日本の映画界に一人の大スターがいた。
その名を嵐寛寿郎という。言わずと知れた鞍馬天狗である。角兵衛獅子をいたぶり、オメエタチモットハタラケなんていう恐い親方、上田吉次郎の天敵である。
角兵衛獅子と言えば美空ひばりか松島トモ子が定番であった。
何で嵐寛寿郎通称アラカンの話を突然するか。
それは女性との別れ方である。
私の所に相談に来た男はすこぶるケチンボであった。
分かれる女性に金なんか払いたくない、俺も浮気したがあっちも不倫したんだ、だからセイムセイムおあいこだよと気炎を上げる。何が訴えてやるだよふざけやがって、こっちが訴えてやりてえよ、そうでしょ先輩ときたもんだ。この男実は判っているだけで五度結婚し、五度離婚した。結婚と離婚のプロフェッショナル。とにかく好きな女性ができるとマメな事この上なし。枝豆、エンドウ豆、天豆よりマメマメしい。
今まで慰謝料は一銭も払った事はない、何故なら相手の女性の方からお願いだから別れて一銭もいらないから、私の方がお金を払うから別れてという方向に持って行くのだ。
正に女性の敵なのだが、得てしてこういう男が世の中ではモテるのだ。
初めて女性に会う、過去の結婚の失敗話をする、今孤独なんだ、淋しいんだ、一人で飲む酒は切ない、一人で食べる食事は旨くない、一人で聴くシューベルトは悲しいなんて言い寄る。更に君みたいな女性が僕の子供を産んでくれたらそれは神話だなんて駄目を押す。マメマメしくメールを入れ続ける。そして・・・ウエディング、籍も入れる、子供が出来る、その頃には他の女性に言い寄っているのだ。その男は得意の手を使い出す。
とにかく嫉妬深くなる。何してた、何処へ行ってた、誰と会ってたと言い続ける。それこそ連日連夜ウンザリする程に。そしてお願いだから別れての言葉を引き出す。男は何度もそれを拒否する、女性の懇願の度合いは極限に達する。当然女性の顔とか兄弟とか友人が出てくる。男は愛しているんだなんてシャーシャーと言い続ける。こんな男の風上にも置けない男が、僕の体験談を本にして出したいんですけどと言って来た。
バチン、ピンタ一発!嫌だよ、いくら知人の紹介でも嫌、最低だよあんたは。で、話はアラカンこと嵐寛寿郎へ、この人はエライ人。何人も愛人を作ったがバンバン天狗になって稼いでそのお金を手切れ金にして払った。愛人が出来る、鞍馬天狗になるお金が入る、愛人に渡すそれを繰り返す。最後には家も屋敷も全て手切れ金で一文無し状態。
ある日マネージャーが言った。先生もうスッテンテンですと言うと、アラカンはこう言ったという、エエガナエエガナ、又、天狗になればと、しかしこの頃すでに後期高齢者とても天狗にはなれなかったのです。
この話を男にしてやったら諦めて帰りました。
日本映画史上鞍馬天狗と明治天皇を演じさせたらアラカンの上はいないのです。男の中の男に脱帽!
1 件のコメント:
5回もですか。。壮絶な人生ですね。
ずるい男ですね~。アラカンさん、時代劇チャンネルでしか見たこと無いです。。
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