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2018年2月2日金曜日

「僕の好きな先生」

私はブキッチョ(不器用)を極める。その私がキミはブキッチョだねと言った男がいる。
「成城石井」の男である。「成城石井」といえば高級スーパーの見本であり、紀伊国屋と並び称された。
だが八十八店舗あった絶頂期から転げ落ち、2011年に投資ファンドである丸の内キャピタルに買収された。投資ファンドにとって買収した会社は、いわば商品と同じ、すっかり染みついていた汚れを取り、気取りを取り、プライドを取り除き、見栄えをよくして転売する。
リサイクルされた「成城石井」を買ったのはローソンであった。
2014年のことである。業界の大先輩へ人を紹介してくれた御礼に行く途中、青山にある「成城石井」に立ち寄った。スコッチを一本買った。広い店内に見たところスタッフは女性二人とズングリ太った男が白い前掛けをしてレジ側にいた。商品のディスプレイは、辻堂の激安スーパーOKに近いと思うほど乱れている(OKはドンキと同じでそれが戦略である)お客が手にして動かしたのがそのままなのだ。
入り口に果物を高く積み上げていて入店のジャマをしている。
むかしの「成城石井」のスタッフが見たら気を失うだろう。
で、ウィスキーを包装してくれと頼むと、太った前掛け男が包装紙に細長い箱を包もうとしていた。
が、何度やってもキレイに包めない。
とっても気の長い(?)私は本性をムキ出しにして、ブキッチョだな、何回やってんだよ、と言った。
男はすでに一枚、二枚、三枚と失敗をし、手がブルブルと震えている。「成城石井」は人手不足なのであった。
年配のオバサンが私がやりますとピンチヒッター、男はスミマセンと謝ってレジのオバサンと交代、このオバサンが又、やたらセロハンテープを使って包装紙に貼りまくる。
上手な人なら多くて三カ所で十分だ。気の長い(?)私は気の短い男のように、「成城石井」もすっかりダメだね。品川駅の階段下と同じだよと言った。
ウィスキーにはチーズをと思いチーズ売り場に行くと、これが又、バランバラ。
人手不足は私たちも同じなので同情するが、至るところでパートやバイト頼みとなっている。いっそその昔青山通りにあった人気スーパー、ユアーズみたいに過剰な包装をせず、外国みたいに茶袋にバンバン入れて、袋の上を開け放しにしていた方がスタイリッシュである。袋は安い素材でもそれがオシャレだった。
女性たちがその茶袋を抱きかかえていた。袋からバゲットかセロリなんかが二本ばかり出ていた。
VANジャケットの袋も茶袋であり、そこにオシャレなロゴタイプが印字されていた。人手不足は本当に”新国劇”だ。私の家の近くのコンビニ、ファミリーマートに店員バイト募集中の張り紙がある。
バイト代時給980円、それでも人手不足だとなじみのオーナーは言った。
昨夜ピンクと白とグリーンの三色串ダンゴワンパック(三本入)と、杏仁豆腐を買って帰った
ダンゴは父と母、親友二人、兄の写真の前に供えた。杏仁豆腐はその夜お世話になっている会社のオーナーと会食(ごちそうになった)した時、この映画見ておいてと言われた。
86分のドキュメンタリー映画を見終わったら食べようと思った。
広島県因島出身の東北芸術工科大学の先生(教授)「瀬島匠」さんの創作活動を追った作品である。
この作家の作品は”創作活動そのものが作品でもある。
すばらしい、生き方がとにかく明るい。
”が、RUNNERと必ず作品に印すその意味を最後に知った時、杏仁豆腐を食べる気を失った。詳細はいずれ書きたい。
人間は明るくふるまって長く生きるほど、つらいものはない。故忌野清志郎の「僕の好きな先生」がタイトルソングであった。彼も絵が大好きであった。


瀬島匠さんの作品はこちらで見れます。
http://takumi141.exblog.jp


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