今年のカンヌ映画祭出品に向けて新作を制作している。
過日奥多摩のロケを終えた。三日間極寒の中でみんな頑張ってくれた。都内ではハウススタジオと東京湾からの強風が刺す程寒い品川の埠頭で。夜中主人公が雨の中路上で死ぬシーンを、2リットルのペットボトルの容器に穴を空け、倒れている役者さんに容赦無くかける。死体の役が本当に死体の様にカチコチに凍ってしまった。撮影終了後直ぐに車で大江戸温泉へ。
今回のテーマは「言葉」。人間が言葉を生んでしまってから、言葉は人を傷つけ人を欺むき、人を嘲けてきた。自省の念を込めて作っている。
ある集落に掟がある、ここでは言葉を使う事は許されない。感情は四つの面のみで表す。怒っている時は鬼の面、悲しい時は能面、嬉しい時はおかめの面、楽しい時はひょっとこの面なのだ。
主人公は画家を目指す。四人の裸婦を描き一人一人に四つの面を被せている。一心不乱に絵を描いていると一人の裸体が男の裸婦に変わる。驚く主人公、何かの錯覚だろうと目を凝る。男は大声で笑う、何とその声は犬の声だ、犬の化身なのだ。
主人公はその昔子犬を殺めた過去があった。その集落では犬は守り神であったのだ。犬の化身は執念深く主人公の前に現れる。主人公には幼い頃から好き合っていた美しい娘がいる。集落のみんなで餅つきをした日、神社の境内で冬の花火をする。線香花火が儚く光りポトリと落ちる。二人の行く先を暗示する様に、獅子舞が恐ろしい顔で踊る。お面を付けた人々が笛を吹く。掟を犯し集落を出た主人公に待っていた運命は、付きまとう犬の化身、四人の裸婦を描く絵は、無言劇は続きそしてラストを迎える。
詩的文学の世界を作りたかった。それと尊敬する民俗学者故宮本常一先生へのオマージュだ。高度2000メートル近い長野県小海線佐久広瀬駅から始まり、奥多摩、東京へとロケーションを行った。カンヌ国際映画祭では四年前日本で初めて短編映画賞を貰った。夢よもう一度スタッフもキャストも低予算の中いい作品を作ろうと心を一つにして頑張った。
村の人も20人位が協力してくれた。村を納める十四代の総代は山の中に入ってはマキになる木を持ってきてずっと焚き火をしてくれた。これから編集、音楽録り、タイトル入れ、効果音入れそして最終編集、仏語と英語でタイトルも入れる。企画意図やシノプシスを訳す、映画好きが手弁当で集まる、最高に楽しい日々だ。自主映画は一切の無駄は許されない。
監督は中野裕之さんの秘蔵っ子である、平間絹乃さん。撮影は私の長いパートナー猪俣克己さん、音楽は天才伊藤求さん、全体を動かすプロデューサーは私の弟子第一号奥野和明君だ。衣裳は初参加の石川香代子さん。手応え十分、乞うご期待を!
1 件のコメント:
寒い中本当にお疲れ様でした。すごい豪華なスタッフの方々ですが、文章を読んでいると、みんな楽しそうにやっている姿が目に浮かびますよ!
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