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2014年2月17日月曜日

「酔えない酒」




「伊勢屋」さんは皆いい人だった。
二月十四日(金)バレンタインデーの夜、私は辻堂駅南口改札口から徒歩五分(普通)の居酒屋兼料理屋的和風レストランに居た。


天気予報がズバリ当たって大雪となった。
打ち合わせを早めに切り上げてそれぞれ帰宅する事にした。
新橋駅五時三十七分の電車に乗った。雪が激しく何処行きかを見ずに乗った。
列車は普通車、グリーン車共ぎっしり満員、仕方なくグリーン車の外の出入口に立った。

やっぱり早めに切り上げて大正解だなと思った。
キオスクも早終いであった。いつも読む夕刊紙も、夕刊もない。
本を持つ習慣は無い。外は見えない、窓には雪がバシバシ音を立てて振り続ける。

辻堂駅までが酷く長く感じる。
側に立っているオジサンが日経新聞の夕刊を広げて読んでいたのでそれをもらい読みするが、新聞をよくたたむので気が散って読めない(嫌がらせぽかった?)。
列車は少しずつ徐行したりしながらも、六時五十分位に着いた。

風雪強烈、駅の階段を降りると人の列、列、列、その数三十人から四十人位がタクシーを待っている、またはバスを待っている。
普段なら車でお迎えに来てくれる筈の人が来れないのだ。外は猛吹雪、こんな時は携帯があればいいのだろうと思ったのだが公衆電話のボックスに入り、それも役に立たない事を知った。
どこのタクシー会社も電話に出ないのだから。
出ても配車が出来ないのでそうしたと後日タクシー会社に聞いた。

二月十四日は確かシカゴのギャング、「アルカポネ」が聖バレンタインデーの虐殺をした日だな、などと思いつつ電話ボックスを出るとドバーッとアンデルセンというパン屋さんの屋根辺りから雪が落ちて来た。
これを持って行ってと優しい会社の人間に借りた傘は全く広げて歩けない。

どこか店に入るかと思った時、頭の中でパッと伊勢屋の名が浮かんだ。
店は殆ど早終い。「なか卯」というカウンターだけの店と、一度も入った事のない小さな居酒屋(お客はいない)と横浜系ラーメン屋(三人お客がいた)が営業していた。
カウンターだけだしな、タクシーを何とかするには知ってる店の方がいいしなと思ったのだ。


で、傘をたたんで猛吹雪の中いざ伊勢屋へ向かう。
営業している事を信じて。一歩一歩滑らない様に歩く事約二十分、伊勢屋に辿り着く。
 無事営業中、電気で点灯するタイマツも雪でボンヤリしていた。
但し九時閉店とか。

中にはテーブル席に老夫婦一組、若いカップル二組、座敷には若者たち十人位(彼等は大盛り上がり)、満員なら七、八十人は入る店だ。私は楕円形のテーブルに座った。

いや〜、マイッタマイッタと言って、とりあえず日本酒一本(1.5合)をヌルカンで頼む(酔う訳には行かないので)次に〆鯖とブリの刺身を一皿で頼む。
これだけじゃタクシーを呼んでもらうには少なすぎるかと思い、少し時間を置いてカキフライ四個とお新香とご飯半分と浅利の味噌汁を頼む。
さて、頃合いを見て、オバサンタクシー会社に電話してもらえると頼む、とオバサンはお兄さんに電話してあげてとなり、やがてお兄さんからオジサンに私の頼みはリレーされる。だが全て電話は通じないという、外を見に行って見ると信じられない猛吹雪だ。

で、オジサンはお兄さんに電話してあげてとなり、お兄さんはやる事が出来たらしく、オバサンに頼む事となった。そんなこんなの繰り返しの中、〆鯖も寒ブリも美味しいのだが時間は九時の閉店まで後四十五分しかない。
カキフライとご飯と浅利汁も美味しかったが、後二十五分しかない。

さて私はどうやって帰宅したでしょうか。ちゃんと帰れたのでしょうか。
伊勢屋から自宅まで猛吹雪の中歩いて一時間半か二時間はかかる筈なのです。

ロンドンは大洪水、ニューヨークは大寒波、北京は人類が住む環境でないとか。
日本ではダイオウイカが何匹も。東京は47年振りの大雪、山梨県は120年振りの大雪。
地球は相当に怒っている。

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