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2017年5月16日火曜日

「赤ちゃんに…。」




男を売る社会(今では裏社会)でいちばん嫌われる人間を「カイバ」みたいな奴と言う。カイバとは馬の餌の事。
決して自腹を切らずいつも人におごられて遠慮なくバクバク食べる男だ。

今日はオレがとか、ここはオレがとかの器量がまったくなく、あのヤローはガッツキだと言われる。年下の人間は年上の人間に誘われたら決して勘定を支払ってはいけない。
オレに恥をかかせるなと言われる。
但し一宿一飲の恩義と同じで、その時のことを忘れず今度は自分が小さな店ですが一度ぜひと返しをと言えばいい。
いい器量をしているな、あいつは伸びるな、使えるなと言われる。

山口組が分裂して神戸山口組と二つになり、その神戸山口組が分裂して任侠山口組が生まれた。山口組三国志時代となった。分裂する理由は金と人事だ。
親分が子分から金を集める、自分の身ばかりを考えて子分のために金を使わず体も張らない。
暴対法で子分が犯した罪は親分の責任となり、パクられて懲役に行かされたり、多大な賠償金を支払わねばならない。
いい歳して10年、20年の刑を打たれたら生きて娑婆には出て来れない。
で、オマエラ事を起こすなと命を下す。が、上納金や会費はしっかりと取る。
子分は親分に対して頭に来てウチの親分はカイバみたいにオレたちから金をバクバク取って美味いもの食べやがるとなる。人間、食い物のことは決して忘れない。

モノが食えずにクスぶっている時、ラーメンを食わしてくれた。
腹が減っていてあの時ほど旨かったものはない。
で、それをごちそうしてくれた人を親分、兄貴分と思い命をかけて尽くして来た。
体も張った。懲役にも行った。
だがなんだい今の時代は、男も侠気も、仁義も義理人情もない。
支払いは人に払わせてばかりのカイバじゃねえかと思って見切りをつける。

暴力団から暴力を取ったらただの「団」だからハングレたちからもナメられてしまう。
ヨシッ、侠(おとこ)を見せてやる、本物のヤクザ者ファンの熱烈な想いに応えるために新しい仁義の道を行く。
ヤクザ者の中でも金筋と言われる者は、決して人に勘定をさせない。
場下(バシタとは女房のこと)や自分のオンナを質屋に入れてでも金を作って払う、見栄で生き行く世界なのだ。

むかしこんなシーンを見た。
人の金でバクバク飲んで食っている男を兄貴分が怒って、テメーカイバみたいにバクバク食ってんじゃねえ、と言ってテーブルの上にあったブルドックソースをボタボタにかけた。その店の前で正座させられて更にマスタードを白い麻のスーツにどっぷりかけられた。

男は世にたくさんいる。
その中に名を残す者、出世して行く者とそうでない者がいる。
ピカッと光る男が100人から200人に一人はいる。一緒に飲めば分かる、その男のすべてが。東海道線に乗ったら正面に赤ちゃんがいた。
ママのヒザの上に、ジーっと私の顔を見てウギャーと火がついたように泣き出した。
泣き止まないので立ち上がって赤ちゃんから見えないところへ移った。
赤ちゃんは私のすべてを見抜いたのだろう。

2017年5月12日金曜日

「キッスは道路と」




5月9日私は夜の銀座でディープキスをした。
と言えばオッ、ウソ、ホント(?)そんなバカなとなる。

実は銀座のコンクリート、つまり道路を相手に顔面ディープキスをした。
少し飲みすぎて足がもつれてしまったのだ。ガァーンとやってしまった。
外傷には慣れているのだが、いい歳をしてみっともないことこの上なし、反省と猛省をしている。人に会わせる顔がないのである。

その日の夜銀座グランドホテルであるイベントがあり、それに四人で参加していた。
銀座Dannasm(ダンナズム)という洒落た催しであった。
現在銀座で名を成しているダンディなダンナたちがドレスアップしたレディを連れて集まっていた。頭にはボルサリーノ、パナマ帽、ソフト帽。
黒と白のコンビの靴、ピンストライプ、ボーダーのジャケット。

