頭下げてあんぱんを売れっていうんだよ、一から出直せだ。売り場は商人の原点なんだから。
さて、今夜はカキフライ、いよいよ広島の季節じゃけんのぉー。