リリーの日記が元になり、1933年画期的な「男から女へ」が出版された。
彼女の勇気が今もトランスジェンダー運動を鼓舞し続ける。
ゲルダは生涯リリーの肖像画を描き続けた。
この文字がラスト黒ベタの中に白ヌキの文字として出る。
アカデミー賞受賞作「リリーのすべて」だ。
1900年代初頭のデンマーク、この頃男の中に女がいる性同一性障害は精神分裂と診断されていた。四十代あるいは三十代後半の美男美女の夫婦がいた。
二人共中堅の画家である。
夫は風景画を描き、妻は肖像画を描くが個展をしても画商の評判は高くなく売れない。
ある日妻は夫にバレリーナの足の仕草のモデルになってと頼む。
夫はソファに横になりポーズをとる、妻はやっぱりバレリーナの服を着てと頼む。
二人は愛し合う夫婦であったが、この瞬間から二人の運命は劇的に変わって行く。
夫は、夫の名があったが女性である自分の目覚めに気づく。
妻はほんのゲーム感覚で女装する夫を「リリー」と名付ける。
自分の本当の性に目覚めた男はリリーになって行く。妻はそんなリリーを描き始める。
やがてその絵は画商の目に止まりパリで個展をするまでとなる。
リリーは更にリリーになって行く。心配した妻は医師にリリーを診せる。
カルテには精神分裂と書いてある。拘束されそうになるが、リリーはその場を逃げる。
夫婦は一人の医師と出会う。医師は性転換をすすめる、真実の自分になるために。
だが失敗すれば死ぬこととなる、リリーは手術に挑む。そして…。
映画が名画になっている、それは冷たく重い北欧の雲のようであり、美しく儚い粒子が息をする文学でもある。ドキュメンタリーでもある。
今年観た映画の中でNo.1であった。
昨日は身も心も売る芸者稼業をした。
考え抜いたことが受けなければ粗大ゴミを大量に作ったことに過ぎない。
こちらは形なった仕事である、お世話になっている会社の大事な仕事を無事作り上げ、軽い打ち上げをして帰宅した。みなさん喜んでくれたのでホッとした。
頭の中をリセットするには映画が何よりだ。
借りて来ていた「リリーのすべて」をまず一本、もう一本「蜜のあわれ」を観た。
こちらは“室生犀星”の原作を“石井岳龍”監督で作っていた。
“大杉漣”が今年観た日本人俳優の中でいちばんよかった。
室生犀星を演じて赤い金魚の生まれ変わりの“二階堂ふみ”と、組んず解れつ老作家になりきっていた。この映画の映像がすばらしいと思ったら、カメラマンは巨匠“笠松則通”さんであった。
「リリーのすべて」のスタッフとキャストはすべて語らない。
ぜひ借りて来て観てほしいからだ。原作はThe Danish Girl、現在性同一性障害は決して異常ではない。どの人間の中にも異性は潜んでいるらしい。
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