ページ

2010年1月15日金曜日

人間市場 アウト市

ピークアウトとトライアウト。
ニーチェ曰く「どんな強い者もいつかは疲れる」又、「どんな英雄もいつかは飽きられる」と言った哲人がいた。

ピークアウトとは盛りを過ぎたという事つまり、限界という事である。会社に定年がある様に人間の運命にも定年がある。名コラムニスト山本夏彦は「人生とは死ぬまでの暇つぶし」と言った。ピークアウトを自分の肌で感じたらクヨクヨしない方がいい。運命の先に寿命がある、その間のもう一度の人生に挑戦すればいいのだ。

一生懸命生きた結果であれば後輩に道を譲ったと思えばいい。運命は自らの手で切り拓かなければならないが、寿命や天命は向こうからやって来る。コンニチワと迎えが来ればハイ今行きますと行くまでの事なのだ。

定年を迎えた人がよく言う言葉はこれから好きな事をやって生きるよと。こう言える人は恵まれている人。未だローンやら病人やら老人を抱えているので、どんな仕事でもいい働かないと、と言う人。あるいはワーカホリックが身に染み付いて働いてないと落ち着かないとにかく働きたいという人。頭は白くなり薄くなり走ることはままならず目は遠くなり記憶は飛び新しい事は頭に入らない、でも朝決まった時間に起きて昼には定食を食べ、ドトールでコーヒーを一杯飲み、仕事が終わったら冷えたビールをグイっと飲みプハァ~と声を出し、ヤキトリを四・五本食べる。牛タン塩、レバーをタレ、皮、ぼんじりは塩、給料日には奮発して手羽先の塩を追加する。枝豆やモロキュウ又は冷奴があれば極上の時間となる。人間は本来遊ぶ為には生まれていない(遊び人もいるが)男は地を耕し稲や麦を植え野菜を作り、魚や貝を採り鹿や猪を狩猟する、これが掟。

ピークアウトは自分で決めた方がいい。人が何と言おうと自分は今が盛りだと思えばいいのだ。ニーチェなんてくそくらえなのだ。小倉遊亀、片岡球子、奥村土牛なんて百歳になってもピークだったのだから、人生に定年は無いのだ。

トライアウト。これはキツイ、切ない、悲しい、辛い。プロ野球の世界で十二月入団テストというのがある。天才、十年に一度の大物、甲子園のエース、怪物、色々に形容されてプロ野球に入団したものがプロの厳しい洗礼に遭いメッタ打ち、エラーの連続、三振凡打の山、期待を裏切り続ける。監督やコーチと折合いが付かない。

自信過剰が不幸を呼ぶ。人の成功を妬みだす。一軍に入ってもすぐに二軍に落ち、ずっと上に上がれない。更に妬み心は荒む。又、自分では未だ未だ出来ると思っていても球団からはいらない、つまりは戦力外通告を受ける。まだやりたい、どこでもやりたい、二十代から三十代の選手。野球しかやってこなかった屈強な男たちだ。トライアウトシステムは各球団がテスト生のテストをするのである。成功する機会はほんの少数でしかない。

ああ、もっとちゃんとやっていれば、ああもっとうまくやっていればと思いつつマウンドに立ち、打席に入る、コーチたちの厳しい目が光る。テストが終わり後日結果を待つ。妻や子供と、ある者は一人で、ある者は恋人と二人で。首を長くして筋肉に隠れた胸をドキドキさせて。

万に一つの希望を持って携帯が鳴るのを待つのだ。ブルルルー、携帯が鳴った。直ぐ手にする。もしもし、ハイハイ、ハイ。目からうっすら涙が流れる、果たしてその結果は。

1 件のコメント:

sakon さんのコメント...

トライアウト。何度かテレビで見ました。まさに、天国と地獄。。まさに実力社会。非情。。ドキュメント、泣けました。。