1960年代のファッションを装った、むかしの少女たち(今のオバサンたち)VANやJUNのジャケットやエドワードやケントのスーツ。
むかしの銀座みゆき族青年(今のオジサンたち)がオレが村中で一番と集っていた。
私がお世話になっている東洋羽毛さんのブランドoluha(オルハ)の商品展示をするコーナーをグランドホテルさんが提供してくれた。その御礼をしに行った。

150人くらいが会場いっぱいにいて、今の様なオシャレの時代でない、ファッションに目覚めたあの頃、あの日を楽しく語り合っていた。1960年代のファッションショーであった。コットンのボタンダウンにニットの棒タイ、スイムカットのヘアー、コットンパンツにデッキシューズ。

私は当然黒のジャケットに黒のジーンズ、アロハシャツに黒と白の(安物のシューズ、靴下に穴が空いていてシュン)コンビの靴。
まぁ~久々に楽しくなって、ついホテルを出てから飲み過ぎてしまったのだ。
気分は若くなったが体は全然オジサンだった。
家に電話をすると怪我した顔で帰ると、小さな孫が恐がるから帰って来ないでねと愚妻は言った。
いろんな方々に大変ご迷惑をかけてしまった。今シロチンをあっちこちに塗っている。
週末はひたすら謹慎する。というより恥ずかしくて外に出れないのだ。

5月10日夜七~九時、どうしても行かねばならないので、渋谷伝承文化ホールに着物ショーを見に行った。ぎっしり満員、ご夫人二人をショーの主催者にご紹介するのが目的だった。21人の美人が21カ国のイメージで一着を織り上げていた。
京友禅、加賀友禅、西陣。
モデルさんは傷らだけの私の顔を興味深そうに(?)見ていた気がした。

昨日早朝お世話になっている会社の社長さんからお見舞いの電話を頂いた。
心より御礼でも、穴があったら入りたい。
「キッスは目にして」というヒット曲があったが、コンクリートの道路とキスするバカであった。

2017年5月11日木曜日

「連休中」




伊勢佐木町ブルースで始まる「ヨコハマメリー」という伝説のドキュメンタリー映画がある。今から十二年前公開されて強く深く感銘した。
中村高寛監督の名は映画界に一気に広まった。
三十歳の頃によくぞここまでヨコハマメリーに肉迫したかと思った。

メリーさんはいつも真っ白いお化粧をして街角に立つ老街娼であった。
濃い化粧、派手にドレスアップした衣裳。背中を丸めて歩く姿はハマの名物であった。
というより名士だったのかもしれない。気位が高くザーマス言葉であったと言う。
年齢不詳、ある年メリーさんは街角から姿を消した。

中村高寛監督はヨコハマに住んでいる、メリーさんに興味を持ち徹底的にヨコハマの人ビトに取材し撮影して行った。
何年もかけて制作費を働いて稼ぎながら、そして遂にすっぴんのメリーさんを探し出す。

連休前中村高寛監督の最新作のドキュメンタリー映画のことで配給会社のトランスフォーマーの社長石毛栄典さんと渋谷のセルリアンタワーの喫茶室で会った。
この新作については後日詳しく紹介する(九月からロードショー公開)。

日本のドキュメンタリー映画のベストワンは、原一男監督の「ゆきゆきて神軍」と言われているが、遂にその原一男監督を超えるドキュメンタリーの監督が出たと思っている。
トランスフォーマーの石毛栄典社長は、自主映画を多く手がけて来た人であり、多くの新人を育てて来た。中村高寛監督は小柄だが全身から殺気を感じる。
眼光は鋭く食い入るように私の目を見て話す。一作一作が遺作ですと言う。
全力投球というより全身投球をするからだ。
製作費の多くは自分が働いて稼いだお金だ。

石毛栄典社長は父上の意志を継いで社長となった。
まろやか、ふっくら、中国の太公望のようであり人間マシュマロのような包容力がある。で、連休はまい日映画を見た。
中村高寛監督が「ヨコハマメリー」を送ってくれたので、まずそれからスタート。
石毛栄典社長が、石井聰互全集BOX1とBOX2を送ってくれた。
1BOX23,800円、2BOXだから47,600円ということになる。

