ページ

2017年4月24日月曜日

「恐いのは…」




小説家の妻はバス旅行(?)に行っている。
その妻の留守に女性を呼びイケナイ事をしている。

やってはイケナイ事をすると、天罰が下る。
テレビのニュース画面にバスの転落事故を知らせるニュース。
オレには関係ないやと、小説家は未だイケナイ事をしようとすると電話が入る。
奥さんが事故に遭ったと。

ウダツの上がらなかった自分に小説家の才能があると言って励まし、支えてくれた妻。
四十六歳となって人気作家の一人だ。妻は四十四歳であった。
この小説家は同じバス事故で妻を失った長距離トラックの運転手に近づき、その子どもを育てる役目を、頼まれていないのにする。

長い長い坂道、自転車の後部に子どもを載せる、前の籠の部分に食材を入れているので重い。坂道を登って行くが途中で自転車を降りる。
「こんな坂道をママは登りきっていたの」と子どもに聞く。ウンと答える。
このワンフレーズに映画のキモがある。
小説家はイケナイ事をしていた自分に「永い言い訳」としてそんな事を繰り返す。
が、子どもは心を開かない。
西川美和脚本監督はフツーの人間の中に潜む、フツーでない心理を描くのが実に見事だ。名作「ゆれる」がある。小説家を本木雅弘が演じていた。

松本清張の黒のシリーズの中にこんなのがある。
大阪へ出張することになった会社員が妻に一日ウソをつく。
女性の住む部屋でイケナイ事をしている。飛行機の搭乗券を人に譲っている。
イケナイ事をした後テレビのニュースを見ると、飛行機事故が起きている事を知らせる(羽田沖事故をモチーフにしている)。
自分が乗っているはずの飛行機だ。
事故死した搭乗員名にカタカナで自分の名前が出る。会社から裏金を運ぶ役を命じられていたので会社は死人に口なしとする。妻は夫でない男(死体)を夫ですと言う。
イケナイ事をしていた会社員は生きているが戸籍を失う。

ある日路上で自分の妻とすれ違う。妻は分かっていても無視をする。
戸籍のない男を妻も女性も捨てる。妻は多額の補償金と生命保険を手にする。
イケナイ事をすると、イケナイ事を映画は教える。

一人の会社員がやっと郊外に戸建てを買う。駅からバスで通う。
ある日そのバスの中で同級生だった女性と会う。
女性は夫と死別して五歳の男の子と同じバス路線の所に住んでいる。
男はイケナイと知りつつイケナイ事をしに通い始める。五歳の男の子は決してなつかない。ある夜男が眠っていると子どもがマサカリを持って立っている。
上映当時、五歳の子に殺意はあるか否かで論争となった。

さて、この映画を見ましたか。現代社会では三歳児ですでに殺意はあるという。
どこまでがイケナイ事か裁くのは検事でも裁判官でもない、妻と子だ。
昨日深夜から朝まで松本清張の黒い画集シリーズを一気に三本見た。
一本100円で女性の恐さがよく分かる。

夜が開けて来た。いつものグラスにブルーのガリガリ君を入れてジンを注いだ。
これが実に美しく旨い。

0 件のコメント: