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2013年10月17日木曜日

「ドライフラワー」


乾いた花




トライアンフのオープンカーに乗って猛スピードで走る若い女。
人を殺し刑務所から出て来た中年の男。

人混みの中でつぶやく。
こんなに人がたくさんいやがる、その中の一人位を殺したからってどうって事はねえじゃないかと。

ある街外れ、そこでは博打が行われている。
薄暗い灯り、白い盆茣蓙、中盆の声が低く静かに場に流れる。
さぁ〜どっちも、どっちもと。

その場にトライアンフに乗ってきた若い女がいる。
女は大きく賭ける。そこへ中年の男が現れる。
ヤクザ者たちは一札をする。兄貴、いつ出て来たんですか。
その場を開いている親分が言う、おー出て来たのか。

中年のヤクザと若い女は目と目を合わす。
それ以来二人は博打場で会う。ある夜二人は男の部屋で花札を引く。
女が男に聞く、人を殺したんでしょ、人を殺すってどんな感じ、と。
男は応える、別にどうってこたあないが刺した事、ああー俺は俺とつながってるな、そんな気がするんだと。

この映画は原作が石原慎太郎、監督が篠田正浩だ。
日本にも押し寄せたヌーベルバーグの斬新な幕開けだった。
若い女の役は「加賀まりこ」六本木族から女優に、その第一作であった。

謎に満ちた小悪魔の様な魅力が今でも目に焼き付いている。
中年のヤクザが池部良であった。兄貴と言ったヤクザが杉浦直樹、賭博場にいつも無言でいたのが藤木孝。私の選ぶベストスリーの一つだ。

題名は「乾いた花」。
生きる目的を失った花は、水を必要としないドライフラワーなのだ。

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