「最善の敵は、善である。」ある偉い人の言葉である。自分流に解釈すると、情は人為ならずとか、人の為によかれとか思い過ぎて、やったことがかえって、大間違いになる。昨夜帰宅した後、スイス(だと思う)映画「まともな男」というのを見た。善意の塊のような男が次々と災難に巻き込まれて行く。男はとある会社の PR 関係の仕事を10年近くしている。美しい妻は小説を書いている。15歳になる娘が一人。休日を利用して上司の娘をスキーに誘う。自分の娘と同じ15歳の美少女。自分の娘はそれほど美人ではない。男は酒が好きであった。過去に酔って大嫌いな同僚の車に、自分の車をぶつけてしまう。その頃、妻ともしっくりいってなくイライラしていた。と、セラピストの女医に言う。事故を起こした原因を知るために、セラピーを受けさせられていた。この事は妻に内緒であった。で、男は禁酒中であった。上司の娘と家族四人で、別荘(小さなヒュッテ)に着くと、電気がつかない。管理を頼んでいた友人のところに行く。そりゃすまん、息子にすぐ行かせるとなる。息子は17・8歳の未成年であった。さあ〜電気がついた。息子は週末にパーティーがあると言った。思春期の娘二人は、パーティーへの参加を両親にせがんだ。そしてパーティーの夜、上司の娘は友人の息子にレイプをされる。(そのシーンは見せない)上司の娘にとっては、初めての経験であった。自分の娘にあのアバズレが、とそのことを聞かされる。男は、友人宅に行ってレイプの事を言う。娘が警察に行ったら友人の息子の人生は台無しになる。上司の娘は薬局に行って、アフターピルを買うと店内に入るが、16歳未満は売ってくれない。病院へ行くように言われて車に帰ってくる。男は仕方ない自分が父親になって頼んで薬を買う。しかし処女を失い傷ついた上司の娘は、レイプは許さない、警察に行くと言う。私はキスをするのは許したが、SEXは断ったと言う。もし警察に訴えられたら、自分はクビになると思う。が、正義感のある男は友人宅に行き、 息子に上司の娘に謝罪しろと迫る。ふざけんな尻軽娘とは合意だったと、友人の息子は言う。夜、別荘のベランダでそのことを上司の娘に言うと、娘は、泣いて後ずさりして階下に落ちてしまう。男は病院に運ぶが意識不明、上司の男とその妻が病院に来る。男は未成年の少年の将来、上司の娘の将来を考え、どうしてもレイプの件が話せない。妻はそんな男を見て、もはや内緒にしておけないと言う。怒る友人、合意の上だと言い張る息子。二人は車で街に向かう。雪の中男は禁酒していた酒をゴクッゴクッと飲んで追いかける。何としても問題を大きくしないで少年少女を守りたい。怒った男は生意気な息子をビンで殴ってしまっていた。最善の友だった仲は、最悪の仲となる。息子の傷を医者に診せるために街に向かう車を追う男。 一気に飲んだ酒が効いてきて、スピードを出しすぎハンドルを切り損ねて、友人の車に追突する。車は雪の中、崖の下に落ちてしまう。男はもう心身ともにヘトヘトになって別荘に帰ってくる。ずっとスキ間風が吹いていた夫婦が抱き合う。一人で抱えていてはダメよと。映画の題名「まともな男」の果てしないアクシデントの行き先は(?)映画はそれを知らせずに終わる。セックスレス、ケンタイ期の夫婦、思春期の子を持つ人は是非見てほしい秀作である。人間とはどんなに善意ある行動をとってあげても、相手はそれをただの善意と思い、 次の善意に関心は移る。「最善の敵は、善」なのである。文豪夏目漱石は終生、知人、友人、身内親類の金の問題に悩まされ、ストレスで胃潰瘍になり早死にした。まともな男は、貧乏くじを引く。世の中はまともではない。
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