自主映画のカリスマ石井聰互の19~23才の作品は今見てもスゴイ。
「高校大パニック」「1/880000の孤独」「突撃!博多愚連隊」「狂い咲きサンダーロード」「シャッフル」スゴイ、モノスゴイ、8ミリカメラ、16ミリカメラを手に持って何しろ走る、走る、走る。暴力とバイオレンス。
出演者は皆ノーギャラの友人や知人、中にはお金を出して死ぬほど走らされる。
リヤカーにカメラマンと石井聰互が乗って、ノーギャラの友だちたちがリヤカーを押して押しまくる。ゲリラ撮影だ。で、石井聰互作品を12本+ロングインタビュー。

以下「走れ、絶望に追いつかれない早さで」「シマウマ」「クズとブスとゲス」「闇金ウシジマくん」「湯を沸かすほどの熱い愛」「弁護士」「溺れるナイフ」「新・仁義なき戦い」「淵に立つ」「FAKE」「後妻業の女」。

♪~生きてる限りは 今もなお探しつづける 恋ねぐら 傷つき破れたァ 私でも骨まで愛して 骨まで愛してほしいのよォ~。 クレイジーケンバンドの横山剣が唄う。
中村高寛監督の最新作のラストに流れる。
連休前に三度見て連休最後にもう一度見た(サイコーです)。

2017年4月27日木曜日

「五月十日まで」




四月二十七日(木)午前五時二十六分五十三秒。
外はひたひた雨、テレビのニュースでは台風一号がフィリピン沖に発生したとか。

「400字のリング」は五月十日まで休筆します。
一年のはじめ今年こそはアレをしよう、コレをするぞ、アレコレするわ、きっと充実した一年に、実りある一年にしようと思い、一月二日の書き初めに、大きな文字で“初志貫徹”とか“夢実現”とか“自己研鑽”とか“やるぞ”とかを書いたはずです。

あけましておめでとうの次の日とその次の日に箱根駅伝の若者たちの快走を見て、速いな、スゲエな、スゲエ速いなと読売新聞の旗を両手に持ってバタバタと千切れんばかりに声援を送った。
速いのは駅伝ランナーだけでなく、一日いち日がビュンビュン過ぎ去って行く。
なんだもう五月か、連休か、一年の半分近くが終わってしまう。

アレだって、コレだって、アレコレだって何もやってないではないか。
ダメダコリャー初志貫徹は初志ボロボロ、夢実現は夢そのまんま、自己研鑽は自己退化だ。やるぞは、やってないぞとなっている。
ダメな自分と知りつつも、本当にダメな自分に猛省する。
年を重ねるごとに一年は早くなるらしい。
子どもの時、少年少女の時代のようにたくさんの明日への楽しみがなくなるからだ。
一日千秋の思いはそれを感じることすらない。
人名は忘れ、地名は忘れ、生きている目的すらを忘れている。
イカン、アカンと思っている。

ニュースでは雨は昼までにあがるとか。さぁ~みなさん今年は未だ七ヶ月余ある。
世はデタラメとゴチャマゼとドンチャンサワギの末世の如くのえじゃないか、えじゃないかだ。ネバーギブアップ。

先日見たONE OK ROCKでボーカルの若者(森進一さんと森昌子さんの子)が、オマエラ絶望すんじゃねえぞ、諦めんじゃねえぞ、オレは死ぬ気でやってんだ、オマエラシッカリしろよ、敗けんな、いいか、行くぞぉ~、グワァ~と大喚声、ガンガンの大ステップとなった。

若者たちから気合をもらった。
オレたちはアイドルじゃない、ロックンローラーなんだ、闘ってんだと叫んだ。
残り七ヶ月余がある。年の初めの思いを一つでもやり遂げたいと思う。
みなさん、いいゴールデンウィークを。

2017年4月26日水曜日

「愛、その先」



三十九歳の男に二十四歳年上の妻。妻はかつて男の高校時代の国語教師だった。
夫がいたが別れて教え子の結婚相手となった。

男とは、フランス大統領選で決選投票に向かうことになった、マクロン議員である。
さすが恋愛大国、フランス文学の国である。映画のような話であった。
マクロンの戦う相手は極右主義者ルペンとなった。

人相学的に言うと、上唇の薄いというか無い女性は性格が強く、感情が激しく、愛されると恐いらしい。日本人女性には少ない。私のまわりには一人もいない。

マクロン議員は妻なくして私はないと語る。
妻というかお母さんみたいな女性はかなり恐い顔だがやさしく笑っていた。

とこんなことを書きながらテレビのスポーツニュースを見ていると、顔面をヒジかなにかで殴られて血だらけのメッシがラストプレーで劇的なゴールを決めていた。
バルセロナが、R・マドリードを3対2で撃破した。メッシは2ゴールを決めた。
アナウンサーは、メッシ、メッシ、メッシ、メッシーーー―!と心臓が飛び出るほど絶叫していた。

