近々私は重大なことを実行する。
と言ってもブッソウなことではない。
私たちの会社の顧問をお願いしている人は、日本で有名なヨットマンである。
又大きなクルーザーを友人たちと共同で所有している。
年に何回か日本列島を回る航海に出る。
そして寄港した地から海産物を送ってくれる。
先日新島から名物「くさや」が五枚送られて来た。
いつもは送っていただいたものをすぐに食して礼状を出していた。
くさやは大好物で酒の友としても絶品だ。特に新島産とくれば多分言うことなしだろう。
多分と書くから実は未だ食してない。
私の住む小さな家の小さな台所にある換気扇は、お隣さんの二階の窓のすぐ側にある。
お隣さんは坂の下にあるので私の家の一階はお隣りさんの二階にあたる。
ということはくさやを焼いてその強烈な臭いが、ブルブル回る換気扇からジャンジャンお隣さんの家に送り込まれる。
ひょっとすると、くさや殺人事件(?)みたいなことが起きるやも知れない。
あるいはお隣さんの家の高価な家具やカーテン、又衣類などにくさやの臭いがしみこんでしまうかも知れない。
だが航海途中にわざわざ送ってくれたものを食さなければ申し訳ない。
私の家は坂の中間にあるからくさやの臭いは下へ下へと風と共に下って、ご近所さんから追放されるか、リンチにかけられるかも知れない。
そこで考えた。
近々海岸に持って行って七輪で焼いて酒と一緒に食そうと。
投げ釣りをしていたらくさやが釣れてしまったことにしようと。
最近投げ釣りをしても何も釣れないと、釣り好きの人がいっていたが、くさやを釣り針につけて投げれば100%釣れる。ヨシ!これで行こうと思っている。
くさや食べた(?)と顧問の方が航海から帰って私に声をかけてくれた。
いやあぁ、そのぉ~とムニャムニャした。もう絶対買ってくるなって奥さんに言われたらしい。
洋風の美しい館でくさやを焼いたようだ。
上質のくさやは高価で“抜群絶品美味”で、どぶろく、焼酎、ビール、日本酒、ワイン、ウィスキー、ウォッカ、ジン、どんな酒とも相性がいいのだ。
私は必ず実行するので、後日ことのてんまつをご報告する。海岸でイチャイチャする奴の側で焼いてやる。昨夜釣り竿とリールを用意した。
人の恋路をじゃまする奴は犬に食われて死んじまえと言う。
そうそうでっかい団扇も用意した。バタバタと臭いを散らすために。