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2009年12月11日金曜日

人間市場 戦友市篇

男が女性達から、あの人はいい人です優しい人ですと言われたら、モテない男という事です。

いい人とはどうでもいい人であるし、何か頼めば何でもやってくれる優しい人という事なのです。

恐い、危険、近づきたくない、嫌い、と言われたら本物の男です。

一番の理想は、嫌いだけど好き。恐いけど会いたい。危険だけど一緒にいたい。

これが男と女。男の値打ちは、女房がいようがいまいが、どんな女性が側にいるかで判る。


過日、友人を見舞った。妻有り、子有り、孫有りの男であった。すさまじい手術の跡があった。首に腹に、癌はすでに末期であり、一度手術をしても直ぐに閉じてしまった。私の四十年来の戦友である。身長は180cm位あり手術前は体重80kgはあった。酒は一滴も飲まない、キャデラックとハーレーダビットソンを愛する男である。庭いじりを愛し、土と木を愛した。

男はもう一つ愛していた。七年前から一人の女性を愛していた。凄い足フェチで、足の事を語ると徴に入り細に入りいくらでも話をした。お互いに男女の仲は話す事はない、これが男のルール。見舞いに行って初めて紹介された。すでに入院ニヶ月余、体重は十数㎏落ちていた。それでも私たちが来るからとパジャマからジーンズとアディダスのパーカーに着替えていた。男と男、友と友、いよっ、で始まる。大好きな目出し帽を被っていた。前の日までハルミオンも効かなかったが私たちが来るのに声も出ないのはみっともないと、屋上で管を引きずりながら歩いたと言う。そのお陰か前夜は久々にぐっすり眠れたと言う。声も出てるでしょうと言う。精一杯のジョークを飛ばす。二種類の抗癌剤に最後の望みを託すと言う。錠剤と液体を3週間一クールにして試すと言う。一種が50%、一種が25%。合わせると75%効くかもしれない。


膵臓と腹膜に転移していると行って腹の手術跡を見せた。お腹のど真ん中からベンツのマークの様に巨大に切られ、手術用のホッチキスの跡が生々しい。つい二ヶ月前まではピンピンしていたのだ。男の側に一人の美しい女性。萬田久子をもっと美しくした様な女性。足フェチの男が選んだだけあって、足首はしまり長く、背が高く、黒ずくめのコスチュームが知性的である。何事にもそっと気がつく。そっと眼鏡、そっとハンカチーフ、そっと水(これは私たちに)、そっとティッシュ、このそっと感を見た時、成る程と思った。女房、子供には悪いが人生の最後はこの女性と終わりたいんだ、そういう男が何とも魅力的であった。

正に愛しているのであった。説明は要らない。ただ愛しているのである。

一時間半、話して笑いました。翌日女性から、私に付いて来てくれた者にメールが入った。本当に楽しかったと。嘘でもいい、見栄でもいい、その言葉が嬉しかった。帰りに、病院の近くのそば屋さんに入った。一緒に行った者があの人は食い道楽だったですよね。未だ食べ物の臭いだけでも気持ち悪くなるって言ってましたね。何か悪いですねと言いつつ、あれや、これやを食べてしまった。

広い店にお客は私たち三人。三重県出身という23歳(本人が言った)の女の子が妙に私たちから離れない。目が何となくウルウルして、体がしなだれている。薄いブラウスの中からブルーの花柄のブラジャーがハッキリ見える。君どうしたの?そんな格好して、何やってんの?と聞くと、恋人と一緒に声優になりたいと言う。性優じゃないの?と聞くと、チュガイマチュシェイユデチュ、イヤダーなんて突っ立てる。電話番号と名前を書いて、今度オーディションしてあげるから恋人とおいでよと言ったら、ウヒャーホントデチュカなんて言っている。たっぷり手術跡を見た頭がクールダウンしない。でも、家庭を捨ててもあんないい女性と一生を終えたいなんて、負けてんな、カッコイイよな。自己破産して何もかも無くなったが凄い愛を残したのだから。俺は支持するよと言った。

いいか、間違っても女性からいい人なんて言われんじゃネェぞ。何て思った夜でした。

男と女が手を繋ぐシーンがあんなにいいと思ったのは久しぶりだった。

長い病院の廊下、二人のシルエット、いい映像でした。

友よ、奇跡は起こす為にある。

1 件のコメント:

sakon さんのコメント...

ハーレーダビッドソンと、関係を越えた素敵な女性をこよなく愛する、東本さんの親友。かっこよすぎます。奇跡よ起きてください。一緒にハーレーで走らせてください。