先日の夜ボクシングの世界タイトルマッチでフィリピンのタパレス選手に11回16秒でTKO敗けした大森将平選手は、右アゴを砕かれ病院へ直行となった。
奥歯も抜けていた。五分五分で戦っていただけに残念だった。
勝った選手はチャンピオンだったが計量にパスできず勝ってもタイトルを剥奪された。
勝っても認められない。

男はプライドと仁義を守るため、愛する者を守るためには、頭を割られ、鼻を折られ、アゴを砕かれても逃げずに戦わなければならない。
私の体はすでにガタがきているのだが、一人か二人くらいなら何とかなるかもしれない。

マクロン議員がもしフランスの大統領になったら、必ず映画になるだろう。
ドラマチックなことこの上なしだ。陸上世界リレー選手権を見た。
アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、すごい選手たちは殆ど黒人だ。移民で来た選手たちだ。

午前二時頃コンビニに買い物に行った。店員の二人は外国人であった。
シンブントフクロベツベツニシマスカ。
お酒二本を持つ男は、とってもていねいであった。
異文化は交流し進化する、この流れを止める事は生物学的にも出来ないという。

4×800メートルリレーに難民選手団が出場していた。
ビリになったが観衆は立ち上がって相手を送った。
人類は愛でつながって行くと信じたい。

2017年4月25日火曜日

「冷やし中華の汁」




午前二時過ぎ銀座一丁目セブン-イレブン店内、イートインコーナー。
すでに20数脚の椅子は逆さまになっていたが、一人の老女が逆さまを元に戻して座っていた。

老女というからには八十歳に近い。
バサッとしたソバージュのヘアスタイル、スパンコールいっぱいの化粧の濃さ、キラキラの上等なドレス姿から見るとどこぞのママさんかもしれない。
頭に花いっぱいのカチューシャを付けている。
ガクンペタンと座り、ダランとしながら冷やし中華を食べ始めていた。
白いローヒールの靴を外し指の先っぽに引っ掛けていた。

洋カラシが好きなのか小さな正方形に入っている洋カラシを一袋、二袋、三袋と切って麺の上にのせた。冷やし中華に洋カラシとお酢は絶対必要だ。
大スターとなった近藤真彦が何かの番組で家でカレーライスを食べる時“赤い福神漬”がなく服を着替えてわざわざ買いに行ったと言っていたが、それと同じだ。

カラシが効き過ぎたのか鼻にツーンと来たのか、グフォン、グフォンとなった。
目から大きな涙が出ていたが、泣きながら短い割り箸で麺をすすった。
次にヒックヒックとシャックリをしだした。ノドにつかえたのかもしれない。
ウハァ~、ウハァ~と声を出した。グフォンとヒックとウハァ~が重なり合った。
かなり苦しそうであった。
ダイジョーブですかとインド人風の店員さんが老女に近づき背中を叩いてあげた。
冷やし中華は半分くらい残っていた。

私はミネラルウォーターと“かのか”二本とビーフジャーキーを買っていた。
人間観察が好きな私は老女を名残惜しく見ながら店の外に出ると、銀メタのベンツが停まっていて、白い手袋をつけた運転手さんが立っていて店内を見ていた。
あのヒトの運転手さんと聞くと、社長ですとピシャと言った。

冷やし中華の季節になった。大、大、大好きである。
何が好きかと言えば麺やキュウリや千切りの玉子焼きや紅しょうがなどすべて食べ終わった後に、カラシとお酢が効いた汁を皿ごと飲むのが好きなのだ。
いろんな味が皿の上に混然一体となった汁となって存在する、これが格別なのだ。
バカ者はこの汁を残す。

2017年4月24日月曜日

「恐いのは…」




小説家の妻はバス旅行(?)に行っている。
その妻の留守に女性を呼びイケナイ事をしている。

やってはイケナイ事をすると、天罰が下る。
テレビのニュース画面にバスの転落事故を知らせるニュース。
オレには関係ないやと、小説家は未だイケナイ事をしようとすると電話が入る。
奥さんが事故に遭ったと。

ウダツの上がらなかった自分に小説家の才能があると言って励まし、支えてくれた妻。
四十六歳となって人気作家の一人だ。妻は四十四歳であった。
この小説家は同じバス事故で妻を失った長距離トラックの運転手に近づき、その子どもを育てる役目を、頼まれていないのにする。

長い長い坂道、自転車の後部に子どもを載せる、前の籠の部分に食材を入れているので重い。坂道を登って行くが途中で自転車を降りる。
「こんな坂道をママは登りきっていたの」と子どもに聞く。ウンと答える。
このワンフレーズに映画のキモがある。
小説家はイケナイ事をしていた自分に「永い言い訳」としてそんな事を繰り返す。
が、子どもは心を開かない。
西川美和脚本監督はフツーの人間の中に潜む、フツーでない心理を描くのが実に見事だ。名作「ゆれる」がある。小説家を本木雅弘が演じていた。

松本清張の黒のシリーズの中にこんなのがある。
大阪へ出張することになった会社員が妻に一日ウソをつく。
女性の住む部屋でイケナイ事をしている。飛行機の搭乗券を人に譲っている。
イケナイ事をした後テレビのニュースを見ると、飛行機事故が起きている事を知らせる(羽田沖事故をモチーフにしている)。
自分が乗っているはずの飛行機だ。
事故死した搭乗員名にカタカナで自分の名前が出る。会社から裏金を運ぶ役を命じられていたので会社は死人に口なしとする。妻は夫でない男(死体)を夫ですと言う。
イケナイ事をしていた会社員は生きているが戸籍を失う。

ある日路上で自分の妻とすれ違う。妻は分かっていても無視をする。
戸籍のない男を妻も女性も捨てる。妻は多額の補償金と生命保険を手にする。
イケナイ事をすると、イケナイ事を映画は教える。

一人の会社員がやっと郊外に戸建てを買う。駅からバスで通う。
ある日そのバスの中で同級生だった女性と会う。
女性は夫と死別して五歳の男の子と同じバス路線の所に住んでいる。
男はイケナイと知りつつイケナイ事をしに通い始める。五歳の男の子は決してなつかない。ある夜男が眠っていると子どもがマサカリを持って立っている。
上映当時、五歳の子に殺意はあるか否かで論争となった。

さて、この映画を見ましたか。現代社会では三歳児ですでに殺意はあるという。
どこまでがイケナイ事か裁くのは検事でも裁判官でもない、妻と子だ。
昨日深夜から朝まで松本清張の黒い画集シリーズを一気に三本見た。
一本100円で女性の恐さがよく分かる。

夜が開けて来た。いつものグラスにブルーのガリガリ君を入れてジンを注いだ。
これが実に美しく旨い。

2017年4月21日金曜日

「ロックンロールとばっちゃん」



十五歳前後の少年少女は大人への入り口の年代の中で最も重要である。
少年は学業を伸ばす才はあるか、スポーツの才があるか、あるいは文化文芸の才があるか、あるいは不良の才があるか、それがクッキリとする。

少女はすでに初潮を迎えて体は大人である、子が産めるのだ。
親は少しの変化も見落としてはならない。
また、さまざまなサインを見落としてはならない。少年少女は悩んでいるからだ。
そんな日本の少年少女の満足度は、調査対象国47ヶ国の中で下から6番目である。
経済協力開発機構(OECD)の調査による。

大人は金、金、金ばかりの世の中である。
500円の寄付を出すにもシブイのが大人社会だ。
私はなんとかして日本の寄付文化を変えたいと思っているのだが、大海に小石を放るような仕業に過ぎない。だがやると決めたらやる。せめて波紋位は残したい。

人のために善行を尽くす人のいなくなった世の中で、広島市にすばらしいおばあちゃんがいる事を以前書いた(NHKのドキュメンタリー番組で見た)。
昨日東京新聞朝刊のコラムにこの人の記事があった。
3月に吉川英治文化賞の受賞が決定したとあった。
35年間、非行少年たちに食事を提供しつづけた、中本忠子(ちかこ)さん(83)である。

