歌舞伎座が遂に終わった。
今は壊されるのをじっと待つ廃屋の親方みたいな姿である。この際にと天津甘栗の屋台の店が店閉まいした。何度も買って食べた。隣のお弁当屋さん「暫」という歌舞伎の演目の名から付けた名店のカレーライスともお別れだ。隣の文明堂でよく珈琲を飲むが何となく店内に元気がない。通り向いの「辨松」というお弁当屋は歌舞伎を観る時よく買った弁当の名品店だ。
あの店もあの店も、あの親父もあのおばちゃんも、みんなしばし元気がない事となる。
「なかむら」という美味しいとんかつ屋がある。入ると黒板があり、団十郎様50とか海老蔵様50とか菊之助様50とか白墨で書いてある。それは何かというとカツサンドの数、楽屋に届ける手筈になっている。公演中はとんでもない数のカツサンドを作っては届けるのだ。カウンターだけ15人位しか入れない店だがとにかく安くて旨い店だ。
その店でとんかつを食べて一幕物の歌舞伎を観るのが好きだ。
知らざあいって聞かせやしょうバンバババンダァーンなんて見栄を切ると、ヨオ、成田屋なんて掛け声がかかる。私はヨオ!カツサンド!なんて声を出しそうになる。
これからは新橋演舞場に移る。
入り口の左斜め前があの有名な料亭「金田中」、ここは高い。おすすめは「金田中」の左斜め前の「くーた」。先日行った時に、隣で四人の女性がお刺身を食べながら大声出して笑い合っていた。一人どこかで見た顔だなと思っていたらすっぴんの松たか子さん(?)だった。
ここは相当に旨い魚の店だ。博多から出店して来た。
旨くて値段がリーズナブルであり、店の応対が凄く気持ちよくて爽やかと、来れば口から口へ評判が広がり今や予約しないと中々入れない店になった。この店を紹介してくれた会社の社長でもちゃんと予約して行ってる。
でもなんだか嬉しい。若い料理人が志を高く持って勝負に出て来てその成果を出している。やっぱり店は評判だ。路地裏の目立たない場所、この頃は成田屋、高麗屋、中村屋などの歌舞伎役者が芝居を終え一杯飲みに寄る。弁天小僧や白浪五人男や弁慶や石川五右衛門や義経たちがジーンズにシャツ一枚でタコやらイカやらアジやら黒サバ(これが抜群)をつまみにワイワイガヤガヤだ。お魚好きの方には是非おすすめだ。
歌舞伎座改修でも一大事なのだから、築地市場を移転する等というとんでもない事は止めて欲しいと思う。市場通りの交差点の角々にあったマグロ寿司だけを食べさせくれた店が今はローソンになっている。それだけでもすっかり風景が変わってしまった。文化は宝である。築地文化は永遠の文化遺産だ。優れた建築家達なら苦もなくいい改修のアイデアを出してくれる筈だ。
「井上」という立ち食いラーメン屋さんがある。行列が出来るが一定のリズムで回転して行く。ここが又、旨い。歌舞伎座一門もここに来て立ちながらラーメンを食べる。人間国宝だって行列に並ぶのだ。チャーシュウの数もメンマの量も平等だ。
おっ、あの立ち食い寿司屋で海老様が海老を食べている、隣の美人は誰だ。そんな光景がアチコチで見られる。私は旅に行くと漁港に行くのが大好きだ。取れたての魚で一杯飲む程旨い話はない。農家に行って採れたての山菜などを食べながら一杯飲むのもいいが、何か勇ましさとか、勢いとか、気合いとかが違う。
えらっしゃいとかハイヨオーとか、チットマッテくれとか日本語が弾けてるからだろう。
そうだ、この頃この国に掛けているのは日本語の弾けだ。
ウソつき、いい訳、サギ、バックレ、シカト、クスブリばっかり。てやんでこのやろう、こうなりゃ矢でも鉄砲でも持って来いってんだ、オイ家の中に引き籠もっているアンチャン、そんなところ潜ってネエでおてんとう様の下に出て来いってんだ。ウジウジしたって始まんないってんだヨオ。
会社行くたくネエなんてゼイタク言ってんじゃネエってんの。
仕事場がありゃ上等だってんだ。会社が嫌なら一人で勝負しろってんだよ。何お客さんが減ったって、だったらどんどん営業しろってんだよ、ベラボーめ。
こんな調子で行くべしだ。
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