ひとりで二人分の席を占領している。パンパンに膨れた腹に、白いワイシャツのボタンがブチっといつでもハジケそうになっている。丸い肉である。時々発声する声も肉の鳴き声である。分厚い手袋のような左手に結婚リングがくい込んでいる。ウハア〜、ウ〜ン、ハフハフ、ブオ〜と突然声を発する。新年早々の東海道線に乗車していた。会社で新年会でもしたのだろうか。もしかしてパンパンの腹が爆発するかと思い、すっかり寝込んでいる、男の腹にボールペンを突きさしてみた。全く反応なし。もう少し強くさし込んだ。ブバアーブバアーみたいな声を発して、ボールペンを取り除こうとした。目は覚めていない。ガアーガアーウハアハアハアと荒い呼吸をした。よし、もう少しやってやろう。黒・青・赤の三色ボールペンの赤を押し出し、 ウルセイナマッタクと言いながら、ブチっとおへその下あたりを刺した。たかだか1ミリ位だが、異常な反応をした。目を白黒させブバー、ブオッ何すんだと言った。 中腰になって私の顔をジィーっと見た。42・3才の男は110kgはある。ゴメンゴメン悪かった。あんまりすごいイビキなので、死んでしまうかと思い、ちょっと起こしてあげたんだよと言った。何すんのバカじゃないのと言った。そう私はバカなのと言った。でも今のままでは、きっと近い内に爆発死するぞと言った。私はこういう会話のやりとりが大好きなのである。そうなんです、医者から体重減らせと言われ、妻からは一食ゴハン一杯と言われてるんです。私が三色ボールペンをパチパチしていたら、こんなことやめた方がいいですよ、私は大人しいからビックリして終わったけど、他の人なら怒りますよと言った。細かった人間が太くなるには、難解なプロセスがあるそうだ。足元のビニール袋の中に飲み、かつ食べた缶ビールのロング缶が2つ、タカラ缶チューハイが2缶、ミックスサンド、ドライフルーツが数種類入っていた。なんと同じ辻堂で降りた。ノッシノッシ歩いて昇りのエスカレーターに乗った。どこに隠し持っていたのか、大きな福袋を大事そうに2つ持っていた。きっと優しいパパなのだ。かなりのインテリなのだろう。若い頃はキリギリスみたいに痩せていたとか。又、会いたいと思った。
私の大好きな知人にやはりかなり太った人がいる。今年はぜひ減量に成功してくれるといいのだが。でも太った人には悪人はいない。統計上そう思っている。それぞれ独自の哲学を持っている。食べるべきか食べざるべきか、それが疑問だと。で、食べるのだ。「太ったブタより、痩せたソクラテスになれ」なんて東大の学長が卒業式に言ったが。日本を悪くしている官僚たちは、その東大生たちである。
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