温かい夕食を求めて今日も子どもたちが集まる。
多くが家庭に問題を抱え、家でご飯を食べれない「お腹いっぱいなら悪さはせんよ」と中本さんは言う。
35年間毎日、広島市の自宅アパ―トで食べさせ、100人以上面倒を見てきた。
始まりは保護司として非行少年たちと接していた。
寄付にケチンボな世の中も見捨てたものではない。
今ではNPO法人化して、食費は寄付で賄っている。
現在は自宅近くに部屋を借り食事を振る舞う。非行少年は「ばっちゃん」と呼ぶ。
親にはウソをつくが、ばっちゃんには無理だと言う。

改めて後藤新平の言葉を思い出す。
人生において「金を残した者は下、仕事を残した者は中、人を残した者は上」。
私の亡き母もばっちゃんみたいにしてくれていた。
私が連れて来る、家に問題を抱えた友だちをいつも笑顔で迎えてくれて、温かいご飯を出してくれた。

昨日横浜アリーナで七時~十時四十分までONE OK ROCKのコンサートに行った。
中野裕之監督が四国のロケ先から来てくれた(中野さんがチケットを取ってくれていた)。山藤陽子さん(ライフディレクター)三人で大興奮をした。

家に帰りクールダウンさせるために、映画「永い言い訳」西川美和監督作品を見た。
次に古井由吉さんの新作「ゆらぐ玉の緒」の短編を一話読んだ。
玉の緒とは“死”のことであることを知った。
さすがに小説の名手、近頃の作家では足元にも及ばない。

午前三時半を過ぎてもクールダウンしない。ONE OK ROCKに関しては後日に。
横浜アリーナがぶっ壊れるかと思った。人生はロックンロールなんだ。

2017年4月20日木曜日

「サギ撃退法」




ラミネートされたチラシは、振り込めサギ被害者を0にしたいと茅ヶ崎警察署が心を込めて作りました。ぜひ電話のそばの見える所に貼っておいてください。
振り込めサギは電話から!!(大きな文字)茅ヶ崎市では毎月のように振り込めサギの被害が出ています。いろいろな手口がありますが、はじめは電話からです。
普段は冷静な方でもいざ電話を受けると…このチラシは、担当地区民生委員が配っています。

富士見町民生委員・児童委員◯◯△△(ここまでモノクロ一色)こんな電話は詐欺!(赤文字で大きく)
■息子や孫からのお金の要求
■市役所等からの還付金
■有料サイトの料金払い
■郵便局からの電話ガイダンス
■株(社債)を買う権利が当たったという電話(以上ブルーベタ・文字イエロー)
→すぐに警察(110番)や家族に相談して下さい!(これは白地に赤い囲み、罫の中に赤文字)茅ヶ崎警察署・茅ヶ崎市役所以下電話番号0467-82-0110 問い合わせ・情報提供などはこの番号へ。

B5判の大きさのものが家の受話器の前に立てかけてあった。昨日のことである。
家にも仕事にも、株とか相場とか、金をすぐ貸しますローンとか、墓地にお墓とか婚活とか、時々電話が入ってくる。
私はいつも「ここは☓☓組だ」というと相手は即ガチャンと電話を切る。
ウソも方便である。

一度身の丈180センチ位のガタイの大きな男が「取引先の広告代理店さんがこれからもっと仕事を集中して出したいと依頼があり、御社を調べさせて頂きます」と言って、何やらアンケート用紙に書き始めたことがあった。
社員は、構成は、お支払い方法は、ご入金の内容は、現金?お手形?などなどを聞く。
あ~このヤローヤクザ者のおつかいだなと思った。
お相手さまにいい報告書を書きます、なんて言った。

私はスタッフにドアを閉めてくれ、コイツが出れないようにと。
ソイツは本社に電話しますと言った。
モシモシ☓☓ですか、私☓☓です。今社長さんから話聞かせていただきました。
ハイ!レポート◯◯です、どうも本社からOKが出ましたので、10万円をお願いしますと言った。

オイ、アホ、バカここをどこだと思ってんだ。
その手口はむかしオレの舎弟だった奴らがよくやる手だ。
ドアを閉めて逃がさないからなと言うと、男はすっかりヤクザ口調になった。
ナンダトオ、コノヤロー、ジョートーダヨなんて言うではないか。
朝十一時頃急な仕事もなかったので一時間ほど付き合ってやった。
私は低くオドロシイ声で言った。オマエはここから帰れねえぞと。
いきなりドーンとテーブルを叩くとビックリして本社に電話をすると言う。

