「お父さんと伊藤さん」朝方まで見ていた映画の題名である。
主人公の女性は34才。
コンビニでアルバイトをしている時、いつもマンガの立ち読みをしている薄毛のおじさんを見ていた。
二人は顔見知りとなり二、三度会っている内に女性の2DKのアパートで一緒に暮らすようになる。
おじさんの名は、伊藤さん54才であった。伊藤さんはアパートの一階にほんの少しついている庭を耕して、キュウリやナスやホウレン草や小松菜をつくる。
女性はいつも伊藤さんと言う。
一度結婚したが離婚したらしい。小学校の給食のおじさんをしている。
日曜大工に詳しく、警察に友達がいるらしい。本当の正体は不明である。
女性には兄がいて義姉がいる。
中学受験をする双生児の親である義姉は少々うつになっている。
原因は一緒に暮らす義父。つまり主人公の女性の父親である。
中学校の教師をしていた74才の父親は細々と口うるさい。
兄はお受験が終わるまで妹に父をあずかってほしいと願う。
そしてお父さんと伊藤さんの同居生活が始まる。
女性はコンビニをやめて本屋さんのバイトをしていた。
父親はなんで正社員にならないのかと怒る。
今どきそんなの難しいと応える。
小さな台所と小さなテーブル。
四畳半の部屋には丸い卓袱台があり、夜にはそれを畳んで布団を敷く。
さて、お父さんと伊藤さんは…(?)と、まぁ今どきの物語を「タナダユキ監督」は実にていねいに描く。
現在どの家にも起きている原寸大のエピソードがある。
やがてお父さんは自分で見つけてきた介護付老人ホームに入る決心をする。
古い家を売り、子どもたちのために貯めていた貯金をすべて使う、女性に何も残してやれずごめんと謝る。いつしか心が通うことになった伊藤さんに娘をよろしくと頼む。
伊藤さんは微笑する、が謎めいている。
実は九日日曜日の午後一時、私の住んでいるところの近所にある介護付老人ホームに、私の姉と見学に行く。
姉は鎌倉に住んでいるのだが、義兄を先年に亡くし一人暮らしである。広い立派な家に一人でいると不安で不安で仕方ないという。
息子二人とお嫁さんが一人いるのだが、それぞれの事情があり東京を離れられない。
姉はアチコチガタがきていて介護付老人ホームを見学したいと言うことになった。
誰か側にいてほしいのだ。愚妻に一緒に行くぞと言ったら、一瞬オドロキ二階に上がって行った。その表情はやがて起きるだろう、いろいろなことを予見するものであった。
主人公の女性を上野樹里、お父さんを藤竜也、伊藤さんをリリー・フランキーが演じていた。
それぞれ好演、秀作であった。
主題歌の「マイホーム」を奥田民生が唄った。(ユニコーン)
かつてあった“ほのぼの”とした家族が失われてしまった。長寿社会の現実は、今、殆んどの家庭にヒタヒタと迫っている。私はてんこ盛りの諸問題を解決して行かねばならない。
負けてたまるかなのだ。
六日は名古屋に行く。
私の知っている煮込みうどん山本屋は、跡継ぎいないからとずっと前に店を閉めたらしい。時間があれば伊勢志摩ににいるお世話になった方に会いに行く。
煮込みうどんを初めて食べさせてくれた元大手代理店クリエイティブディレクターだ。
「会いたいだわ、きっとまってるでョォ」と電話でおっしゃった。外は激しい雨がやみ荷物列車が通る長い音が北の方から聞こえている。
木、金は出張のため休載します。