よしオレが話をしてやるからと言った。
モシモシあんたとこの若いもの連れに来る、それともというと、分かりました調査はなかったことにしますので帰らせて下さいと言う。
お茶でも飲むかと言ったら、バインダーをカバンに入れて筆記用具をしまい、失礼しましたと立ち上がった。
こんな話を一人の先輩にしたら、エッそうなのボク10万円払っちゃったよと言った。

サギに絶対かからないのはお金がないことです。
あとは少々コワイ声を用意しておくことです。
仁義なき戦いシリーズなどをよく見て研究してください。
オイコリャ、ドリャ、ドコにデンワ入れとるんじゃ、コノボケ、ヤクザがヤクザ者にサギ持ちかけてどうすんじゃ、コノボケが。
どうかみなさん練習して下さい。

詐欺師たちは声でカモネギかガセかを判断するのです。
時々学生アルバイト風の男とか女の子の声でかかって来ます。
モシモシ名を名乗れと恐い声で言うと、即ガチャンです。

午前二時十三分茨城地方で震度4の地震があったとテレビに出た。
BSで“山田風太郎60年の日記”のドキュメンタリー番組を見ていた。
現在四時十一分三十八秒、いつものグラスに日本酒を入れた。
生たらこを焼いたのと焼き海苔、それに白菜の漬物少々がつま味だ。

2017年4月19日水曜日

「その一言が」




17日(月)NHK BSプレミアムで見たドキュメンタリー番組「山口組VS一和会」は見応えがあった。
死者20数名、負傷者200数十人、民間人をも巻き込んだ日本暴力団史上最大の抗争事件であった。

山口組四代目竹中正久、若頭中山勝正、ボディガード南力を襲撃してヤクザの中のヤクザと言われた一和会幹部Iは現在六十八才歳となり未だ収監中である。
組のため親分のために体を張ったが帰る組はすでに解散に追い込まれてなくなっている。他の者も同じである。

30代の若者は本来なら金ピカの勲章を持って出所して大幹部になっていたはずだった。
刑務所で命を狙われ、外に出れば親の仇と命を狙われる。
親の仇を子が討つのはヤクザ者の掟である。確か空手家でもあったと思う。
番組は丹念に事実を語り、初めて見る映像を出した。
今何故この抗争事件を取り上げたかは分からない。

番組では取り上げなかったが、ヤクザ界は暴対法の徹底で構造的不況となり、一般社会と同じ後期高齢化、若手の人材不足となっている。
ハネてる(調子のいい)組とクスぶっている組との格差は広がっている。
子を守るのが親の務めだが、親は子を守るどころか、破門状、絶縁状を回状として全国に回す。子の犯した罪は、親の責任として扱われる。

襲撃された竹中正久山口組四代目は小さな頃から根性者であり、典型的なヤクザ者である。番組の中で元山口組顧問弁護士のY氏の話があった。
現在弁護士資格を失っている。老女と二人で小さな事務所を開いている。

Y氏は言う、このことが私と同意見であった。
なんでヤクザになるのかとの問いに、親の愛情、大人の愛情を知らずに育ったからだと。生まれながら親はいない、差別と偏見、親の離婚、片親と貧困、愛情を知らない若者はヤクザ者の世界の中に自分の住む家を見る、親分、兄貴分、兄弟分の愛を。
元顧問弁護士は小さな頃から周りが愛情を持って接して行けば、きっと多くの人間がヤクザ者にならなくて済むと。

番組のナビゲーターは沢尻エリカであった。テレビは今BSがいちばんだ。
何しろ視聴率を気にしないで番組が作れる。
ちなみに襲撃された四代目山口組組長竹中正久はただの武闘派でなく、実に頭脳明晰であり、子分を何より大切にする愛情深き人間であったとか、数万人になっていた組織は強い男だけでは後を継げない。

近頃、子を守らず自分の富だけを抱きかかえている親が多い。一般社会でも同じだ。
番組内で出てくるIとは多分石川某だろう。
伝説のヤクザ者として後世にその名を残すだろう。人間は愛で動く生き物なのだ。
元気にやってるか、腹は減ってないか、この一言がキーワードなのだ。(文中敬称略)